1 『猶予期間』

今日は12月の頭、すっかり寝苦しい季節は終わり寒くて起きるのが至難の業である季節に変わってしまった。だが俺は厚着すれば何とか対策できる冬の方が夏よりは好きなのだ。


しかし、今朝の感覚は何だったのか、あの妙な浮遊感は。




「俺ってばどうしたんだ?アニメとかラノベの読み過ぎか?」




そんなことを考えつつも二度寝へと誘わんとする布団を跳ね除け立ち上がり深々と溜息をつくと、いつからそこにいたのか、正真正銘の俺の親父、間宮秀一が部屋のドアを開け立っていた。




「お前は朝から何を言ってるんだ?それに朝から溜息ついてると1日の幸せが逃げていくって知らねぇのか?それはともかく母さんが朝飯出来たからって呼んでるぞ」




こう言い残し父は足早に1階に降りて行った。




しかし普段家にいる時は普通の、と言うよりも怠惰の塊の様な存在である父なのだが家をでると一端のお偉いさんと母は言っていた。しかも最近父は更なる昇進が決まったとか言って嬉しそうに母に報告していたのを俺も聞いていた。


この何とも順風満帆の父親の息子である俺も中学高校と何事も無く進学し、毎日毎日変わらない日常を消化しているだけだった。




と、こんなことを考えながら朝食をとり高校に登校すべく制服に着替えようと自分の部屋へ向かった。




「―――ドア閉めたよな?」




朝食前には閉めた筈の俺の部屋のドアが開いていた。心に僅かな疑念を残しつつ部屋に入ると、




「君はこれから1週間後に私と異世界に来てもらうよ!私もこれから1週間はここで生活させて貰うけど友人、家族とお別れするなり未練のないようにしておくこと!」




―――バタン。




俺は無意識に扉を閉めてしまった。




あれはなんだ?異世界?なんで俺の部屋にいきなり金髪美少女がいるんだ?




――1週間!?




考えれば考える程疑問が浮かんでくる。




再び俺の部屋のドアが開き、




「何をそんな所で座り込んでいるんだよ!さぁ!立って立って!とりあえず今日は学校って奴に行くんでしょ!私もついて行くから早く準備してよ!」




何を言っているんだろうこの人。学校に着いてくるだと?




「あの、学校に着いてこられると色々面倒だし、そのままの格好だと下手すると捕まると思いますよ」




よくよく目の前を見ると今まで俺の人生で見たことの無い程のスタイル抜群の身体を惜しげも無く、僅かに隠す程度の服を着ている。




「大丈夫だよ!私は元々この世界の住人じゃ無いから私を見れるのは君だけだよ!」




と、自信満々に言ってくるこの美人を連れ、俺は学校に行くことにした。




―――しかし、1週間って言ってたよな。

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