未定

日ノ本 ナカ

第1話

1

この世界は、いくつもの枝分かれの一つだと言われている。

ある世界では、科学者。またある世界では、文学者、料理人、武術者、指導者等々の色々と存在する中の一つだ。

これは、人生の中での選択肢で、人がそうっと思った時に生まれる宇宙とも言われている。

『もしも』、『例えば』、そんな言葉を発すると同時に、その世界は生まれてしまう。

認知が違えば、そこは【平行世界パラレルワールド】になる。

無数に生まれた世界は、ある一定を過ぎると統合され一つになっていく。

そんな、増加と減少を繰り返し、世界は正常に機能していた。

しかし、無数に広がる世界は、いつしか増加の一途を辿って行き、その影響が全ての世界に表れ始めた。

最初は、ただの異常気象だった。

次に起きたのは、別の世界での記憶が統合されることだ。

これには、気づく者と気づかない者と千差万別だった。前者の者は、別の世界で得られた知識や力を手に入れることができた。そのような者達を【覚醒者エヴェイユ】と呼ばれる。

そして、最後に全ての平行世界パラレルワールド

全ての生命は、誕生と滅びを繰り返す。それは、世界すらも同じなのだから。

ただ、今回は違った。それだけで、終わらなかったのだ。

神話、フィクション、創造から成る、人ならざる者達が生まれ出てきたのだ。

ある者はそれを神と称え、また、ある者は悪魔と呼んだ。

人ならざる者の総称を『コントラディクシオン』と呼んだ。これは、フランス語で矛盾を表す言葉である。これを通称、『ラシオン』と呼んだ。

彼等は、勝手気儘に暴れ、暴食を繰り返していた。それは、世界の災厄だった。

ある時、アイスランドにある遺跡から一振りの刀が発掘された。

それは、刃渡り八十センチほどで、刀身は銀色に輝いていた。柄から十五センチほどの所に、指が一本入るような穴が空いていた。そこから五センチ間隔で下に二つ、計三つの穴が空いていた。

柄は漆のような黒色だった。下の方には、金色の糸が一房垂れていた。

剣の形状からして、日本刀のように見えるが、奇妙なことに穴が三つ空いているのだ。

剣の名は【ダーインスレイヴ】。一度鞘から抜き放つと人を殺めるまで、止まらないとされる魔剣である。これは、北欧に伝承として伝えられていた魔剣であった。

世界が生まれ変わった時、魔剣、聖剣、神器はこの世に生まれたのだ。

神話の防具や武具を使い人は、人ならざる者を排除していったのだった。



『壊変暦』。これは、滅びの日からの年数のことだ。滅びの日から、二十年程までは荒れ果てた地が多く、毎年死人がでていた。核などの人工兵器により、世界は、人の手によって亡ぼされるか『ラシオン』達によって滅ぼされるかのどちらかと思われていた。

だが、『ラシオン』は唐突にその姿を消し始めた。

そのせいもあり、ここ数年は平穏な日々を過ごしていた。

世界も正常に戻り、以前のような豊かな生活を取り戻そうとしていく。

世界もまた、変わり始め、今では国は九つにまで減り、その均衡保っていた。それぞれの国には聖剣、神器、魔剣が保有されていて、国家間のバランスはこれにより維持していた。


時は変わり、壊変暦七十八年、寒い季節が過ぎ去り暖かくなり始めた頃。人々は滅びの日を忘れようとしていた。

今では『ラシオン』は、それを信じている人にしか見えないとされていて、御伽話のようになっていた。


『帝国』。それは、元々日本、中国、韓国などアジア圏に存在した国々が合わさってできた国。

僕、東條とうじょう つるぎは、そんな国に生まれた。

家が道場で、剣術、道術、合気道などの武術を日々研鑽している。物心ついた時には、それが当たり前だったので、辛くはあるが、苦ではない。

新しい術を学ぶ時なんかは、凄く楽しみにしていた。

隠れた秘密としては、昔見たヒーロー番組に今でも憧れていることくらいだと思う。

『弱きを助け、悪を許さない』、それが僕の座右の銘である。

『帝国立桜蘭学園』。敷地面積は、およそ千二百キロ平方メートルもある。

桜蘭学園は、四つの塔に囲まれた、作りになっており、その中に建物が四つ存在する作りである。そのうち三つは、初等部、中等部、高等部の校舎がそれぞれ東、南、西にあり、北に、講堂や食堂などの共通スペースがある。

