第57話 『魔獣の勇者』vs『王国の勇者』結編
『「…喋るのは、苦手だ。」
初代勇者からの一言』
「ぐっ!!…がぁっ!!!!??な、なんだ!!?この痛みは!!?む、胸が張り裂けそうだッ!!!!!」
とある勇者の体を支配し、6人の勇者と対峙して彼らを急にし続けた魔王であったが、急に苦しみ始めるとロイスと
「ぐああぁぁッ!!?お、俺の中で何をしてやがる!!!??」
何やらわけの分からないことを叫ぶ魔王を横目にムサシたちは傷ついた体を引きずりながらロイスへと駆け寄り、まだ息がある彼に必死の治療を試みる。その間も魔王は叫び続け暴れ続け、苦しそうに胸を抑えると終いには魔王はその場へと膝から崩れ落ちた。
(くそがっ!!あのガキ勇者ッ!!俺の魂の中で何をしてやがる!!!)
その魔王の痛みは内から響くものであり、その原因は彼の魂の中になった。いち早くそのことに気が付いた魔王は
「な…なんだってお前が…ここに!!?」
そこに居たのは二人の勇者であった。
一人はトトマ。彼は彼を封じ込めていた鎖から解放され、今は武器を片手に自由の身となっており、魂の中から一部始終を見ていたトトマは今までにない程に怒りに満ちた表情をしている。だが、魔王が驚愕したのはそんなトトマが解放されていたからではない。
もう一人。魔王を驚かせ、また脅かす勇者がそこには居た。
彼の名はクロスフォード。今から数百年も前に魔王を打倒し、人々を魔の手から解放した救世主。その彼と戦った魔王が見間違えるわけもない、その初代勇者が今まさにこの場所に居たのだ。
「…結局、こうなったか」
魔王を討伐し世界に平穏を齎したとされる初代勇者は、眼前に立つ魔王を見てポツリとそう嘆いた。彼の前に立つ魔王は昔とは違い何やら頼りない少年のような見た目をしているが、そんなものは関係ない。「勇者のスキル」を授かった者のみが扱える12個の能力の内、その全てに長けた初代勇者にとってこの程度の噓偽りなどは通用しない。「鑑識眼」と「天性の感」を駆使すればその真の姿、魂の姿が見えるのである。だから、たとえ魔王が何処にでもいそうな一少年の姿をしていたところで、初代勇者クロスフォードからすれば“諸悪の根源”が服を着た程度でしかなく、そこから溢れ出す禍々しくも吐き気を催す程の闇はかき消すことはできないのだ。
「…勇者、時間がない。ついて来い」
「はい!」
唯一無二の天敵を前にして狼狽える魔王に対し、語る言葉など無く、またその時間さえも惜しいクロスフォードはどこからともなく取り出した剣を片手に魔王へと突き進む。それに続いてトトマも魔王へと駆ける。
「ちぃッ!!?どういうわけかは知らんが!!せっかく自由の身になれたのだ!!再び封印はされんぞッ!!!」
まさかのクロスフォードの姿に困惑していた魔王であったが、しかし彼もここで戦わなければ再び魂が封じ込められることは明白であり、ならばと全身に漆黒の闇を携えてクロスフォードとを迎え撃つ。
「『蒼天・破魔・リュウオウジン』」
「『破魔・ティオ』!!」
「ぐおおおおおぉぉぉッ!!!!」
魔王の変幻自在の闇の強襲を掻い潜り、まずはトトマが一太刀入れて次にクロスフォードが剣戟を浴びせる。初代勇者というプレッシャーがあるせいなのか、クロスフォードはいいとして勇者としても挑戦者としても未熟なトトマの攻撃すらもまともに対応できない魔王はその怒りに任せて攻撃を続けるが、やはり二人の勇者には有効な攻撃を与えられない。
「くそっ!!くそっ!!くそがッ!!!どうして攻撃が当たらない!!いや、どうして体が思うように動かないのだッ!!!!」
まるで思い通りにいかないことを嘆く子どものように怒鳴り散らかし集中力が欠ける魔王に対し、クロスフォードとトトマは十分に距離を保ちながらも魔王を攻め続ける。
(いけるっ!!今ならいけるっ!!!)
