第45話 『勇者』vs『モブ』
『「モブにはモブなりの意地がある。
モブにはモブにしかない戦術がある。」
語られない挑戦者の言葉』
『さて!!白熱して参りました魔階島最強決定戦、第一回戦!!続きましては、いよいよ勇者の登場だ!!』
じわりと太陽の光で地面が熱くなる頃、トトマの第一回戦が始まろうとしていた。ぐるりと大勢の観客が見守る中、トトマはダンから貰ったあの剣を腰に差し、緊張半分、興奮半分で闘技場の階段を昇っていく。
第四の番人攻略以降、トトマはその盾を捨て、剣一本で戦うスタイルへと変更した。戦闘においては盾と剣の二つがあった方が戦術の幅が増えるが、どちらも不慣れな彼は、思い切って盾を捨て、攻撃に特化した戦術へと変えたのだ。
だが、本当の理由はそれだけではなく、トトマのパートナーの一人、オッサンが本調子を取り戻したことも大いに関係していた。トトマが盾を使っていた理由は彼のパートナーたちを守ろうという意思の表れでもあったが、「戦闘のスキル」の能力『大盾』に特化したオッサンがいればトトマが盾役を買って出る必要は無くなり、そのおかげで彼は戦闘スタイルを大きく変更できたというわけである。
自分で全てをやる必要はない、ダンジョン攻略において必要なのは役割分担であり、トトマはそのことを少しずつ理解し始め、またオッサンを、パートナーたちを信頼し始めていたのである。その信頼こそが今回の大胆な変更に繋がったのだ。
「トトマ!頑張れよ!!」
「トトマ様!頑張ってください!!」
闘技場へと上がり、そこから見える光景に内心、緊張の方が増し始めていたトトマであったが、そんな彼の目に耳に彼のパートナーたちにダン、ブラック、アリスのパートナーたちが見えると、その緊張が和らいだ。
そして、トトマはそんな応援してくれる皆に少し微笑むと、自分とは反対外側から闘技場へと昇ってきた一人の挑戦者と対峙する。
『それでは、選手の紹介です。まずは、「魔獣の勇者」ことトトマ選手!!』
久々に聞いた『魔獣の勇者』の愛称に苦笑いを見せつつも、盛り上がる観客席へと挨拶を済ませるトトマ。
『まだまだ何かと影の薄い勇者ではありますが、さぁ果たして最年少勇者はどのような戦い方を見せてくれるのか?念のために言っておきますが、モンスターを使うのは反則ですよ!』
(使うわけないでしょう!!)
カキコの気の利いた?紹介に、トトマは心の中でツッコミを入れ、一方で観客席はドッと盛り上がる。
『続きましては、モブ・ブランキ選手!!』
モブという名のトトマの対戦相手は、自分の名前が呼ばれると同時に、手にした剣を大きく掲げて観客席へとその威勢を見せる。
『スキル、武器ともに特に目立つ所はありませんが、こつこつとダンジョンで鍛え上げたその能力で勇者を圧倒できるのか?楽しみであります!!』
何やら失礼な紹介ではあったが、しかしカキコの紹介の通りトトマの目の前に立つモブという男は特段異彩を放つような挑戦者ではなかった。武器、防具、立ち振る舞い、身長、どれをとっても普通である。だがしかし、その闘志だけは激しく、仮にも勇者であるトトマを目の前にしても、モブは緊張や怖気づいた様子は一つを見せない。
「あんた、確か12番目の勇者だろ!」
「え!?あ、はい」
急に語り掛けたモブであったが、そのトトマの返答を聞くとニヤリと笑い返す。
「俺は勇者っていうのが正直言うとあんまり好きじゃない!」
「えぇ!?」
いきなり対戦者から“好きじゃない”と言われ、面喰らうトトマ。こんな所から勝負は始まっているのかと彼はモブの言葉に少し身構える。
「だいたいな!いかにも強いですって感じのスキルが気に食わない!それに他の挑戦者のことを軽んじている態度もムカつく!!」
「べ、別に、僕はそんなこと・・・」
「黙らっしゃいッ!!」
モブはムンッと鼻息荒く腕を組むとトトマを一喝した。どうやら彼の言いたいことはそれだけではないようだ。
「とにかく、勇者だからって油断してると痛い目に合うぜ!俺たち普通の挑戦者には俺たちなりの意地があるんだからな!!」
「は、はい、気を付けます」
しかし、モブの言葉に対して馬鹿正直で丁寧に答えることしかしないトトマを見て、モブは驚いたというか拍子抜けしたというか、啞然とした表情を見せる。
「いやいや、そうじゃなくて、こういうのはお決まりなの!『痛い目に合うぜ』って言ったら、普通は『ふっ、お前もな』って返すの!?なんか俺がいじめているみたいじゃねぇか!」
「す、すいません!?こういうの慣れてなくて・・・」
やれやれといった様子でモブは頭を掻くと、短くため息をつく。
「何だか気が抜けるな・・・。まぁいいや、同じ挑戦者同士、正々堂々といこうぜ」
「はい!」
素直で真面目な勇者と、お調子者だが根は優しい挑戦者はお互いの手が届く距離まで近づくと、右手で握手を交わす。“交戦の儀”、お互いの右手同士を合わせることでこの戦いを憎しみ合うものではなく、正々堂々と称え合うものだということを証明するしきたりである。
その証を交わしたトトマとモブは再度距離を取ると、今度こそ互いに武器を構えて対峙する。この先、どちらが負傷してもどちらが死んでも文句なしで、敗者は勝者を称えねばならない。
『それでは、両者準備も整った所で、最終確認です。試合時間無制限、闘技場から落ちるか、降参するか、止めを刺されるかで負けとなります。武器は自由、道具、技、魔法、奇法の制限なし。全てを駆使して相手を倒してください。それでは、試合開始です。では・・・始めッ!!』
ドンッ!ドンッ!!
