第4話

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教室には、大男のゾークという侵入者とそれと対峙する僕ーー東條とうじょう ツルギの二人である。

先ほど、侵入者であるゾークによって教室中がボロボロになっていた。カーテンは、裂かれ机や椅子黒板には、斬撃が走っていった。

ゾークは、黒の革ズボンに黒いタンクトップしか着ていなかった。身体の半分は、浅黒く変色していて、赤く熟れている部分もある。

一眼で、重傷者だとわかるのだが、ゾークは、平然と佇んでいる。

左腕なんて、肘から下が存在しないのである。

僕は、吐きそうになるのを抑え、気丈に刀を、【鎧兜よろいが】を左手に持ち直した。

「【我が鎧、我に力を示せ。を破る力を】」

紫銀色の刀は、本来の譜に喜ぶように溶けていき、全身を覆い被ってきた。肩当て、籠手、手甲、胸当て、脛当てと身体に紫銀色の輝きを放つ防具が装備された。

背後に手を伸ばし、僕の身長の半分以上ある刀を取り出した。漆のような黒い柄に一房の金糸、黒い鞘の刀が露わになった。

「それが、【ダーインスレイヴ】!それを寄越せぇぇえ!」

ゾークが迫って来るが、僕には止まったように見える。平然と躱し背中に回し蹴りを放った。

ゾークの突進する勢いと、僕の蹴りが合わさり、後方に飛んで行った。

僕は、鞘から【ダーインスレイヴ】を引き抜いた。

「【我の姫、我の忠誠を永遠に。貴女の力を我に貸し与えてくださいませ。さすれば我は永遠の貴女の騎士になりましょう】」

僕が譜い終えると同時に、銀色の刀身の穴に銀、紫、金の宝玉が嵌められた。

これは、譜を一節詠むことで、宝玉を一つ加える仕組みなのだ。

宝玉には、それぞれにユニーク能力があり、それとは別に本体にも能力がある。

それ故に、この【ダーインスレイヴ】は、なのである。

それに、【ダーインスレイヴ】が魔剣になったのは、使い方を知らない輩が無闇勝手に使ったせいで死に、紫の宝玉『ソウルイーター』によって憎悪が付与されたのである。

だから僕は、この刀を封印していたのに。

この憎悪をが消える、その日まで。あわよくば、憎悪を消してくれる刀を見つけるまで。

それが、僕ととの契約なのです。それさえ完了すれば、全ての力を使えるようになるのです!

僕は、気分を取り直し、いつもの正眼の構えをとった。

銀の宝玉『アナライズ』によって、相手の剣を見ると、あの大剣ツーハンデットソードは、魔剣【ティルヴィング】のようですね。しかも、彼の体内、それも心臓の近くにも短剣が入っていますね。

短剣は、神器【ライフジュエル】のようですね。

神器は、人を狂わせ力を秘めていると言われていますし、彼は、魔剣と神器によってようですね。

なら、安らかに眠って頂きましょう。

ゾークが立ち上がる前に、僕は彼の胴体に切りかかったのですが、寸前で躱されました。

さっきほどまで、無くなっていた左側の腕が復活していました。

「驚きましたね。その神器、どうやら仮初めの命を与えるだけじゃないみたいですね」

「ウォォォォォオラァァァアア!」

「と言っても、あの神器さえ抜き取れば、勝ちなんですけど」

「アァァァァァアア!」

「しつこいですね?」

魂の抜け殻だと言うのにすばしっこく、動き、凶悪な斬撃が繰り出して来る。

ヒュンヒュンヒュン!ヴゥォォォォォォオン!ヒュンヒュン!

細かい斬撃から、必殺の斬撃。

生前の貴方と一手願えられたら、素晴らしく楽しかたでしょうにね。

「僕には、通用しませんよ」

【鎧兜】の思考加速は、今や常人の一万倍の領域にまで来てきる。それに身体強化も合わさり、僕には全ての軌道がみえるのです。

万が一にも、貴方の攻撃は、当たりません。

ヒュンヒュン!ヴゥォォォォォォオン!ヒュン!ヴゥォォォォォォオン!ヒュン!

ある程度ど、癖もわかりましたし、貴方には、安らかに眠ってもらいましょう。

彼が連撃を終えた当時に、銀色の刃で神器をなぞるように抉りとった。短剣は、心臓のように暫く脈を打っていたが、だんだんと静かになっていった。

それと同時に、ゾークは、崩れ落ちるように倒れ、その姿が氷に変わり砕け散った。

短剣をもう一度見据えると、握り潰していた。

最後に鑑定した時、レプリカ【ライフジュエル】となっていた。

つまり、彼は偽物の神器によって偽の命を得ていたと言うことになる。なんて皮肉なんでしょう。

【ライフジュエル】があれば、この怨念も晴れたというのに。

能力を解除し、刀を鞘に収めると、紅い物体が僕の胸に突っ込んできた。姫花である。

「怪我は、なさそうたな!あやつはどうしたのだ?」

僕に怪我がないことを見て、今度は、先ほどのゾークのことについて聞いてきた。

僕は、魔剣の能力を使ったことを伏せて、ことのあらましを伝えた。

「それより、姫花達はどうして、あの場から消えたんだ?」

「あぁ、何か、翡翠先生が黒装束のやつに絡まれていてな、何故か知らんが、向こうに飛ばされたみたいなのだ!」

「翡翠先生は、大丈夫なのか?」

「案ずるな、私と秋乃もいて、遅れを取るわけも無かろう?それに、先ほど奴は消え去ーー」

最後まで、言う前に、秋乃がドアから入って来て、所々擦り傷のある妙に少しエロい翡翠先生が窓から入って来た。

「ツルギちゃん!」

「ツルギ」

二人は、僕を見ると抱きついて来た。

色々と謎なことが多く残っているが、僕達の平穏な日常が帰ってきたのだ。

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