第5話 触手、ようやく自己紹介を始める
触手は黒い球体の本体をしていた。厳密にはその身体は重力に引かれ、床に設置している。即ち皿に落とされた卵のようになっていた。即ち黒い半球が床に付着していると考えてよい。その身体の正面中央部に沢山の牙がついた大きな口が一つ。ついている。ただし目もなく、また鼻もない。
「弥次郎君。ボクの体には全部で十二本の触手がついているんだ」
そのうちの一本を振りながらクイックムーバーは言う。
「十二本?」
「その触手はボクの体を時計回りに十二方向に規則正しく生えている。弥次郎君達人間の言うところの目に相当する器官も触手に存在しているんだ。これはどういうことかというと、仮に何者かと戦闘になったとする。そいつがボクの背後を取ろうとしても十二本の触手がすべての方向をカバーするから回避、防御に失敗する可能性は非常に低い。さらに触手の一、二本を切られた程度では他の触手が視覚、攻撃、防御をカバーする為のちの行動に支障はきたさない」
「チート生物だろお前」
「触手だからねぇ」
と、触手は笑った。
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