青の追憶( 3 )
「私の部屋は、ここの一番上の階にあるの」
彼女が示した先にあったのは、──超高層マンション。都会の真ん中に、まるで王様のように堂々とそびえ立っている。周りにもかなりの高層ビルが立ち並んでいるが、それらを圧倒するかのように見下ろしている。そして、全面がガラス張りになっている。今日の雲ひとつない青空を反射して、真っ青に染まっていた。
目の前にある大きなガラス戸の入り口には、警備員らしき黒服を着た人物が二人、私たちを挟むようにして立っている。
「小鳥遊様、お帰りなさいませ」
そう言うと黒服は、アオイの両脇で、恭しくお辞儀をした。アオイが扉に向かって歩いていくと、自動ドアのようで、勝手に開いていく。
その先には、広々としたエントランス。部屋全面が、ツルツルした白っぽい石で覆われている。天井に目を向けると、抱えられないほど大きなシャンデリアが私たちを見下ろして、きらきらと光り輝いていた。私が呆気に取られている間にも、アオイは一直線にエレベーターに向かっていく。
「行きましょう、チトセ」
アオイに手招きされ、私は早足でエレベーターへ乗り込んだ。彼女の手元を見ると、「60」と書かれたボタンが光っている。
「な、なんか、す、すごいところ」
アオイは私の方を一瞥すると、こう言った。
「どうせ、もうすぐここはお墓になるのよ」
鈴が転がるような笑い声が響いた。
✳︎✳︎✳︎
最上階にたどり着き、エレベーターを降りる。目の前には青い扉があった。一つしかないところを見ると、この階全てが、一人の──アオイの部屋になっているようだ。
そして、アオイは、迷うことなく扉の取っ手を引いた。音もなく開く。
「ようこそ、我が家へ」
1歩足を踏み入れると、そこは、──“青’’
だった。
壁、床、天井、そして窓枠まで、その全てが“青色’’。勿論、カーテンも青色だ。
壁には、青い額縁が部屋一周にずらりと並んでいる。
右側の壁に目をやると、額縁の中には、無数の蝶がピンで留められている。羽は透き通るように真っ青で、もうそこに命は無いはずなのに、どこか生き生きとしているようにさえ見えた。
左側の壁には、無数の宝石が飾られている。その全てが──青い。それぞれ微妙に青色の具合や形が異なるところを見ると、全て違う種類の宝石のようだ。ここには、世界中の青い宝石が飾られているのではないだろうか。圧巻されていると、アオイが語りかけてくる。
「素敵でしょう?1番右上にあるのが、“ブルートパーズ’’という宝石よ。お気に入りなの。私の誕生石でもあるのよ」
ブルートパーズは、きらきらと輝いている。その輝きはまるで、──いや、アオイの瞳そのもののように感じた。
「き、綺麗、だね」
すると、アオイは上機嫌そうに微笑む。「立ち話も何だし、どうぞ座って」
私は、言われるがままに目の前にある革張りのソファに座る。勿論、革は全て真っ青に染められている。
この部屋に家具と呼べるものは、この中央に陣取った青いソファ一脚と、その脇に置いてある小さな青いサイドテーブルだけだ。広い部屋にある家具がたったこれだけなんて、何だか勿体ない気持ちになってくる。
──そして、ふと目の前に目を向けると、そこは、一面の青だった。床から天井まである大きな窓の向こうには、ビルの隙間から見えたものと同じ、真っ青な青空が広がっていた。
私は、それに、魅入られていた。
「こんな所に部屋を借りたのも、この景色を手に入れるためよ」
アオイはいつもきらきらと笑う。
「私は、
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