第3話 触手、弥次郎をなおも調べる

「弥次郎君。君はさっきからボクと会話をしながら後ろ手でドアのノブをできるだけ静かにいじっているね?それはもう、自分の股間を優しく触るように!!」


「く、バレてやがるっ!しかもドアが中々あかない!!まるで古代アッシリアの女王セミラミスが産み出した建材で、ローマ皇帝ネロも用いたコンクリートで塗り固めたようにドアがカチコチになって開かないっ!!ノブを回す音はするというようにっ!!」


「許可をしよう。振り向いてドアを見てご覧」


 弥次郎は振り向いてドアを見た。


「これ、はっ!!俺の股間の下をくぐるようにして奴の触手が伸びていているっ!!そして伸びた触手がドアをガッチリと押さえつけているっ!!これではドアを開くことは不可能っ!!!まるで外側からセロハンテープを用いて、チェーンロックをかけたホテルのドアのようにっ!!!」


「さらに部屋の窓も見るんだ」


 弥次郎は窓を見た。そこは夕暮れの太陽の光が差し込み。


「なにいいいい!!窓枠にもぴっちり触手がっ!!これではガムテープで『サヨナラ』と読める風に張られたバスルームのように部屋の中は完全に密室っ!!!」


「さらに向こうの天窓も見てみよう」


「うおおおお!!眼鏡をかけた青い服の蝶ネクタイの子供ですら出る事の困難な天窓まで触手で塞がれているっ!!これではもはやオスのカブトムシの角にヒモと鍵をくくりつけ放り込むすらことできないっ!!!もはや脱出不可能っ!!!」


「さらに」


 クイックムーバーは弥次郎の鞄から携帯電話を取り出した。そして触手を使ってメッセージを打ち込む。


「こうやって文章を。


学校でいじめられました。異世界転生します。さようなら。


PSコロナとは無関係です。 弥次郎より


はい。完璧な遺書ができたよ」


「うおおおおお!!スマートフォンやパソコンに残された、手書きじゃない遺書!!そして追記のコロナとは関係ありませんという文章!!!これでは俺は完全なる自殺と判断されてしまうっ!!!たすけてくれーーー工藤新一ーーーー!!!」


「あ、江戸川コナンの方がいいよ。頭殴られて気絶してるだけの場合とかもあるから」



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