全体的なイメージで言えば、西洋風の造りになっている。

僕は今年の春、晴れて中等部を卒業し、高等部に進学することになりました。

桜蘭学園では、初等部から高等部までの一貫校で、それぞれの学部で適した魔物を討伐し上がることができるのだ。

裏を返せば、倒せない場合、留年もありえるのだ。

魔物と言うのは、壊変暦に入ってから見られる動物で、巨体な蜘蛛だったり、火を噴く蜥蜴だったりする。

僕達の御先祖達は、それを魔物と呼び始めたのだと。

御伽話の中には、『ラシオン』と言う怪人も存在するのだとか。

まあ、そんなことより、僕も晴れて、高等部に進学したということは、これで、成人したも同然ですね!

僕は、初等に入ってから成長が止まり、身長が百五十センチしかないのです。背が小さくて、困ったことはありませんが、背が小さいことでよく揶揄からかう人が多いのです。

それも、今日までです!

僕は、白いのブレザーに黒色のワイシャツ、黒色のスラックス。赤色のネクタイを首に結び、新品の制服で、学園の校門の前にいます。

高等部に進学したことで、僕も成人!大人の仲間入りです!っと、思っていたのですが、、、、

「相変わらず、小さいくて抱き心地いいね!ツルギちゃん!」

漆のような黒く艶やかな髪を腰の辺りまで伸ばし、おっとりとした黒曜のような瞳をだらしなくトロけさせている女子に抱きつかれながら、僕はため息しか出ません。

勿論、背中にあたっている物体を意識したりしてませんよ!年々大きくなってるなって思ったりもしてませんから!

実際、毎日やられると、意識などしなくもなりますよ。

っと、現実逃避している場合では、ありませんね。周りからの針を刺すような視線には、耐えられません。

「そろそろ、やめていただけませんか?僕も高等部になりましたし、先日、十五にもなりました。成人して、大人になったので、子供扱いは、そろそろやめてください」

「何を言ってるのよ?こんなに小さくて可愛いのに、立派な大人の男って言っても頼りないわよ」

っと、女子ーー相良さがら 秋乃あきのはおっとりと笑うだけでした。

制服は、男女で基本的には一緒ですが、スカートが良いっと言う女子がいるため、新しくスカートも導入されている。

秋乃は、スカート派で、黒色のスカートを穿いている。

膝上まで伸びる黒色のニーソックスは、一部マニア集団に神と崇められている。

才色兼備で文武両道、容姿端麗っと、絵に描いたような、美少女で、僕の幼馴染である。

残念なことに、僕は一度も剣で彼女に勝てたことがない。

秋乃のは、縦横無尽、正確無比の剣で相手を翻弄し隙を見て仕留めるバトルスタイルなのだ。

流派は、玄霧流くろぎりりゅう。相手を翻弄させ、確実に仕留める剣術なのだ。

対する僕の流派は、東條神明流とうじょうしんめいりゅう。正々堂々とした剣術なのだが、言い換えれば猪突猛進の捻りのない剣術だと言える。

なので、秋乃の玄霧流は帝国七剣の流派の一つとされている。

他には、双頭龍覇そうとうりゅうは流、雪牙狼せつがろう流、紅虎俊速こうこしゅんそく流、鳳玉ほうぎょく流、蛇促絶苑じゃそくぜつえん流、最後に主流派の帝国正統聖剣流があるのだ。

そんなこともあり、秋乃はいい所のお嬢様だったりする。

「そんなことより、今年も同じ学年ね!楽しい学校生活になりそうね」

よく言うよ。ほぼ権力に物言いわせてるだけなのに。

なんで、秋乃が僕にこんなに執着するようになったのかは覚えてないけど、五、六歳の時からは、ずっと一緒にいるような感じだ。

ハァ、僕がため息を吐いていると前方から凄まじい速さで突っ込んで来る紅閃光が見えた。

それは、寸分違わず、僕の鳩尾に入り込んだ。秋乃は、やれやれと言った感じで、いつのまにかに僕から離れていた。

見えたのなら、僕に教えてくれよ、、、。

「いやいや、ツルギくんおはよう!」

紅のように真っ赤に燃え盛る炎ような髪をショートにし、虎のような金色の瞳の少女が僕に話かけてきた。

僕より、小柄で頭一つ分くらい小さいなりに、と言う凶悪な流派の持ち主の少女は、僕のお腹で頬ずりをしていた。

制服は、秋乃と一緒でスカート派である。秋乃と違うのは、黒色ではなく、白色であるだけだが。

彼女は、くれない 姫花ひめか

紅虎俊速流の総本山、紅家の次期当主が姫花なのだ。

見た目は美少女なのに、剣の腕は一流で、剣速は音速に達するほどだ。。姫花の髪の色が紅ことから、【緋色スカーレットプリンセス】とか言う二つ名で呼ばれている。因みに秋乃は、【漆黒霧ブラックミスト女王クイーン】だ。

