第1話 触手、襲来

 栗毛弥次郎(くりげやじろう)は十六歳の高校生である。特徴のないのが特徴であり、仲間内でジムカスタムと呼ばれている。ただし、厳密には特徴があり、彼の家の前にはコンビニがある。弥次郎はそのコンビニで進撃の巨人の最終巻と鬼滅の刃の最終巻を購入してから自宅に帰る事にした。

 家の玄関を開けるとすぐ目の前に二階に上がる階段。玄関にあるのは靴箱と傘立てゴミ箱だけだ。弥次郎はゴミ箱の中に使い捨てマスクを投げ捨てた。このゴミ箱は弥次郎の子供の頃にはなかったものだ。この時間帯に家族はいない。上がると右側にトイレ。左側に弥次郎の部屋。すぐに部屋には入らず、一度廊下突き当りの洗面台に行き、手を洗い、ついでにうがいをして、おまけに洗顔までしてする。そういえば家に帰って手を洗う習慣があるのは日本人くらいなものらしい。弥次郎は自分の部屋のドアを開けた。


「やぁ!お帰り弥次郎君!!」


 部屋の中に触手がいた。


「ファアッ!!?」


 思わず素っ頓狂な声を挙げる弥次郎。


「ボクの名前はクイックムーバー!よろしくね!!」


 触手は名前を名乗った。

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