第14話 触手、古着屋で買い物をする
「これが栗毛弥次郎。貴様の通行手形だ」
同心の木村善右衛門が渡した紙には『春日部産まれ。年十六。栗毛弥次郎。男』とだけ書かれていた。
「簡単な紙切れですね。本当にこれが通行手形なんですか?」
「いらんなら受け取らんでいい。次。くいくむうばあとやら」
「はい。どうもありがとう」
クイックムーバーの通行手形には肌浅黒く鼻はなく、目もなく、口は一つ。腕十二本成り。と、書かれている。
「こんな特徴のある奴他にいねえよ・・・」
「最後、天照。ずいぶん大層な名前を名付けて貰ったものだな。親御に感謝するがよい」
髪は長く腰の辺りまで。肌は色白あたかも雪のように。胸は大きく山のよう。腰はくびれ川の如き。尻大きく安産確かなり。なお処女間違いなく。脚長く鹿の如く。随伴者栗毛弥次郎。くいくむうばあの二名也。
「おい。なんでアマテラスの通行手形だけ妙に内容が詳しいんだ?」
「入り鉄砲出女と言ってな。女の通行手形は特に入念に特徴を詳しく書いて関所破りをしにくくするよう法で決まっておるのだ。まぁ春日部の田舎もんにはわからんのだろうがな」
「はいはい。大都会の江戸と違って埼玉の春日部は田舎ですよーと」
「じゃあ身分証も貰えたことだし、弥次郎君。旅行用に着物を購入してそれに着替えてから出発しようか」
「え?なんで?」
「いくら身分証代わりの通行手形があるとはいえ、現代の学生服のままだと目立ちすぎるよ。この時代の衣服を手に入れてそれを着て行動しよう」
「わかった」
そんなわけで弥次郎たちは江戸市中にある古着屋に立ち寄ることにした。
「どうして古着屋なんだ?」
「江戸市中の色んな人達が要らなくなった自分の服を売りに来るからね。当然サイズも沢山あるってわけさ。もちろん古着だから値段も安いよ」
「でもぼろくないか?これなんか穴空いてるぜ」
「裁縫すればいいでしょ」
アマテラスがぼそ。っと言った。
「裁縫?裁縫だって!!?」
「弥次郎君。現代人の君には少し理解しづらいかも知れないけどこの時代の人たちは衣服を針と糸を使って自分で修復して何度も再利用する人が多かったんだ。と、いうより現代でもそれが仕事になってる人っているでしょ?」
「え?そんな人っているかな?」
「ほら。弥次郎君の近所の商店街のミシン屋さん。コロナが流行してから阿部のマスクより高性能なヌノノマスク造ります!って看板出してるよね?あれだよ」
「あーなるほどなー。裁縫スキルって現代でも通用する有能技能なんだな。つまりどういう事なんだ?」
「日本の政府の連中は裁縫スキルの優秀が理解できない無能な連中ばかりって事さ!!」
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