「また、プンセスとクイーンを侍らしているぞ」「対して強くもないくせに」「全くあんな小さいやつのどこがいいんだか?」「しかも、アイツって、あのだろ?」「あの、呪われた?」等々の噂話が周りから聞こえてきた。

最後辺りの言葉を聞いて、秋乃と姫花は、腰帯に着いた刀の鞘に手を掛け周りを見始めた。

二人とも眉を寄せ、こめかみにけ血管が浮き出ていた

「全く、ツルギちゃんの可愛いさも理解できない愚か者」

「ツルギくんを悪く言うなんて、死ぬ覚悟ができているのかな?」

二人の静かな怒りに気づくと、皆、素知らぬ顔で各々散っていった。

「まあまあ、二人とも落ち着いて!僕は気にしてないから!」

二人がキレると、返って僕は冷静になれた。とにかく、怪しい雰囲気になった二人をなんとか落ち着かせ、校舎に入ることにした。


紫銀色、これは、魔剣【ダーインスレイヴ】に魅入られた、人の髪色のことだ。

ダーインスレイヴを持った者は血に飢え、一度鞘から抜き放てば、人が死なぬ限り止まらないとされる魔剣である。

しかし、紫銀色の髪の者は、ダーインスレイヴの魔の力を克服し操ることができるとされたていた。

僕は、昔、ダーインスレイヴに手を触れたことがある。どんな状況で、どうして使ったのかは、覚えていない。

ただ、あれは、憎悪や怨念などの負の感覚に包まれた感じだった。


僕達は、西側の校舎に入り割り振られた教室に向かった。

「やっぱり、姫花も同じクラスなんだ」

「そりゃあ、玄霧がいるんだったらいるでしょ」

「別に、張り合わなくても」

「ライバルなんだから、こんな乳だけのお化けなんかに負けられないでしょ?」

そう言って、姫花はスカスカと手を上下にやっていたかと思ったら紅色の柄に手を掛け始めた。

「なんか、イラってきたから、玄霧切っていい?」

頬を引き吊らせながら、剣を抜こうとしていた。

僕達の楼蘭学園では、帯剣が義務付けられている。

剣士、騎士、武士を志す若者が集うこの学園ならでは、それぞれに志しが違うため、剣で物事を決めるやり方が主流になっていた。

姫花は腰帯に紅色の柄に、白い鞘の短刀が挿している。刃の長さは四十センチくらいで、刃に光りを当てると薄く紅色に輝く特注品である。

刃に使ってる金属は、ヒヒイロカネと言って、採掘にはかなり時間がかかり、取れても十年で短刀が二振り鍛えられるからどうかの希少金属である。

姫花は、それを差しているのだ。

一振り目は、四十センチの短刀、【紅緋べにひ】。

二振り目は、三十センチで少し短めで、【白緋はくひ】。

武士の刀は、基本、大刀の本差、短刀の脇差が存在する。

姫花の流派は特殊で、短刀を愛用しているため、本差と脇差が逆になっている。逆といっても、両方とも短刀でどっちがどっちかはわかりづらい。

姫花にとっては、今、手に掛けている【紅緋】が脇差で本差が【白緋】である。

「へー、速さだけが自慢で軽いだけの剣筋に私が切れるって本当に思ってるの?