一方、体が思う以上によく動くトトマは散々に苦しめられた他の勇者たちの光景を思い出し、またその時に何もできなかった自分を悔やんで怒りと焦りに任せて魔王へと飛び掛かろうとするが、その前にスッとクロスフォードが行く手を阻んだ。
「しょ、初代勇者様!?」
「落ち着け、逸る気持ちも分かるがタイミングを見計らえ。あと集中力を切らすな、切らせばこの空間では武器を失う」
「は、はい!すいません…」
「……」
決してトトマとそこまで大差のない歳の姿をしたクロスフォードであるが、その口から出る言葉には言い知れぬ重みがあった。これが世界と人類の命を背負って戦ったの言葉なのだと感じるとトトマは少し委縮したが、今は眼前の魔王に集中する。
「…別に、怒っているわけじゃない」
だが、一方のクロスフォードはちらりとだけトトマを見て、その眼を見ずに何故かそう付け加えた。
「え?」
「いや…だから、謝る必要はない」
「え?あ、いえ、これは癖みたいなもので…」
「謝るのが癖なのか?」
「あはは…、すいません」
「…まぁ、いい」
何やら不愛想な初代勇者だったが、それはトトマに対して怒っているわけでも不機嫌なわけでもなく素がこういう人なのだと感じ、トトマは安心すると同時に物語の中に出てくる正義の塊みたいな姿の初代勇者とは似ても似つかない、その不愛想で不器用なクロスフォードを見て少しだけ親近感を覚えるとふっと心が軽くなった。
「ああぁぁぁッ!!!何でだッ!!!何でなんだッ!!!!!」
そんな最中、魔王はというと頭とは裏腹に全く自由に動けず、何よりも技が一つも発動できない自分の状況に苛立ち、その怒りをもはやトトマたちだけでなく辺り構わずにまき散らしていた。
「勇者ッ!!!この俺に何をしたッ!!!何故体が思うように動かないッ!!」
怒りに任せて暴れていたかと思えば、ふと目に入ったクロスフォードを見てまた新たな怒りが込み上げてきた魔王は闇で作り出した巨大な腕でクロスフォードを握り潰そうと手を伸ばすが、それを一閃で消し去るとクロスフォードは目にも止まらぬ速さで魔王の体にも一閃入れる。
「忘れたか、魔王。お前の魂を十二の欠片に分けたことを」
「お、俺の魂を…分けただと!?」
「そうだ。だから今のお前はかつて魔王と呼ばれたものの残り滓にすぎない」
それだけを言い、クロスフォードは魔王を大きく斬りつけた。また、その隙を突いてトトマも自分の姿を借りた魔王を切り伏せ、瞬く間にして魔王は劣勢へと追い込まれていく。切り傷としては大したことはなく、この空間において物理的な外傷は致命傷にはならず、むしろ思いが揺らいだことにより魔王はその力を減退させているようであった。
「そ、そんな…そんな馬鹿なことが…そんなことが…」
愕然とする魔王に、今が狙い時だと感じたクロスフォードとトトマは一気に攻撃を仕掛ける。だが、その刃が魔王へと届く前に、再び魔王の体から膨大な闇が溢れ出す。
「く…くははっ…くははははは!!!!なら、その残り滓程度で貴様らを葬り去ればいいことだろうが!!!そうだ!!俺は最強の魔王だぞ!!誰もが怯え、命を乞い!!誰もが俺の前では無様にひれ伏すのだ!!!」
そう意気込むと、魔王はカッと目を見開いてトトマの体を支配して復活した魔階島へと意識を戻すとそこにいた数名の勇者たちを睨みつける。
「まずは貴様らからだ!!今を生きる忌々しき勇者共がッ!!!お前らをぶち殺してやるッ!!!」
事情の知らないロイスたちからすればその時間は一瞬であり、魔王が苦しんだかと思えば彼はすぐに態勢を整え、傷つきまだ回復も追い付いていないロイスたちへと襲い掛かる。その荒れ狂う野獣のような、なりふり構わずただ怒りと憎しみだけを原動力に動く魔王の前に手負いのムサシやダン、ココアにアリスが立ちはだかる。
「死ねぇぇぇぇぇッ!!!勇者ッ!!!!!」
