第4.5話

4.5

「ッチ!ツルギちゃんと離された!」

「そんなこと言ってる場合じゃないでしょう?」

秋乃あきの翡翠ひすい先生もうるさいのだー!」

黒装束の前で、二人の美少女と麗人が口論を始めた。

ちなみに、姫花は普段は注意して普通に話しているが、プッツン行くと、こう言う駄々っ子のような喋り方になるのだ。

「せっかく、ツルギちゃんの前で、カッコいい所を見せるチャンスだったのに!」

そう喚く美少女は、相良さがら 秋乃。夜空の星のように黒く艶やかな髪を腰まで伸ばし、黒曜石のような瞳だ。

「それは、ボクのセリフだ!」

炎ように燃え盛る紅い髪に虎のような金の瞳の少女は、ガウッ!っと吠えた。くれない 姫花ひめかだ。

秋乃と姫花は、学校指定の制服を着用していた。

白いブレザーに、黒いワイシャツ。黒いスカートには、白い線が入っている。

白く伸びる足に、秋乃は黒いニーソクッス、姫花は白いニーソクッスを履いている。

首には、赤色のネクタイを結んでいる。

「二人とも、油断しないで。あの黒装束が持ってる武器は、神器か魔剣の一種よ」

翠色の髪を肩口で揃えた麗人が、言い争う二人にダメ元でもう一度注意をした。

っが、やっぱり聞いていないわね。後で、お仕置きをしましょう。

麗人は、冷ややかに口角を少し上げた。

翡翠 あやである。

彼女は、三年ほど前に卒業し、

彼女のクラスには、問題児が二人、いや、三人いるのだ。

言うまでもなく、二人は少女達である。三人目は、未だ教室で、大男と対峙している少年だ。

三人は成人する前から、それぞれに個人の刀を持っていた。

本来は、学園での高等部卒業後に入手するのが慣らしわしなのである。かく言う、私もその口であるのに。

それなのに、彼等は初等部時から刀を持ち、慣れ親しんだように今も持ち歩いているのだ。

そんな三人は、異質で、強く、自我が強すぎるのだ。そんな三人を私が、教え、導くとは、何と愚かしいことか。

彼等は、完璧に力を使いこなしているのだ。

ヒュンヒュンヒュンヒュン!

少し考えことし過ぎたな、奴の攻撃は、早いが軽い。なので、致命傷になる傷は、受けていなかった。

「先生、コイツを早く倒して、ツルギちゃんの加勢に行きたいので、私も霧を出します。先生は、ついてこられますよね?」

挑戦的な口調ではあるが、少し焦りも感じられる。

自分達が、ここに飛ばされた時のことを思い出しているのだろう。

黒装束は、一メートル程の刀身で、S字に湾曲した剣、ショーテルを武器としていた。

最初は、武器を二つにしたことから、分身が能力かと思えたが、先端に黒い球状のものを作り出し、教室の方に投げ入れたのだ。

そして、現れたのが教室にいた二人の少女達であった。

二人は、既に刀の力を解き放っていた。

なので、この黒装束がいると、あの大男と少年を連れ去り逃亡されると見込んでの発言だろう。

私も、それを危惧していたので、頷いた。

「【我が望むは、霧の王。視界を黒くし、玄武の力を分け与えたまえ】」

秋乃が譜を詠みあげると同時に、刀は少し細身になり、辺りは昼間なのに、夜のような暗さになっていく。

「【我に授けられし刀は、本来の力を思い出さん】」

私も、譜の二節目を詠みあげた。

すると、短刀であった刀は、円を巻き始めた。所謂、サークルエッジである。

これが、本来のこの刀姿である。

譜には、一節と二節が存在する。

一節目では能力の解放、二節目は本来の姿を現わすようになっている。

魔剣や神器、聖剣なんかは、もう一節存在し、それを詠めることで、持ち主としての資格になるのだ。

私の【邪促刀じゃそくとう】は、少し複雑で、二節目を詠みやっと本来の能力を発揮するのである。

手には、サークルエッジの【邪促刀】が

【邪促刀】は、物理的に増えるのだ。本体は、背に収め、分身体を作りそれで攻撃するのが私の戦い方である。

分身体は、本体と二十メートルを超えると消えてしまうためだ。

私は、投擲も得意でね。

黒い霧の中に紛れる、一人の人物に向かいサークルエッジを二振り同時に、投擲した。

ヒュン!ヒュン!

黒装束は、顔が隠れているため、表情が読めないが驚いたように躱した。

「甘い」

私は、そう言うと目に見えないを二本一気に手繰り寄せた。

ヒュンヒュン!

サークルエッジが、円を描きながら戻ってきた。

黒装束はそれを躱し、跳びのいて行くが、そこに漆黒の刀が一閃した。

秋乃の【玄霧くろきり】だ。細身になった分、彼女の本来の変幻自在な舞いのよう剣撃が続く。

「おっかないねぇー。これで、まだ学生なのかね?」

男とも女ともつかない声が、笑いを堪えるような感じで喋りかけてきた。

今度は、そこに紅と白金の閃光が二振り襲ってきた。

「嬢ちゃんまで襲ってくるとは、かなり分が悪いね」

黒装束はそう言うと、一気に跳び、どこかに消えてしまった。

「あの大男も使えないし、また今度遊びくるよ」

そう言って、今度こそ気配まで消えてしまった。

「一体なんだったのかしらね」

私が、ため息を吐いてる隙に、二人の少女が消えていた。

「まさか、抜けがけは、許しません」

いつも無表情な麗人は、少しだけ、頬を赤く染め、監視対象のもとえと駆け出した。

そう、最初は、ただの監視対象でしかなかった。

しかし、彼の純真な心は、とても綺麗で、暗部で過ごした、私にはとても眩しかったのだ。

だからか、私は、彼に惹かれてしまったは。

少年の名は、東條とうじょう ツルギ

いずれ、【覚醒者エヴェイユ】になり、魔剣を従えし勇者になる者。

そして、全ての『コントラディクシオン』を滅ぼす者に。

麗人は、二人の少女に抱かれ、顔を赤く染めている少年をうっとりと見つめるのだった。



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未定 日ノ本 ナカ @kusaka43

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