そう言って、秋乃も黒と紫色の柄に手を掛けた。

秋乃の刀は、六十センチの大刀一振りである。名は、【玄霧くろきり】。

レアアースメタルと言う特殊な金属元素が含まれた金属に漆を染み込ませた闇色の刀で、見る者の目を奪う刀である。

現代に現存するのは、秋乃の一振りだけで、それ以外は行方不明だ。

因みに、僕は二振り持っているが、一振り目は腰帯に差していて、もう一振りは背中に差している。

腰帯に差しているのは、紫銀色の柄に白色の鞘の刀。名は【鎧兜よろいが】。

これは、背中に差している刀のである。

本来の用途は、あまり話したくない。

僕にとっては、【鎧兜】が本差である状態が一番好ましいのだ。

そして、今は、袋に入れ厳重に隠しているが、漆黒の柄に銀色の柄、金糸が一房垂れた、僕の身長の半分以上ある刀。

名を【】。魔剣である。

何故か知らないけど、えらく懐かれた見たいなのだ。

昔、秋乃が「羨ましいわね」っと言っていたが、冗談じゃない。こんな危険な刀と一緒にいるとかすごく危険なのだ。

袋には、封印の術式が刻まれているのだが、どうしても、僕についてくるのだ。

って、そんなこと考えてる場合じゃないか。

目の前では、姫花が笑顔で、紅閃光の斬撃を秋乃撃ちつけようとしていた。

秋乃は、それを全て躱し、隙をみては、峰の部分で、姫花を斬ろうとしている。

二人は、中等部で行われた剣術大会の一位と二位である。

剣術大会は、それぞれの進級前に行われる自由なものである。

大会自体は、自由参加型で、各々の剣磨く場所である。剣の冴えや速さ、重さといったありとあらゆる面で戦い、一番を決める大会である。

北側にある、共用施設の訓練所で行われるのが習わしである。

まあ、そんな二人が廊下で、とは言え、危険極まり無い。

「二人とも危ないから、止めろって!また、怒られるーーー」

ぞ!?っと、言おうとした所で、僕の隣を翠色の影がすり抜けていく。

ッキン!っ音が鳴ったかと思ったら、二人が同時に吹き飛んだ。

「校内ではしゃぐなと前にも言った。覚えて無いのか?」

抑揚の無い、鈴の音のような声がした。

身長は、秋乃と同じくらいで、翠色の髪を肩口で切り揃えた、麗人が立っていた。

蒼色の瞳は、何処か感情が欠落した印象を与えてくる。

っというより、彼女自体、感情の起伏があまりないのだ。

彼女は、翡翠ひすい あや

僕達より、三つ年上で、卒業して直ぐに教師になった人である。

教師になって初めて、受け持ったクラスが僕達のクラスである。

彼女は、帝国七剣の中でも最も謎の多い流派、蛇促絶苑流である。

普段、手合わせをしている時は、帝国正統聖剣流を使っていて、真面に彼女自身の剣を見たことは今までにない。

しかも、帝国正統聖剣流が主流であると言っても信じられ程の腕前でもある。

もし、彼女本来の流派を使えば、数秒も持たないだろう。

それら程、彼女は強いのだ。強い、はずなのだ、、、

「あの、翡翠先生?秋乃見たいなことしないで、ください」

いつの間にかに、秋乃みたいにガッチリとホールドされていた。僕の髪の中に顔を埋めて、頬ずりしていた。

「ツルギは、中々に興味深い。いつでも私の家においで?私が手取り足取り、みっちり鍛えてあげるから」

抑揚の無い声で言われたら、そんなに嬉しく無いな。秋乃とは違い、小さいしな。

イヤイヤ、決して、おっきい方がいいとか、そんなことは、全然ないよ!

「ツルギちゃん?」

「ツルギくん?」

二人の声がハモって聞こえた。

「はっはい!!」

緊張して、声が上擦ってしまったのは、仕方のないことだ。

二人は、刀を鞘に戻し、固まっている僕と抱きついてくる翡翠先生を引き剥がした。

「いくら先生でも、ツルギちゃんは私のペットよ!」

「いくら先生だろうと、ツルギくんは私の的だよ!」

声がハモってたように聞こえたけど、「ペット」とか「的」って言われた気がするんだけど!?

三人が睨み合っている。なんだろう、この全然嬉しく無いな状況は。

これで僕がモテモテなら、全然嬉しい状況なんだけど、ペットや的扱いされると、どうしても嬉しく無い。

僕は、取り敢えず見なかったことにして、教室に入った。

あんな凶悪な三人に、意義申し立てるなんて自殺行為をするつもりは無い。背中の刀をを抜けば勝てるだろうけど、そんな文字通りの諸刃の剣なんて使いたく無い。

なので、スルーが一番なのである。

それにしても、高等部になったてことは、の奴らとも戦えるようになるんだよな〜!すっごく楽しみ!


【帝国】

【自由共和国連邦】

【神聖法皇国】

【死霊同盟国】

【ユートピア新帝国】

【コントラクト四獣国】

【クリミナル囚人国】

【ソレイユ教信国】

【フルット・プロイビート】

これが九大陸で、九つの大国なのだ。

今は、これ以外には国は一つも存在しない。

なので、国同士の戦争よりは、内乱が主な戦争である。

平和になっても、、必ず戦さは起きる。まるで、、、、

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