第9話 触手、太陽の女神に奉納する
「ぺいっ!」
クイックムーバーは弥次郎を吐き出した。するとそこは薄暗いが照明のある空間であった。前方に長椅子に座ってスマートフォンでゲームをする、ロングヘアーの眼鏡女が一人。
「な、次はなんだ?!」
「着いたよ弥次郎君!あれは日本の女神様。アマテラスだよっ!」
「アマテラス?」
「彼女は太陽を司る女神様なんだ。そして彼女の特徴はもう一つある。それはね。彼女はニートなんだ」
「あークイックムーバーじゃん。なんかよー?」
アマテラスは下着姿でだらしなく尻を掻いた後、再びゲームを再開する。
「そだ。なんか冷えてきたからエアコンの温度上げて。あとココア入れて」
長椅子の前にはやはりだらしなく脱ぎ捨てられた洋服が床に転がっている。室内にはエアコンが設置されており、冷蔵庫、薄型ワイドテレビ、ゲーム機、パソコンなどが適当な感覚で設置されていた。
「そうだ。アマテラスちゃん。頼まれていたあれ持ってきたよ」
「そこ置いといて」
クイックムーバーは自分の口に触手を突っ込むと小さな正方形の物体を取り出した。
「なんだそれ?」
「卓上小型エアコンだよ。中に水を入れると冷風が噴き出すんだ。氷を入れるともっと冷えるよ。お湯を入れると温風が出るから冬は暖房になるね!」
「てかカップ食べたいんだけど」
「何がいい?」
「焼きそば」
クイックムーバーは自分の口に触手を突っ込むと口の中からカップ焼きそばをとりだした。
「なんで出てくるっ!!?」
「ボクお肉は好きだけどプラスチックはあんまり好きじゃないんだ。あと金属もどちらかといえば嫌いだなぁ。あ、そうそう。ここにある冷蔵庫やテレビもみんなボクが口から出したんだ」
「ねぇそんな事よりお湯わかしてくんない?」
「あ、弥次郎君。お水はそこの御神水を電気ポットに入れて沸かしてあげてね」
「御神水ってペットボトル入りのミネラルウォーターじゃねぇかよ・・・」
弥次郎はペットボトルの水を電気ポットに入れた。あとはコンセントに差し込めば自動的にお湯が沸くはずだ。さっそくコンセントを差し込む。ティファールの電気ポットはコポコポと心地よい音を立て、その電気のコードは細長く伸び、室内に設置された太陽電池パネルへと到達し。
「おい。なんで部屋の中に太陽電池パネルがあるんだ」
「ここ部屋じゃないよ。天の岩戸って洞窟の中だよ。ただ、アマテラスちゃんが四百年でも四千年でも快適に引き篭もっていられるようにボクが色んなものを運んであげたんだ。あと彼女は太陽の女神だから太陽電池パネルがあれば電機はいくらでも造れるんだよ」
「そうか。水車小屋で電気を造るなろう主人公は時代遅れんやな。時代は洞窟の中で太陽光発電なんだな」
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