第122話 宴と酒と教訓
日が傾き、夜が訪れるとかがり火が灯る。
今回の戦いでの戦死者への追悼が行われた。
戦いの規模に比べて戦死者の数は抑えられのは、ひとえにマスカーの功績が大きいところである。
彼は再び村人からの信頼を得ることができた。
亡くなった戦死者達を埋葬して葬儀を終えると祝宴会が開かれた。
己の功績や戦いかたなど自慢する輩が多い中、最も注目を浴びたのは……由美だった。
一番インパクトが強かったのは龍児ではあったが、地味でも敵のボスを倒して戦いを終焉させた由美の功績は大きかったのだ。
とんでもない距離からの奇跡の一発。
一発逆転の由美。
魔弾使いの由美。
そう
彼女はこのようなことがはっきり言って苦手だ。
だが祝福してもらえるのは悪くない。
しかしながら、すり寄ってくるのはいい年こいたオヤジばかり。
焚き火の周りに御座がしかれて由美の周りはオヤジが
長い串に何のどこの部位なのか分からない肉が刺さっている。
まだじゅうじゅうと焼けた音を立てて香しい匂いと、オヤジの酒臭い臭いが入り交じる。
由美の手前のテーブルにはオヤジたちが入れ替わるごとにどこから拝借したのか色々な食べ物が置かれてゆく。
「いやー、ずげーじゃねぇか。今日の主役みたいなもんだからジャンジャン飲んで食ってくれヨォ~」
そうやって次から次へと飲め飲めとオヤジが迫りくる。
『いや、飲みたいのはあんた達だろう』と内心突っ込みを入れつつも彼女はやんわりと断った。
「あたしは、まだ未成年ですので……お酒はちょと……」
「未成年? なんだそりゃ?」
オヤジ達は意味分からず無視して酒を勧めた。
由美は長身ではあるが背筋が良いので非常にスラリとした赴きがあり、長いストレートヘアーと整った顔立ちでいわゆる美人である。
しかも今は鎧を脱いで薄着である。
出るべきところは出て、
あまつさえ異国人かつ英雄とあってはオヤジ達の注目を浴びるのは致し方なかった。
「あぁ~もう! 本人飲めないつってんのに進めるんじゃないわよ!!」
葵がオヤジと由美の間に割って入る。
睨み付けるように由美の周りのオヤジを威嚇して追い払う。
「いい~、それってパワハラよパワハラ!」
「パワ?」
「あっ! コラ! どさくさに紛れて由美口説くな! セクハラよセクハラ!」
「セク?」
オヤジ達は葵のいうことがさっぱり分からず、ただ彼女の迫力に負けてすごすごと距離を開ける。
「た、助かったわ。ありがとう葵……」
「どーう、いてしまりてぇーぇ」
「?」
彼女はろれつが回っておらず、目もとろんとしている。
火の灯りでは分かりにくかったが顔もほんのり赤い。
「ゆ~み~、すごいじゃなーい、もてもてじゃなーい」
葵が由美に抱きついてきた。
由美の首筋に顔を埋めてきたため、なにやらゾゾゾとした感触がしてむず痒い。
そして彼女の吐息はとても酒臭かった。
「あ、あなたお酒飲んだの?」
「えぇ~あたしもぉ未成年なんだから飲むわけないじゃぁ~ん」
誰がどう見ても酔っぱらいにしか見えない。
「で、でも……」
「それよりぃ~これ美味しいんだょお~。由美も食べてぇ~」
葵がフォークに突き刺して由美に食べさせようとしたソレは見た目がキッシュのような食べ物であった。
こんがりと焼けた表面はしっとりとしている。
中もまるで液体に漬け込んだかのようにジュクジュクだ。
そしてそこからは明らかにアルコールの匂いが漂っている。
「おお、それうめぇだろ。酒がたっぷりと染み込ませて甘くてケーキみたいだろ」
甘党のオッサンが顔を真っ赤にして同じもの食べていた。
明らかに食べてはいけない代物だ。
「ほぉ~ら~たべてぇ~」
「だ、ダメだって!」
由美が強く拒否したせいでフォークに刺さっていた食べ物が落ちる。
それは由美の胸の上で引っかかって落ちることはなかった。
葵はぼーっとそれ見て、突如怒りだした。
「なんななよーッ! これはあたしへの当て付けかああぁぁぁぁッ!!」
「ええ!?」
由美は葵が怒り出した理由が分からず戸惑う。
というより酔っぱらいの理屈など誰にも分かるわけない。
「なによう! こんな胸!」
葵が軽く由美の胸を叩いた。
するとぷるんぷるんと跳ねて恥ずかしさのあまり由美の顔が赤くなる。
まるでプッチンプリンのようなソレに葵はさらに衝撃を受けた。
「ちくしょーッ!! なんだこの弾力!! しかもノーブラかーーーッ!! 見せつけやがってぇ!!」
野獣と化した葵は由美に襲いかかる。
マウントをとるとチチをくれなどと騒ぎながら由美を揉みしだいた。
教訓……葵に酒を飲ませるな。
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