一薙ぎで地面を抉る程の斬撃を繰り出し、その攻撃を受けて怯むムサシたちに対し即座に魔王は手にした
「死ぬのはッ!!!お前の方だッ!!!!!!」
「何っ!?ぐおおおおぉぉぉxっ!!?」
だが、その瞬間、上空から何者かが飛来し、雷のような速さで
咄嗟のことに怯む魔王であったが、その衝撃が止まぬうちに続けざまに、今度は側面から衝撃が加えられる。
「くっ!!一体何が!!?」
「いくぞッ!ブラックッ!!!俺は合わせねぇから、てめぇで合わせろッ!!!」
「分かってます!!シンさん!!!」
「『身碇大甲白雷』ッ!!」
「六法『強』ッ!」
突如として加勢に入った勇者二人。一人は『孤高の勇者』ことシン、もう一人は『薬師の勇者』ことブラック。「勇者のスキル」の「限界突破」で常人離れの動きを見せるシンと、薬を使ってそのシンと同等の身体能力を一時的に得たブラックの両名は怒涛の連撃を魔王に打ち込んでいく。相手に一切の反撃の隙を与えない、まさに“攻撃の壁”で魔王を押し切ると二人は魔王を闘技台の上へと押し戻した。
「これでッ!!!!」
「最後ですッ!!!」
そして、二人で百を超える拳撃を打ち込んだ後、シンとブラックは息を合わせて魔王を闘技台の中央に叩きつけた。常人なら木端微塵に砕け散ってもおかしくない衝撃にも関わらず、魔王は苦しんだ顔をしていたものの戦闘不能程の深手は追っていなかった。
「ちぃっ!化物かよ…」
「こ、ここまでやって…この程度だ、なんて…」
「あ…、ぐあ…っ!!この…雑魚勇者…共がッ!!」
即座に魔王から離れたシンとブラックの前で、当の魔王はふらりと立ち上がった。その表情からは余裕は消え去り、外と内から幾多もの勇者から攻撃を受けた魔王は険しい表情ではあったが、しかしその眼は怒りに燃え、闘志はまだ消えてはいなかった。
「き、消えろぉ…!勇者も、人も…神も……全部、消えてしまえば…いいんだ…」
内から出る闇に呑まれ体の至る所から血を噴き出し、もはやトトマの体の原型を留めていない魔王はぶつぶつと呟きながらも武器を構える。
「全て…、そう全て消えてしまえばいいんだッ!!!!!!!!」
「「くっ!!?」」
その傷ついた状態でもなお魔王は天高く叫び、その蠢く感情のままに吼え、そして哭いた。
「『
だが、その天を見上げた魔王の目に写ったものは幾多もの光、襲い掛かるは焼き焦がす炎、凍てつく氷、吹き荒れる嵐、湧き上がる大地。ありとあらゆるこの世界に存在し得る全てのものが魔王へと襲い掛かり、その体を崩壊させていく。
「がああああぁぁぁぁぁッ!!!??」
「…時間稼ぎご苦労」
声にならない声を上げ、上げた所で誰にも届かない魔王を眺めながらその魔法を作り上げた主が天から降り立ちシンとブラックの両名を労った。
「…たく、時間掛け過ぎじゃないのか?」
「念には念を入れてさ。それにこの魔法ですら今のトトマ君相手では時間稼ぎにしかならないかもね~」
やれやれ困ったと言いたげにバルフォニアは身に付けたローブを翻しながら魔王を見つめたが、次の瞬間、荒れ狂う万物の魔法が黒く染まり、そして一瞬にして消え去った。
「く…くそがッ!!?こっちは魔法を吸収できるんだよッ!!!!」
土埃の中から現れた魔王は怒りの声でそう叫ぶと、続けざまにバルフォニアの魔法を飲み込んだ
「お返しだッ!!!『
規模は一回り小さくなったものの、存在し得る全ての属性を配合した魔法が魔王のマナと呼応した状態にて打ち出された。流石のシンもブラックも、その魔法を前にして身の危険を感じその場から離れようと身動ぎする。
だが、そこまでも含めて『魔術の勇者』バルフォニアの計算通りだった。
「魔法の吸収が貴様だけの専売特許だと思うなよ!!!『
バルフォニアはシンとブラックを庇うようにして立ちはだかると、その手を前に突きだして魔法をその手に受けた。すると、荒れ狂っていた魔法は次々と崩壊し、一瞬にして跡形もなく消え去った。
「ふぅ…」
理屈は分からないが、魔法が消えた後バルフォニアの額や手の甲に紋様が強く浮かび上がり、それが消えると同時にバルフォニアはほっと一息つく。
「おい、すげぇじゃねぇか!それでその後はどうするんだ!!」
「え?」
「いや、だから魔法を消した後はその技は何をするんだ?」
「いや、特に何も…。この魔法は自分の魔法をマナに還元するだけなんだ。いやー、使う機会が少なくて漸く使えたよ!あ、でも本来はこういう使い方じゃなくてだな…」
「うるさい、黙れ、役立たず」
「ちょ、おいこら、シン!?それが先輩に対する態度か!?」
「お、お二人とも!あれを!!?」
バルフォニアとシンの口喧嘩を遮り、驚いた様子で声を上げたブラックの指差す先には急に崩れ落ちた魔王の姿があった。とはいえ、その姿は先程までの悪の塊のような禍々しい姿ではなく、彼らがよく知る少年の姿である。全身のあらゆるところから血が滴り、ピクリとも動かないトトマがそこにいた。
「ど、どういうことだ?魔王とやらはどこにいったんだ?」
「わ、分かりませんが、でもトトマ君はこのままだと危険です!」
すぐにトトマの下へと駆けつけ、その状態を確認したブラックはトトマが危険な状態であることをいち早く感知した。光となって消えていないということはおそらくは死んでいないのだろうが、しかし今のトトマの体は死にかけてはいた。
「面倒くせぇな、とりあえず一旦殺して女神の下へ送るのが手っ取り早いだろうが」
血だらけのトトマを見下ろしそう冷静に言い放つと、シンは手刀をトトマの心臓のある部分へと突き立てたが、そこで慌てた様子で待ったの声が掛かる。
「止めい!シン!!そのままではトトマは消滅するやもしれん!!」
「ん?爺か、消滅するって、どういうことだ?」
「魔王には我ら人間を殺し、女神様の加護を打ち消す力があるという。今のトトマは奇法で治療すべきじゃ、アルカロ頼んだぞ」
皆ボロボロで満身創痍な姿をしつつも、トトマの下へと集まった勇者たちはアルカロの奇法で治療を受けるトトマを見下ろしながら曇った顔をしていた。
「それで、結局これは一体どういうことなんだ?魔王って…昔に初代勇者様が倒したんだろ?」
その場にいた誰もが気にした質問をダンが口にしたが、その質問には誰も答えられない。誰も明確な答えを持ってはいなかった。
「爺の眼にはこいつはどう見えたんだ?」
「…そうじゃな、あれは確かにトトマではない何かであった。黒く、禍々しく、それでいて恐怖ではなくどこか甘い誘惑のある、深淵。それが魔王だと言われれば納得であるし、それが魔王ではないと言われれば納得はいかんな…」
「ケッ!つまりはわかんねえってことじゃねぇか…。まぁ、いい、俺はあれが魔王だろうが何だろうが、もう戦えないんなら用はない、じゃあな」
誰もシンを止められない中、彼は姿を消し、またその入れ替わりで現れたギルドの者たちに助けられ、勇者たちは一先ずはこの話を保留とし、今回の事件は幕を下ろした。
その一方で、トトマの魂の中では傷付いた勇者二人と、その二人の前で力なく横たわる魔王の姿があった。ほぼ初代勇者クロスフォードが一人で魔王を攻め立て、それに合わせて現実世界の勇者たちが魔王を追い詰めたことにより、そろそろ魔王の魂、ではなく
「あぁ…くそ…くそっ!!」
再び初代勇者クロスフォードの力で封じ込められた魔王は悪態を付きながらももはや反撃をする余裕もないようで、ゴロンと横たわったまま悔しそうな声を上げている。
「あ、あとは…魔王を倒すだけですね!」
「……」
「初代勇者様?」
その魔王だったものを眺めながらトトマは嬉しそうにそう言ったが、一方でクロスフォードは険しくも悲し気な表情で佇んでいた。
「現代の勇者、1つ聞きたいことがある」
「は、はい。なんでしょうか?」
「今、この世界はどうなっている?」
「え?平和…だと思います。初代勇者様のおかげで魔王はいなくなったわけですし、今はモンスターに怯えることなく平穏に生きています」
「だが、人々は魔階島に足を踏み入れているのだろ?」
「そ、それは…そうですけど…何か問題があるんですか?だって、魔階島は凄いですよ。まさに資源の宝庫って感じで魔階島なしでは今の世界は成り立ちません」
「……」
トトマはクロスフォードの偉業を称えるためにも、初代勇者に出会えた感激を相まってそう答えたが、その答えはクロスフォードの求める答えではなかった。
「く、くははっ!!どうだクロスフォード?俺が言った通りの未来になっているだろう?結局、人間なんてそんなものさ…くくく…」
「黙れ」
一方で、トトマの答えに喜んだのは魔王の方であり、魔王は身動き一つできない状態のまま、だが勝ち誇ったようにそう言った。その二人に困惑するトトマであったが、クロスフォードはそんなトトマと向き合って真剣に話を始める。
「現代の勇者、今すぐに魔階島のダンジョンの扉を閉めるんだ。そして、この剣、
「え!?そ、それはどういうことなんですか!?」
「時間がない…、今の俺には
「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!?話がわけ分からないですし、それにダンジョンの扉を閉めろって言われても!?僕には無理な話です!!」
「何を言う?『勇者のスキル』を使えばすぐだろ?」
「ぼ、僕にはそんなに力はありませんよ!!?」
クロスフォードは何やら話が嚙み合わないトトマに対し眉間に皺を寄せていたがその答えを聞いて唖然とした表情になった。
「何を言っているんだ?お前は勇者なんだろう?」
「そ、そうですけど…、僕は勇者の中でも底辺の勇者…ですから」
自分で伝説の勇者を前にしてそういうのもなんではあったが、しかし事実ではあるのでトトマはバツの悪い顔をしながらそう言ったが、それとは違うことでクロスフォードは驚愕していた。
「まさか…!?勇者は他にもいるのか?」
「は、はい…、僕も入れて12人の勇者がいます。あ、初代勇者様を入れれば13人なんですかね?」
「あり得ない…複数の勇者?しかも12人もだなんて……12…?まさか…!?」
そこまで考えてクロスフォードはとある推論を考え出した。しかし、それと同時に
「初代勇者!?大丈夫ですか!!?」
「問題ない…、ただ私のマナが消え掛かっているだけだ。それよりも現代の勇者、お前に伝えておかなければならないことがある」
力が消え掛かり、体を維持できなくなってきたクロスフォードを支えるようにしながら、トトマはその声を聞き取るために聞き耳を立てる。
「可能なら先程言った通りにダンジョンを封鎖しろ。あそこは人が踏み入れていい場所ではない。あと、
「な、なら今ここで魔王を倒せばそんな心配がなくなるのでは!?」
「そ、それは…できない。こ、これは…か…の…きめ…こ…と……」
クロスフォードは何かを伝えようとしたがその姿は遂に淡い光となって消え去ってしまった。トトマはクロスフォードを感触が残る掌を見つめるが、それと同時に急激な眠気に襲われる。
「ぐっ!!?こ、これは…!?」
がくりと膝を付き、堪らずトトマはその場へと崩れ落ちたが痛みはなく、あるのは沼のように深くて身動きができない、気怠い眠気だけであった。
そして、勇者は眠りにつく。深くて深い、真っ暗闇の眠りに就く。
果たして彼が再び目が覚めた時、そこに広がるのは無事に魔階島の光景なのかどうか。そして、初代勇者の残した言葉の真意とは。勇者とは魔王とは、魔階島とはダンジョンとは。その全ての謎は、神のみぞ知る。
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