第2話

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【ダーインスレイヴ】と【鎧兜よろいが】は、対になる刀である。

刀には、うたが刻まており、それを詠みあげることで、その真価を発揮するのだ。

それが、現代の刀であり、最強の武器である証拠である。

現代では、銃器などの武器は、廃れいるのだ。間合いがあり、一対多では、凶悪な武器である銃器が廃れた理由が、先程言った刀本来の力である。

ある者は、刀から黒色霧を発し、ある者は、紅の炎を呼び出す。

歴史で、一番最初に使われた剣【ゾーク・クリムゾン】は、触れたものを掻き消す能力であった。しかも、まだ、

譜を詠んだ状態を正式には、『固有形態』と呼ばれている。

この状態になってこそ、剣の真価が発揮できるのだが、、、

残念なことに、【ゾーク・クリムゾン】の『固有形態』は、伝承などに残っていないのだ。噂に尾ひれがついた物なら聞いたことがあるが、本来の能力は不明なのだ。

そんな事柄があり、銃器が無力とされ、剣が最強であると、言われるようになったのだ。

【帝国】、【神聖法皇国】は、元々武士や騎士が多く存在する国ってこともあり、九カ国内では、一二を争う国である。


そんな、帝国民の僕は、今日も今日とて、しばかれていた。

「そんなんじゃ、私に触れられないよ!ツルギちゃん!もっと本気出さなきゃ!」

っと学園指定の制服のスカート靡かせながら、腰まで伸びる黒髪震わせ、僕の刀を避ける美少女。

「いやいや、あ、秋乃あきの、もう、けっ、結構、本気、ななんだけど!?」

息づかいが荒いからって、警察呼ばないでね?

って、そんな冗談言ってる場合じゃ無いな

さっきから、隙を突こうと思って突きを入れても躱され、なんならっと思って凪いでも、全て躱された。

冗談抜きで、やっぱめちゃくちゃ強いな。秋乃は。

僕が今、目の前に立っている美少女ーー相良さがら 秋乃は、何処か涼しい顔で僕を見据えていた。

あんだけ、激しい攻撃を躱したにもかかわらず、汗一つかいて無い姿が僕と彼女の力の差を示している。

僕は、両手で持った刀を真正面に向け、手を腰の辺りまで落としいく。所謂正眼の構えをとった。

対する秋乃は、右足を引き、体を右斜めに向け右手で持った刀を右脇に取り、剣先を後ろに下げた構える、脇構えをとった。

それぞれの流派の構えは、違うのでお互いがお互いに初動を見逃さないように、睨みを利かせるのだ。

その時、アラーム音が訓練所に鳴り響いた。試合終了の合図だ。

互いに刀を、腰帯の鞘に納め、足を揃え、背筋を伸ばした。

「「ありがとうございます」」

そして、同時に頭を下げて挨拶をする。

これが、訓練をやる時の挨拶である。

「お願いします」で始まり、「ありがとうございます」で終わる。武士道を重んじ帝国民ならではの風習である。

「あーあ、結局一歩も取れなかった」

僕が不貞腐れていると、秋乃の美貌が崩れるほどトロけきった顔で僕を眺めていた。

「あー、子供みたいなツルギちゃん、、、尊い」

これが、中等部最強の【漆黒霧ブラックミスト女王クイーン】とは思えないな。

涎を垂らしながら、僕に迫ってくる姿が、彼女の美少女って部分に傷を付けている。

コレさえなければ、完璧なんだけどな。

まあ、それは、それで、こうして話してくれたりはしてくれないだろうけど。

人生、ままなら物だな。

「ほらほら、玄霧。次は私の番なんだから、早く変わってよね?」

っと、真っ赤に燃える盛る炎ような髪をショートにした少女がやってきた。

虎の様な金色の瞳は、嬉しそうに僕を見据えていた。

「あら、別にいいじゃない?今日一日、私とずっと一緒ってことで?」

「そんな訳に行くわけないでしょ?翡翠ひすい先生呼ぼうか?」

「っう、、、わかったわよ」

秋乃は、名残惜しそうに僕をもう一度見てから、別の相手を探しに去っていった。

そして、勝ち誇った様に無い胸を張っている少女ーーくれない 姫花ひめかは、去って行く秋乃を見て笑っていた。

因みに、姫花の相手をした娘は、始まって一瞬で意識を刈り取られた。

刀の峰といっても、鉄である。姫花の俊速の剣技、紅虎俊速流の一撃を受ければ気を失って当然である。

試合時間は十五分あるが、その間、意識があれば何度でも試合できるが、姫花と試合した娘の様に意識がなければできないのだ。

なので、姫花は、十五分間ひたすら寝ていたのだ。

翡翠先生もそれを見て、呆れていたが、注意はしなかった。

どうせ注意しても効かないからだ。何故なら、三年間も注意して効果なしではする気も起きなくなる。

なので、ずっと居眠りしていた。

僕の場合は、秋乃が加減しながらやっていたため、ずっとボコられていたのです。

「両者、構え、適当に始めろ」

気怠るげに、翡翠先生が開始の合図を出した。

この人、適当にって言ってはダメでしょ?

