第10話 触手、女神を喰らう
電気ポッドのお湯が沸いた。クイックムーバーが触手を伸ばしてカップ焼きそばにお湯を注いだ。
「それじゃあ湯切りをするよ」
クイックムーバーは焼きそばの容器に入っていたお湯を飲み始めた。
「なんで飲むんだ!」
「やだな弥次郎君。ボクはプラスチックは好きじゃないけど、きちんと水分は取る主義なんだよ」
クイックムーバーは湯切りしたカップ焼きそばをアマテラスに渡した。
「はいどうぞ」
「あんがと」
ソースをちゃっちゃと混ぜてから食べるアマテラス。
「美味しかったかい?」
「イマイチ」
「デザート食べる?」
「なんか変わったのが食べたい」
「じゃあ八つ橋なんてどうかな?」
「じゃそれで」
「わかった。じゃあ京都まで食べに行こうか。と、その前に」
クイックムーバーは綿棒のようなものを取り出して弥次郎とアマテラスの鼻の中に突っ込んだ。
「うわ!いきなり何をするんだっ!!」
「そんなのPCR検査に決まっているじゃないか」
「PCR検査?」
「昔はこんなものは必要なかったんだ。でも今はもうそんな時代じゃないんだよ。迂闊に関東地方の人が京都に行くと、
「東京の人は大丈夫どすか?マスク送りまひょか?」
って言われちゃうからね」
「え?なんでマスク送りましょうかなんだ?」
「京都流の上品な言い回しだよ。意訳するとマスクが必要なコロナ持ちの連中は京都に来るんじゃねーよバーカ、だよ」
「あ、なるほど」
「じゃあさっそく検査キットを機械にかけるね」
クイックムーバーは炊飯器とマグナムのリボルバー部分を取り外して組み合わせたような検査機会にPCR検査キットをセットした。そしてスイッチオン。
「ねぇ弥次郎君知ってるかい?放送時間の壱時間の刑事ドラマではDNA鑑定は十秒で終わるけどあれは番組を視聴者様の都合にドラマが合わせているのであって実際の検査は十時間かかるんだよ。そうしないと壱時間で殺人事件が解決できないからね」
PCR検査の機械が止まった。ランプは緑。
「陰性だよ。弥次郎君達は二人とも京都に行っても大丈夫だよ」
「そうか。それはよかった」
それを聞くとクイックムーバーはアマテラスを丸呑みにした。そしてそのまま弥次郎も。
「ふぅ。やっぱり弥次郎君もアマテラスちゃんも美味しいなあ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます