25話:スケープゴート



「ほおッ! 人食い鬼と名高い〈人形遣いパペッティア〉の本性というわけかな?」


 どす黒い機械の獣頭が、サメのような笑みを浮かべた。ヴァルタンの冷笑に構ってはいられない。

 敵の第二射が来る前に離脱、これを最優先とする――都市部はあまりにも射手に有利すぎるのだ。

 ちょっとした建物の窓や屋上が、そのまま狙撃地点に早変わりしてしまう。

 身も蓋もないことを言ってしまえば、二度も三度も砲撃を切り払えるわけではない。


 弾道が予測できる位置だったから成功したようなものだ。

 由峻の自衛能力をあてにするのは、最後の手段である。

 ヘルメットの通信装置を使い、由峻へ向けて暗号回線を開く。

 少女がヒフミへ駆け寄ると同時、エクソスーツ左腕からグレネードを投擲とうてき

 あまりにもわかりやすい攻撃――ヴァルタンは動じないものの、脇に控えた劍龍の対人レーザーが作動――軍用外骨格のレーザー兵器は、その性質上、自動迎撃システムが優先される。


 ほんの一瞬、ヒフミや由峻の優先順位が下がった。

 その一瞬で十分だった。

 由峻の白い指が、マント状の皮膜に触れたのを知覚――スーツ内部の変異脳にアクセス、空間転移を実行。

 左腕で由峻の細い腰を抱いた――あくまで空間転移のための動作だというのに、彼女の体温を意識してしまう自分がおかしかった。


 視界が虹色の光に包まれる。


 ヒフミの把握する限り――人類連合の体系的研究成果の上澄みだ――超常種の用いる空間転移にはいくつかの制約がある。

 一つ、結晶細胞による物理法則の書き換えが行われている空間には転移できない。

 二つ、変異脳によって干渉できる距離でなければ転移が成立しない。


 エクソスーツの場合、一度に跳べる距離は五〇〇メートル前後。

 インターバル自体は短いため、連続使用で距離を稼げるのが強みであった。

 何度かの転移を実行――わざと遠回りに転移を繰り返し、目的地へ辿り着く。

 市内に確保した、極秘のセーフハウス――情報漏洩の可能性を考慮し、一二月に入ってからヒフミが用立てた物件だ。

 表向き、テナント募集中の四階建てビルだが、内部には食糧や医薬品、武器弾薬の備蓄が済ませてある。

 装甲服の胸のあたりに、硬いものが当たっていた。


「……あの、塚原さん」

 

 由峻の声。

 黒い長髪が、視界の隅でさらさらと揺れる。

 もとい、ヘルメットに内蔵されている『山羊の目』で広角の視界を確保。

 ヒフミは、由峻と躰を密着させている自分を再発見した。

 どうやら先の告白で思いのほか意識しているらしい。

 無意識の動作とはいえ、わかりやすすぎますね、と頷き一つ。


 つまり、先ほどからヒフミの胸板に当たっていたのは賢角人の山羊角――たおやかな肢体に似合わぬ立派な三日月型――であり、導由峻は白い頬を少しだけ上気させていた、ということで――そう、控えめに言って可愛いな、と再発見。

 今日の僕は冴えてるな、と自画自賛せざるを得ない。

 すっ、と無言で腕を放す。

 ここで下手に言及するのは得策とは言えない。

 素早く話題を切り替え、少女からの追求を回避すべきなのだ。


「さて、これからの予定ですが――」

「誤魔化しましたね」


 じっとりとすわった半眼で睨まれた。

 何のことやらさっぱり、と肩をすくめるジェスチャーで応じると、由峻は小さく溜息をついてみせた。


「UHMA本部まで、直接、空間転移は使えないのですね」

「ええ。本部は〈異形体〉の足下ですから、こういうショートカットは封じられています。本部まで移動するなら、このセーフハウスが一番、都合がいい位置にあります。導さんはここに待機していていください。僕の部下が、君をUHMA本部まで送り届けます」

「塚原さんはどうするのです?」


 琥珀色の双眸が、じっと彼を見つめていた。

 こうしていると、何もかも見透かされているようで居心地が悪い。

 透き通るような、浮世離れした由峻の美貌にはそう思わせる神秘があった。

 しかし決して不快ではなかった。

 塚原ヒフミにとって、少女の潔癖さは眩しいものなのだから。

 右手で握ったプラズマ刀を意識しながら、口を開く。


「僕が陽動を引き受けます……これは僕たちUHMAの戦いです。無闇矢鱈と民間人の君を利用するつもりはありません。僕の指示に従ってくれますね?」

「今は、そのつもりです。塚原さん、わたしを何だと思っているのですか」


 人が秘密作戦に従事している最中に通信を乗っ取って話しかけてくる娘が、良識と常識を主張し始めた。

 顔をやや引きつらせるヒフミ――エクソスーツの仮面で由峻からは見えない。有事のためとはいえ、不幸中の幸いと言えよう。


「そういうところが不安なんですが。お願いですから、もう少し手続きと建前を大事にしてください。結果として君の身を守るのは、そういう正当性です」

「……善処しましょう」


 理性的同意のこもった声音と裏腹に、不満げな眉の寄せ方である。

 そもそも言って聞くような娘なら、こうしてヒフミを引っかき回したりはすまい。

 由峻は聡い人物だが、どうにも天然の気があるらしかった。

 困ったものだな、とヒフミは思う――天狗のお面を被って樹上から現れた男の感想である。


 おそらく少女がそれを知れば、さぞや愉快な反応をするに違いなかった。

 つまるところ二人は似たもの同士であった。

 不意に、由峻が声を上げる。


「そういえば、先ほど。ヴァルタン=バベシュに塚原さんの力が通じなかったのが不可解ですね」

「気付いてましたか」


 悪巧みしているときの塚原さんはわかりやすいですよ、と由峻。

 密かにこの仕事の自信をなくしそうになるヒフミだった。


「母の記憶の中に、該当する異種起源テクノロジーがあるかもしれません。わかり次第、先ほど教えていただいた暗号回線で連絡します」

「僕の指示、覚えてますよね?」

「これは専門家&からの協力です、塚原さん。未だ人類に開示されていない情報も、わたしの中の母の記憶にはあります。適切な助言を受け入れるのもプロフェッショナルの仕事でしょう?」


 不味い、口喧嘩ではこの娘に勝てないんじゃないか――危機感を覚えつつ、承諾の意を伝えた。筋は通っているから質が悪い。

 心なしか満足そうな彼女の顔を見ていると、嫌味の一つすら言えなくなるのだから困ったものである。

 惚れた弱みだった。









 三分後。

 待機していた部下たち――軍用外骨格が熱光学迷彩を展開して護衛――の到着を見届け、ヒフミは空間転移を実行した。

 転移先は別のセーフハウス。

 定期的な清掃こそ行われているものの、味気ない単身者向けマンションの一室である。

 室内からも聞こえる音は、シェルターへの避難を促す警報だ。

 ヴァルタン=バベシュの降下により、市民への避難警報が発令されたのだ。ア

 クサナは無事に避難してくれているだろうか、と思う。


 たぶん大丈夫だろう。

 あの娘はあれで人見知りする方だが、決して愚かではない。

 超人災害の危機を意味する音を耳にしながら、目蓋を閉じた。


 敵の目的はこの北日本居住区で多くの人間を殺すこと。

 避難民でごった返すシェルター付近は、狩り場として最適だ。

 あと三〇分もすれば表通りから人影は消えるだろうが、今このときなら、人混みで大量虐殺を敢行できる。

 セーフハウスの中から人体探知の異能を行使すれば、その犯行を止められた。

 同調型超常種としての異能、その出力だけに集中すればいい。

 ヒフミ自身、滅多に使わない奥の手である。

 イオナ=イノウエに知られたら大目玉だろうな、と思いながら意識を切り替えた――骨格も筋肉も内臓も、塚原ヒフミという個人ではなく変異脳を生かすための機構に過ぎない、と再定義。

 無限に延長される〈結線〉の操り糸に、すべてを委ねた。


 ゆえに、たかが数百万人――半径一〇〇キロメートルにも満たない面積に住まう人命を『知覚』するのは容易い。


 多少の例外、ノイズで同調できない反応を除外。

 数百万人の視界を、聴覚を、嗅覚を、味覚を、触覚を並列処理。

 まだ同調が浅い。

 もっと奥深く、人々の思考へ同化する――無意識下に刷り込まれたキーワードすら取りこぼさぬために。

 古典的かつ効果的な手段は自爆テロだ。

 複数人によるものならなおのこといい。

 時限式の爆弾はタイミングがシビアすぎるし、遠隔式はジャミングで無効化されかねない。

 であれば、生身の人間に爆弾のスイッチを押させるのが最も成功率が高い。


――『爆弾』、『スイッチ』、『人混み』、『シェルター』、『爆発』。


 途方もない全能感だった。

 人間としての身体に縛られていた異能が嘘のように、数百万人の思考検閲が進行していく。

 それすらもできて当然なのだという実感。

 〈■■■〉の暴挙は、すぐさま〈異形体〉に捕捉された。

 エクソスーツの通信装置へねじ込まれる音声――超人災害の発生源と認定されかねない、という警句だ。

 一人の人間が――『塚原ヒフミ』という人格の友人が、意図を説明するよう求めている。


 肉体のコントロールへリソースを割くのも面倒だったので、エクソスーツの制御系から通信装置へ割り込み、自爆テロに対する攻撃的対策を提案。

 途中、AIの統括する電子的セキュリティの妨害があったものの、些細な問題であった。

 この程度の防壁などで、〈■■■〉を阻めるはずもない。

 困惑する男の声がしたあと、承認する旨の通達が来た。

 〈異形体〉は物わかりがいい。


――見つけたぞ。


 衣服の下に爆弾を身にまとったもの、外科手術で臓器に埋め込まれたもの。

 自発的に志願したもの、〈蟻獅子〉に誘拐され脳改造されたもの――多種多様な敵の位置を、UHMAへ連絡する。

 都市の至る所に配備されていた無人機たちが、対策のため稼働し始める。

 だが、これだけでは確実性が足りない。

 人体操作〈結線〉の真価を発揮――自爆テロのため移動中の敵構成員一〇名あまりを捕捉、躰と思考の自由を奪い取った。

 そのうちの一人は、典型的反亜人思想を持った若い男だ。

 日本国籍、極右団体の体で活動するテロ支援ネットワーク――武装集団〈蟻獅子〉へ連なる組織――のリクルートで自爆要員に仕立て上げられるまでわずか三ヶ月。

 つまり、怪物に食い物にされる類の人種であり、その末路は決まり切っている。


「俺は爆弾を持っているぞ! どけ、俺のそばから離れろ!」


 爆弾のスイッチを押すための躰の自由を奪い取ったついでに、周囲への警告を叫ばせた。

 自分が何を喋らされているのかわからない、という困惑が、〈結線〉を通じてヒフミにも伝わってくる。

 起爆スイッチを押させないまま、衣服の下に装着していた爆弾を周囲に見せびらかすよう操作。

 まるで露出狂のような動作だった。


 躰の自由を奪われ、脱衣を強要される屈辱に男の顔が歪む。

 外気に晒される高性能爆薬入りのベスト――監視カメラに映ったそれが決め手であった。

 都市上空に待機していた無人機が、行動を開始。


 特大の翼を持ったムササビのような機影が急降下。

 一五〇センチほどしかない本体に対し、大きすぎる翼を持った無人機だった。

 自爆犯に覆い被さる異形――翼長四メートルにも達する皮膜が、瞬時に自爆テロ犯の周囲を包み込み、悲鳴ごと外気との接触を遮断。

 爆発の衝撃、熱、破片はもちろん、生物兵器や化学兵器、プラズマグレネードのような特殊な装備にも対処しうる特別性――高機能な結晶細胞を用いた対テロ用ドローンである。

 完全な気密性と引き替えに、ドローンに捕らえられた人間の生存性は存在しない。

 分厚い翼に包まれての圧死か、酸欠による窒息死か、一人寂しく自爆するか――それだけが選択できる未来だ。

 男が選んだのは、自決同然の自爆であった。


 爆発。

 自らの死が徹頭徹尾、無駄死にであったことを悟る実行犯の絶望――その思考と粉砕された肉体の痛覚を、〈結線〉を通じて他のテロ実行犯へ伝達する。

 その結果は誰の目にも明らかであった――失禁、脱糞、嘔吐。


 排泄物で汚れた衣服のまま、泣き喚く男がいた。

 吐瀉物としゃぶつで気管の詰まった女がいた。

 いずれも虫けらのように、意思も感情も奪われ無力化された肉の塊だ。


 如何なる憎しみも、死の感覚と関連づけされれば維持できなくなる。

 強い憎悪も憤怒も、一度、〈結線〉による操作を受ければまともな感情ではなくなる。

 肉体を怯えさせるほどの衝撃を連想させ、人の心をへし折るからだ。

 全員がUHMAの無人機に捕獲されるのを見届けたところで、〈結線〉への没入が途切れた。

 おのれの振るう異能への嫌悪が、『塚原ヒフミ》の自我をもう一度浮上させたらしい。


――〈人形遣いパペッティア〉とはよく言ったものですね。


 塚原ヒフミの通り名は、陰惨な超常能力の産物だった。

 テロを行う人間にあるのは、いつだって怒りや絶望や憎悪だ。

 UHMAがこうして強硬な対処をすればするほど、不平不満を抱えた人間の憎悪は色濃くなる。

 だが、超人災害という例外を除き、大規模なテロが人口密集地で成功する公算は限りなく低い。


 〈異形体〉の授ける神託と、その手足となる超人たちと無尽蔵のドローン群がその『制圧』を可能とする。

 本来、テロが与えていたはずの恐怖や犠牲という強烈な主張も、意味をなさないのだ。

 人類連合の築き上げた強固なインフラと、豊かな営みがテロ実行犯への共感を少なくしていた。


 普通に暮らしてさえいれば食うに困らず、多少の欲求不満はすぐに解消されてしまう。

 ゆえに市民が彼らへ向ける感情は、恐れでも怒りでも憎しみでもない。

 害獣が駆除されたときのような安堵だけだ。〈異形体〉の作り上げたユートピアは、そうやって人々の平穏を守り続ける。

 胸糞悪い気分のまま、敵の計画への違和感を口にする。


「……簡単すぎますね」


 まるで成功させないためにあるような自爆テロだった。

 この程度の作戦計画では、たとえヒフミが見逃していても〈異形体〉によって始末されるのがオチだ。

 不意に、〈結線〉の超知覚が、不愉快な情報信号の増大を感知――まただ。

 ヴァルタンが張っていたジャミングと同じノイズ。

 ヴァルタンのそれよりも弱い出力だが、複数の発信源のように思えた。

 同時に、UHMA本部の相棒から新たな連絡。


『生憎、そう簡単には終わらないみたいだな。――現在地から一二〇〇メートル先に、一二体の軍用外骨格が出現した。通りを五〇〇メートル直進すれば、シェルター前に銃弾が届くぞ。連中の本命はこっちだ』


 昨日、交戦した多脚戦車のような本命――対爆ドローンが自爆テロを封じ込める以上、確実な虐殺に必要なのは、戦闘ヘリ並みの火力と車両並みの機動力を持った兵器というわけだ。

 一二機も持ち込んだ度胸と秘匿性に舌を巻きたくなるが、敵の協力者を含めて謎が多すぎた。

 このジャミングの発信源は、おそらく、軍用外骨格を用いるテロ実行犯たちだ。

 機体に内蔵された結晶細胞の通信素子を、ヒフミの異能への防壁に使っているのだ。


 何処からか送信されてくる超光速通信を伝い、受信側の結晶細胞が情報信号の不協和音を響かせている。

 か細い操り糸を対象の躰へ潜り込ませる〈結線〉にとって、高出力で垂れ流されるノイズの濁流は信じがたいほどの難敵だった。

 だが、ヒフミは今までこんなジャミングに遭遇したことはない。

 未知の構造の解析に手間取り、人体操作に手間取ることはあったが、侵入そのものをし損じたことはなかった。

 由峻からの連絡はない。つまり正体を探ってもお手上げである。


「馳馬、僕はこれから敵性外骨格の排除に向かいます。ポイントC-2に待機中の二四式を投入してください。し損じた敵を潰させます」

『了解』


 一度目の空間転移――裏路地。移動距離五〇〇メートル。

 二度目の空間転移――ビル屋上。移動距離五〇〇メートル。

 敵との距離は五〇メートルを切っていた。ずいっ、と身を乗り出して、無人の道路を疾走する機影を確認。

 三・六メートルの騎士甲冑――軍用外骨格・劍龍ジャンロンが四機。

 背びれのようなレーザー照射ユニットとは別に、レールガンと電磁シールドの発生装置を装備している。

 戦車でも相手取るかのような重武装だ。


 ゴリラのような無骨な機影――軍用外骨格・マングースが八機。

 北米アラスカ特区の輸出するベストセラーモデルだ。

 携行火器は、銃身だけで二メートルに達する電磁機銃と大口径グレネードランチャー。

 生身の人間なら肉片に変わってしまうことだろう。


 いずれも人連との関係が良好とは言えない勢力の兵器だ。

 密造品なのか、密輸入されたものなのか、こうして動いている現物を見ても区別はできない。

 ヴァルタンが煽動したテロが成功すれば、北日本居住区に不信や憎悪を植え付けることもできよう。

 余談だが、四メートル未満の機械に人体を押し込める関係上、軍用外骨格の生存性は決して高いとは言えない。

 何よりも重要なこととして。

 彼らのうち一体でも、市民へ射線が通る位置へ辿り着けば、その瞬間に虐殺が始まる。

 それほどまでに、軍用外骨格とは危険な兵器だ。


――殺そう。


 仮面の下で、ヒフミは浅く息を吐いた。プラズマ刀への電力供給を再開。

 仮面の怪物が、真っ白なマントをはためかせて屋上から飛び降りた。

 重力に任せた自由落下は遅すぎたし、プラズマの熱量は目立ちすぎた。眼下に展開する外骨格が即座に対空砲火を開始。

 そのときを待っていた。

 対物レーザーの射線から逃れる――空間転移の連続展開。


 転移距離四〇メートル――地上三・五メートル、劍龍の目の高さへ転移。燃えさかる刀身を振り降ろし、頭から真っ二つに。

 転移距離一八メートル――二体目の劍龍の頭上へ着地。プラズマ刀を真下へ突き込む。頭から胴体までを串刺しにされ、当然のごとく操縦者は即死。

 転移距離三メートル――僚機のマングースが索敵を開始。その背後へ出現し、プラズマ刀を外骨格の胴体へ突き刺す。超高温のプラズマ流によって、内部フレームごと操縦者が蒸発。

 転移距離一〇メートル――レーザー照射から逃れ、次の転移先を目視。

 転移距離三〇メートル――混乱する劍龍の膝から下を切り落とす。うつぶせに倒れ込んだ機体の胸を突き刺し、搭乗者の頭部を蒸発させた。


 これで四機。

 すぐさま次の位置へ転移――〇・一秒後、電磁機銃の吐き出した銃弾の雨が、道路を粉砕する。

 プラズマ刀の真価は、その絶大な破壊力にある。

 高純度の結晶細胞による電力確保さえできれば、人間が持ち運べる「武器」としては破格の火力を発揮する。

 言わば、射程二メートルにも満たない大砲のようなものだ。


 刃が通れば戦車であろうと破壊できる反面、短すぎる射程が災いして実用性はなきに等しい。

 この欠点を埋め合わせるのが、エクススーツのテレポート能力だった。

 プラズマ刀の射程を補うため、使い手自身が一瞬で敵に接近し、即座に撤退する。


 一撃離脱を前提とする最強の矛だ。

 重火器の運用能力ならば、外骨格の方がはるかに効率的で強いのだ。

 ならば、いっそ常識外の武装を使うべきだった――ヒフミの判断で、このような武装が用いられているのは言うまでもない。

 残る八機の敵性外骨格は、彼の奇襲に対し明らかに戸惑っていた。

 あと三〇〇メートル進むだけで、シェルター前の民間人を虐殺できる。

 だが、自在に空間転移を行うヒフミを相手に時間稼ぎは通じない。

 結果、八機すべてが敵を排除すべく猛攻を開始――エクソスーツに向けて銃火が、レールガンの砲撃が降り注ぐ。

 空間転移を連続し、銃火をかわすこと二秒。

 塚原ヒフミは仮面の奥で口の端をつり上げた。


「お終いです」


 瞬間、三機のマングースが沈黙。

 胴を砲撃に食い破られ、物言わぬ鉄くずと化した。

 シェルターが一望できる交差点からの攻撃だ。

 何機かの外骨格が、砲撃の発生源を見た――二足歩行するカブトムシといった風情、肩口から大型サブアームを生やした巨体が四つ。

 UHMA超人災害対策部は強襲制圧班、二四式装甲外骨格――ヒフミが事前に手配していた増援が到着したのである。


 結論から言えば、この時点で勝敗は決していた。

 反撃のため、レールガンを構えた劍龍の頭上に転移、プラズマ刀を振り下ろす。


 脳天を唐竹割りにされた巨人が、地面へ倒れ込む。

 出鼻を挫かれた生き残りの外骨格に対し、二四式の苛烈な追撃が加わった。

 シールドを使おうとすれば、ヒフミのプラズマ刀の餌食となり、隙を見せたものは砲火に倒れていく。

 近隣住人のシェルターへの避難が完了した、と通達され、ようやく一息つけた。

 髑髏されこうべのようなマスクと真っ白な装甲のせいで、ヒフミのエクソスーツは妖怪変化のような印象だった。

 その周囲に散開する二四式から、次の命令を請われる。


『塚原対策官、次の指示を』


 どうしたものかな、とヒフミは思案する。

 確認されている限り、残る脅威はヴァルタンだけだ。

 奴の現在位置を都市の監視ドローンに要請すべきか、と考え――背筋の凍るような寒気。

 嵐のような騒音として感ぜられるノイズが、確かに感ぜられる。

 人体探知と人体操作の異能〈結線〉を阻害する、強力なジャミングが、


――近づいてくる。


「全機、シェルター前まで後退!」


 爆裂。

 ヒフミの真横で、オフィスビルの玄関が壁面ごと吹き飛んだ。

 北日本居住区で一般的な自己成長建材――動物の骨と肉のように住居の構造を維持――がばらばらに砕け散り、ナノペーストの粘液がまき散らされた。

 音が遅れて聞こえる。

 まるで砲爆撃のような轟音。

 断片一つ一つが砲弾のごとく飛来する中、粉じんの合間に浮かぶサメの笑み――ヴァルタン=バベシュの悪魔的造形。

 その手に握られているのは、全長二五〇センチの結晶細胞製ロッド――第一世代亜人の驚異的身体能力で振るわれる純粋な打撃武器だ。


 回避――不可能。

 迎撃――不可能。


 間に合わない。

 こちらの反射速度を完全に凌駕する超高速。横なぎの一撃が迫り来る。

 一撃目。


 弧を描いて叩き付けられた衝撃に、あっさりと左腕が千切れた。

 最早エクソスーツの内部には、叩き潰された腕の残骸がぶら下がっているだけだ。

 余波だけで二の腕の骨に亀裂が走り、筋肉が次々と断裂――痛覚神経を麻痺させる暇もなく追撃。

 棒がくるりと回転し、反対側の棒先が襲い来る。

 今まで何度も経験してきた死の予感。

 脳組織を粉砕されるおのれを幻視。

 まだ、行動不能になるわけにはいかない。

 蘇生に要する数十秒が貴重なのだ。


 倒れ込むように膝をつき、頭蓋骨を消し飛ばすはずだった殺人的打撃の軌道から逃れる。

 瞬時に空間転移を実行――上空三〇メートルに退避。

 空中で姿勢を立て直し、下界を目視する。

 ヒフミの指示に従って後退する軍用外骨格四機――シールドデバイスを構えながらの機械的後ろ歩き。

 彼らの構えた携行レールガンが、スマートランチャーが、無数の砲弾を吐き出す――第一世代亜人種の重力防壁がすべてを弾き落とす。

 時速六〇キロ以上で離脱する外骨格に対し、ヴァルタン=バベシュは反撃するでもなく余裕の態度であった。

 敵の意図が読めた。


『塚原対策官、これより援護を開始――』

「引き続き後退してください。ガンシップと砲撃ドローンの火力支援を要請、制圧班はこれらの援護なしに目標と交戦することを禁じます」

『……了解』


 何事かを堪えるような声音だった。

 発砲が止んだのを確認後、重力に任せて自由落下しながら空間転移を実行――ヴァルタンの前方、一〇メートルに出現する。

 千切れた左腕が再接合され、筋肉と骨が繋がり、皮膚も元通りになるまで五秒とかからなかった。

 燃えさかるプラズマ刀を、青眼に構えた。


「実に、実に素晴らしい同胞愛だ。先ほどの皆殺しぶりも見事だったよ――」


 饒舌じょうぜつなまま、ヴァルタンが棒を地面へ擦りつけるように振り回した。

 棒の先端が、撃破された外骨格に触れる――ねじれ、歪んだ残骸が宙を舞う。

 レールガンの直撃を受けてなお、原形を留めていたマングース外骨格が、ガラス細工のように砕け散った。

 焼け焦げた人体の破片と、機械部品の散弾が飛来する。


 空間転移には、まだ早い。

 視界を覆い尽くさんばかりの破片に紛れ、結晶細胞の棒が振り下ろされた。

 一見すれば、上段からの打撃。


 しかし、これはフェイントに過ぎない。

 右前方へ一歩、踏み込む。

 刹那、ヴァルタンの振るう棒が後ろに引いた。

 打撃に見せかけたフェイントの後、本命の突きが来る。


 棒先がヒフミの胸板へ迫るその瞬間、空間転移を実行。

 転移先は、ヴァルタンの右斜め後方。

 突き出した棒を戻すには、一瞬、隙が生まれる位置だ。

 燕尾服に覆われたがら空きの背中へ、一〇万度のプラズマ流を――


 否。

 半歩、後ずさる。

 前方へ突き込まれたはずの棒が、視界の隅を掠めた。

 音速の壁を越えた棒先の衝撃波。

 生身なら鼓膜が破れていた。


 ヴァルタンはあの一瞬で手首を返し、棒の位置を入れ替えたのだ、と悟る。

 空間転移を実行――たまらず二〇メートル後退。

 どれほど距離を取ってもゆるがない威圧感と共に、よく通る声が無人の街並みへ響いた。


「自爆テロ実行要員一〇名、軍用外骨格搭乗員一二名、二二人を死へ追いやる手並み、感服したとも」


 塚原ヒフミは、ある種の武術の師範から、その術理と技能を転写したことがある。

 ゆえに、理解できた――ヴァルタン=バベシュの近接戦のセンスは異常だ。

 棒術の利点――刃物と異なり、柄と刃の区分がないこと。


 刀槍の刃を握ることはできないが、棒や杖であれば、どこを握って振るってもいい。

 棒状の獲物を振り回す円運動は、その動作そのものが殺傷力を秘めている。

 突きを避ければ、棒による打撃が、打撃を避ければ突きが襲い来るのだ。


 棒術においては、打撃、打突が変幻自在に切り替わり、円運動の中で縦横無尽に振るわれる。

 剣術の限界――刀身の軌道に限界が生じる斬撃、刺突とは比べものにならない自由度である。

 ヒフミの得物であるプラズマ刀は、その形状と刀身の長さから打刀ほどの使い勝手。


 加えて、技量においては勝っているわけではない。

 長すぎる近接武器の常、閉所での取り回しの悪さもヴァルタンには関係ない。

 棒がつっかえるどころか、進路上の壁や天井が粉砕されてしまう。

 怪物が、そこにいた。


「君と話がしたかった。イオナ=イノウエの秘蔵っ子、我らが怨敵よ」


 ゆっくりと、鷹揚おうような笑みを浮かべて歩み寄るヴァルタン。

 その右手に握られたままの棒を見ながら、ヒフミは慎重に問いかけを発した。


「それで、このジャミングもどきですか。正直、頭に響くので止めて貰えませんかね、これ」

「それは無理だ。何せ、私は――いたいけな少女の命を脅かし、無辜の民をばらばらに解体し、この都市でのテロを目論む悪人だ。人類連合調停局の超人災害対策官と話すには、多少、紳士の嗜みを披露しなければなるまい?」


 耳元では焦ったような馳馬の声。

 こんなに焦っている友人の声を聞くのは、久しぶりかもしれない。


『あと五分でガンシップが急行する。無理に仕留めなくていい、逃げろヒフミ!』


 それができるのなら、とっくにそうしている。

 だが、この規格外の第一世代亜人種ならば、シェルターの防壁を力ずくで破壊することすら造作もないはずだ。

 ビルの壁面をぶち抜いての奇襲と、強襲制圧班を追撃しない姿勢の意味は、言外の恫喝に他ならない。

 どうしてこう、妙な連中から注目されるんですかね、と嘆息したくなる。

 ちょっとした世間話の誘いで人命を賭けるのはやめるべきではないだろうか、健康に悪い。

 互いにじりじりと距離を詰める――円を描くように、武器を手にして互いから目線を外さない。

 彼我の距離は一〇メートル、一瞬で詰められる間合いだった。


「それだけの悪事とわかっていながら、あえて実行する理由がわかりませんね」


 超高熱を発するプラズマ刀を握っていても自滅しないのは、エクソスーツを構成する結晶細胞の恩恵だ。

 そうでなければ、長時間、睨み合いながら口を開く猶予などない。

 生命を焼き尽くす焔を見ながら、ヒフミは、とある推測を元にエクソスーツの変異脳を操作。

 ヴァルタン=バベシュの周囲、ヒフミのテレパス能力へのジャミング――その発信源を探る。


「強いて言うなら啓蒙だ。人間が自律した爆弾となる悪意のかたち――自爆テロは〈異形体〉以前の人類が生み出した殺戮の手段だ。市民に紛れ、市民を、警官を、軍人を殺傷する。実に効果的だ。しかし、〈異形体〉や超常種の前では何の役にも立たない。自爆攻撃の日時も、どの程度の犠牲を出せるものなのかも、〈異形体〉は知っている。人間の悪意やずるがしこさで巨人を倒せるのは、物語の中だけの自慰行為なのだよ。だというのに、ホモ・サピエンスは未だに同胞同士で殺し合ってきた時代の感覚で、いつか、巨人を殺せると勘違いしている」


 この人類連合の文明圏で行われている非対称戦の構図は、二一世紀初頭の対テロ戦争のそれと大差ない。

 ただ一つ異なるのは、テロによって民衆や兵士への消耗を強いる戦略の妥当性が著しく低下したことだ。

 無尽蔵に供給されるロボット兵士たちと、存在そのものが異質な異種知性体による『神託』は、戦いの意味を大きく変えてしまった。

 それでいて表面上、人間を殺傷するための銃弾や爆薬の量が変わったわけではないから、従来通りの殺し合いがまかり通ってしまう。

 ヴァルタンが指摘しているのは、そういう実情と手段の乖離かいりだった。


「こう思わなかったかね。こんなずさんな計画で、人類連合の占領地でテロを成功させるつもりかと。結果は君たちの予想通り、完膚無きまでの無駄死にだ。――期待通りだとも」


 プラズマ刀の切っ先を地面へ向け、一段と低く構える――いわゆる下段の構え。

 この時点でヒフミは、攻勢を捨て守勢に移ると決めた。

 如何にヴァルタンの棒が結晶細胞の塊とはいえ、一〇万度のプラズマ流を受けて無事ではいられまい。

 ましてや、ヒフミには空間転移がある。

 守勢の構えを取ったからと言って、相手に致命傷を負わせられないわけではないのだ。


「〈異形体〉の検閲によって、実行可能なテロの形態は最初から限られていた。わかるかね、あらゆる犠牲は大いなる意思によって妥当と判断された死なのだよ。――これが君たちUHMAの守る秩序の本性だ。この都市で死にゆくACCF(反文明浄化戦線)のメンバーは、人間の非力を浮き彫りにするための生け贄スケープゴート。彼らの真意がどうあれ、それが叶うことはない」


 テロ攻撃の成就など、心底どうでもいいと言いたげな口調だった。

 ヒフミはやりきれない気持ちだった。

 治安組織のエージェントである彼は、テロ行為や超人災害の原因となるものに冷然と対処する。

 多少の憐憫はあれど同情はない。

 だが、目の前の賢角人がさかしげに語る理屈は、加害者も被害者も等しく嘲笑う、悪意の塊のような言葉であった。

 それは塚原ヒフミが憎むもの、人の生命と尊厳を奪う怪物そのものだ。


「我が怨敵、と言いましたね。その我ら、というのは誰と誰です? 僕はイノウエ先生の教え子ですが、特定の集団に名指しで怨まれるような覚えはありません。僕が潰したどこかのカルト集団の残党ならわからなくもないですがね」


 身長二メートルの燕尾服姿が、ぴたりと歩みを止めた。

 背後には黒煙を上げる外骨格の残骸、視線の先にあるのは死神めいた白い仮面。

 ぞっとするほど冷たい目線が、ヒフミの眼を見た。

 分厚いプロテクターと人工筋肉に包まれた鎧の中でさえ、ヴァルタン=バベシュの変調が理解できた。

 先ほどまでの何もかもを冷笑するような軽薄さはなりを潜め、代わりに、粘つくような感情が吹き出している。

 抑えたくても抑えられない、憎悪と羨望と親愛の入り交じった、限りなくどす黒い好意の発露。


「塚原ヒフミ、君という存在は、君の考えているほど安いものではないのだよ。イオナの教育の賜物だな、こうも小市民的な正義感の持ち主が出来上がるとは……人連の教育制度も捨てたものではない」


 これは、崇敬の念だ。

 絶対に向けられるはずがない類の感情を向けられ、ヒフミの背筋が総毛立った。

 敵の意図が読めない。

 あるいは狂人か――耳を傾けるべきではない、という割り切りと裏腹に、彼の中の理性から切り離された部分が危機感を募らせていた。

 こいつは、危険だ。


「考えてみたことはあるかな。一二二年前、この星へ〈異形体〉がやってきたそのとき――何故、侵略の尖兵として『人体をベースにした動物兵器『が作られたのかを。交配を通じた民族浄化など、結果的な側面に過ぎない。そもそも人類を根絶やしにしたければ、そんな回りくどいことをせず亜光速で地球に衝突でもすればいい。為す術もなくこの星の生命は死に絶えたろう」


「人類を滅ぼせない理由があったとでも言うつもりですか」


 ヴァルタンは依然、饒舌だ。

 自己陶酔しているような語り口だが、身のこなしには一分の隙もなかった。

 レールガンの砲火を弾く重力障壁と、クロスレンジを完全にカバーする棒術の殺傷半径。

 二重の守りを持つヴァルタンを仕留めるには、今のヒフミでは火力が足りない。


「我々を亜人種たらしめるものは、結晶細胞という魔法の杖ではない。その真逆、あくまで我々を人へ縫い止めるちっぽけな有機体――ヒト由来組織なのだ。亜人種の存在理由は、ヒト亜種の淘汰。ホモ・サピエンスならざるもの、ヒトの傍流として、ホモ・ペルフェクトゥスが占有するはずの系譜を乗っ取る。それだけが〈異形体〉の望み、我々、ホモ・パンタシアがこの地上に産み落とされた目的だ」


 明滅するゴーグル状視覚器官。

 サイバーパンク風の悪魔の牙が開き、底知れない激情と共に、胸に秘めた真実をぶちまけた。


「そう、超常種だ。呪われし同調型超常種タイプ・シンパシー――君たちが人類の未来を閉ざした。あらゆる進歩を、電脳化の夢を、人工知能の飛躍を殺し尽くした。人間など、存在するだけで不幸な肉塊なのだと意味づけた。この世界は人類とその亜種にとって牢獄なのだよ。貪り食われる餌を産み増やすための養殖場、人間という欠陥品を差し出す生け贄の祭壇に過ぎない……!!」


 そのとき、暗号通信が開かれた。


『塚原さん、聞こえますか。ヴァルタン=バベシュを支援するユニットの正体がわかりました』


 涼やかな少女の声が、ヴァルタンの呪詛を掻き消すような気がした。

 あの透徹した琥珀色の瞳を、熱烈な愛を謳った唇を思い出すだけで元気が出てくる。

 我ながら現金な生き物である。


 浅く息を吐いて、周囲の空間へ伸ばしていた干渉フィールドの状態を認識。ヴ

 ァルタンの放つ重力波に紛れていたが、一箇所、明らかに不自然な歪曲がある――何かを折りたたんでいるかのような空間のねじれだ。


「ヴァルタン=バベシュ。あなたのご高説は後ほど聞かせて貰いますよ。――この事件を終わらせてから、ゆっくりとね」

「残念だが、君にそれは叶うまい」


 捜し物は見つかった。


『戦闘駆体ムシュマッヘ――わたしの母の『作品》です。今からデータを送ります』


 プラズマ刀の剣先を下げ、ゆっくりと間合いを詰める――超人災害対策官・塚原ヒフミらしい軽口を叩く。


「生憎、僕には美人の女神が味方に付いています。これで負ける方がおかしいでしょう?」

『塚原さん?』


 若干、上ずったような声。

 口に出してから気付いた。通信装置用のマイクはスイッチが入ったままなので、先の発言は由峻にも聞こえているのだと。

 一体、あの娘がどんな顔をしているのか興味は尽きなかった――それを確認するためにも。



――こいつを斬ろう。



 そう決めた。

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