「さあさあ、刀を構えな?ツルギくん!」

ボコられて、僕、満身創痍何ですが?って言っても聞いてくれないよな。

「それより、挨拶が先でしょう?」

「うっ、そうだった。めんどいから、よく忘れるんだよね〜。まあいいや!それじゃあ、お願いします!」

「お願いします」

姫花に釣られて、挨拶したみたいで少し癪だけど、そろそろ始めますか!

僕は、さっきと同じで、正眼の構えをした。

姫花の紅虎俊速流には、決まった構えがないため、その時々に構えがちがの厄介である。

今日の構えは、刀片手で頭上に振り上げ、右足を前に出す、片手右上段の構えとった。

これは、振り下ろすっという一つの動きを見れば、最速の構えでもあるが、姫花がそれだけのために構えてるかは疑わしい。

何故なら、姫花の場合に近い速さで繰り出すことができるのだ。

「っは!」

姫花の声が聞こえたかと思うと、正面から消えていた。

ッヒュン!

空気が切られる音を聞き、慌ててその場から飛び退いた。

僕がさっきまで立っていた場所には、姫花の刀ーー【紅緋べにひ】が振り下ろされていた。

あっ、危なかったですね。峰の部分とは言えあんな速さで、振り下ろした鉄の塊なんて食らっていたら、骨とか折れますよ。

「おぉーー!さっすがツルギくん!今日はずっとこの初撃しか使ってなかったから、退屈だったんだよね!」

口調はすごく可愛いらしいのに、端整な顔を獰猛な虎の様に歪ませてる表情を見ると、やっぱ、化け物クラスの剣士だなって思うな。

それからも、鋭い斬撃が続いた。

僕は死にものぐるいで、躱し続ける。

ブオォン!ッヒュン!

胴体を薙ぎ払うような鋭いものは、心臓に悪いな。

【紅緋】が僕の頭上を通り過ぎた時、チリっと何かが焦げた様な音がした。

っえ?

「ちょっ、姫花!落ち着いて!」

僕が気づいた時には、【紅緋】に薄っすらと炎が纏っていた。

姫花は、何かを

これはヤバイと思い、僕も【鎧兜】に刻まれた詠を読み始めた。

「【我が鎧、我に力を示せ。を破る力を】」

僕の詠により、【鎧兜】は、で、形を変えていく。

【鎧兜】とは、正しく鎧を刀の型にしたもので、詠を読み上げると同時に、刻まれた文字によって姿を変える刀なのだ。

僕の体には、紫銀色の胸当てと手甲がはめらて行く。

【鎧兜】は、本来、六十センチほどの太刀であるのだが能力の発動に応じて、刀が短くなるのです。

今は、五センチ程短くなるだけにとどめています。

完全開放すると、刀身が無くなり、全身に紫銀色の鎧が装備されるのだ。

装備する系の刀は、総じて鎧刀と分類される。鎧刀自体は、割と多く存在しているが、その多くは、ただの鎧でしかない。

能力持ちの鎧刀となれば、かなりの一級品か、自作ものである。

自作するには、十年必要としている。

これは、刀と人が一体化する為に必要な期間である。この期間が過ぎると、持ち主が成長しても、その大きさに変化できるようになる為必ず必要とされる。

僕は、知り合いの鍛治師の所に行き、【鎧兜】を刀の形にしてもらったのです。

これにより、僕の【鎧兜】が誕生したのです。

って、そういう話しじゃなかった。

【鎧兜】の能力は、思考加速、身体力極限強化がある。実は、もう一つあるのだが、それは、今は関係ない。

この状態でやっと、姫花の動きを視ることができるのだから、彼女の潜在能力が高いことがわかる。

僕が、構え直そうとした時、背後から疾風のように翠の閃光が通り過ぎた。

気づくと、姫花の刀が宙を舞っていた。

「訓練試合で、能力開放はダメでしょ?」

担任の翡翠 あや先生は、ため息をつきながら、鞘に入って刀で姫花と僕を交互に叩いた。

周りをみると、姫花、僕、翡翠先生、秋乃の四人以外は、訓練所の外から、中を除き込んできたいた。

いつの間にか、そこかしこに、煤で汚れいる場所もあった。

「罰として、姫花は、訓練所の掃除」

翡翠先生は、そう言って訓練所を出て行った。

姫花が、僕を涙目で見つめてきた。

「っう、で、でも、わかったよ。掃除を手伝うよ」

捨てられた子猫のような目で、僕を見つめている姫花を見たら、そりゃ、助けちゃうよね。

「ツルギちゃんは、優しいね?」

秋乃は、そんな僕を見て、苦笑いをしながら掃除を手伝ってくれた。

普段いがみ合ってる二人だけど、なんだかんだ言って仲良しなんですよね。

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