カキコの『拡声石』に乗せたその合図と共に、魔法で花火が二回打ち上げられる。
そして、その音止まぬうちに先手を仕掛けたのはモブであった。彼は楽しそうにニッと笑うと、すぐさま腰のポーチへと手を伸ばし、掴んだそれをトトマの足元目掛けて投げつける。
「先手必勝ッ!!」
「ッ!?」
モブの動きを注意深く見ていたとトトマは、投げられたものが何なのかは分からなかったが、もしものためにと後ろに大きく後退した。その投げられた丸い形状何かは、トトマが先程までいた場所に転がると、怪しげな音を立てながら辺りへと白い煙を撒き散らす。
(煙幕!?)
モブの投げつけた道具は『煙玉』であり、挑戦者の間でごく一般的に使われている道具である。その姿的には、以前インディの使った物にも似ていたが、この『煙玉』の場合は視覚的に惑わす効果しかなく、その効能自体もあまり強力ではない。
だが、人一人を攪乱するには丁度良く、トトマは白い煙の壁の向こう、見えないモブの動きに注意する。
『おーっと!!早くも動いたのはモブ選手!!解説のムサシさん、この一手をどう見ますか?』
カキコの隣、グループ『太陽』の第一回戦を解説することになったムサシは余裕の表情で『拡声石』を握る。
『ふむ、これは中々に良い初手ですな。第一回戦ということもあり、皆相手の戦法に対策が取れないという利点を活かした巧みな一手じゃな』
『なるほど!さぁ、初っ端なから不利な展開になってしまったトトマ選手、一体どういった対策を取るのか!』
そう心配されるトトマであったが、一方でその本人は至って冷静であった。彼は目の前の白い煙をじっと見つめて、ダンジョンの中にいる時と同じように神経を研ぎ澄ます。
(集中・・・、集中・・・)
そして、その白い煙の中、ちらと揺れる気配を感じ取ると、トトマは構えた剣にマナを注ぎ込み、地を蹴る。
「『ブレイブ・スラッシュ』!!」
「な、なにッ!?」
横に大きく一閃、トトマが技を繰り出すと、白い煙の中から剣を受ける金属音とモブの驚きの声が響く。
(そこか!!)
更に、薄れ始めた白煙の中、トトマはその声目掛けて弾かれた剣を握り直して突き進む。
「『ブレイブ・スラッシュ・クロス』!!」
「ちっ!?『ストレート・ソード』!!」
奇襲に失敗したモブは、怯みつつもトトマの技に自分の技を重ねた。激しい金属と金属をぶつけた音が響き渡り、両者は最初に開いていた距離程度に離れて対峙する。
『おおっと!?これは意外な展開!奇襲を仕掛けたはずのモブ選手が、逆にトトマ選手に返されてしまった!?』
カキコは驚いた表情を見せながらも実況を続けるが、その一方でムサシは納得のいく表情でトトマの判断に感心していた。
『モブの戦略は中々に面白かった。じゃが、相手が悪かったの』
『と、言いますと?』
『第一回戦故、トトマはモブの戦法を知らなかったように、モブもトトマの戦法を知らなかったということじゃ』
『な、なるほ・・・ど?』
これ以上言うと今戦いを続けるトトマに不利な影響を及ぼすと考えたムサシは、分かる者には分かるように説明した。
ムサシの気が付いた通り、「勇者のスキル」の一つ、「天性の感」は危険を察知する能力である。目や耳だけでなく、人間が感じられる全ての器官を駆使して危険を感じ取る。それに秀で、今日までその能力を使ってきたトトマであればこそ、このような目くらましは無意味とまでは言えないが、あまり有効的ではない。
なので、トトマは焦らず集中して白煙の中を感じ取り、そこから伝わってきた情報を基に、相手の奇襲を奇襲で防ぐことができたのだ。
「やるね~!!」
そのような細かいことはさておき、自らの奇襲が成功しなかったモブは、でも嬉しそうに剣と盾を構え直す。
「じゃあ、ここは普通にいくとしましょうか!!『カット・シールド』」
気を取り直したモブはマナで手にした盾を強化し、じりじりとトトマへと近づく。それはごくシンプルで、正統派な、悪く言えば”つまらない”戦い方であるが、それ故に弱点も少ない。
「『ブレイブ・スラッシュ』!!」
「甘い!!『アッパー・バッシュ』!」
モブの構える盾を避け、右下から斬り上げるように攻めるトトマ。しかし、その攻撃を一歩踏み込んでから、強化した盾で弾くと、モブはすぐさまに剣を突き立てた。トトマはその動きに対応できないわけではなかったが、彼がそのただの突きを剣で流したかと思えば、その流れに乗ったまま、モブは大きくぐるりと一回転する。
「『ラウンド・ソード』!!」
「ぐッ!?」
マナの籠った強力な回転斬りに、両手で剣を構えて受けるトトマだが、その一撃は思いのほかに重く、ビリビリと芯まで痺れた。しかも、モブは間髪入れずに盾でトトマを殴りつける。
「ぐぁッ!?くっ、この!『ブレイブ・スラッシュ・クロス』!!」
「甘い甘い!!『アッパー・バッシュ』!からの『ストレート・ソード』!!」
「ぐぅあッ!?」
トトマのマナと力の籠った渾身の一撃を難なく盾で受け流したモブは、勢いままに剣を突き立て、態勢を崩したトトマの肩を鋭い剣先が深く切り裂く。
痛む腕に、滲み出る血を気遣いながらも一度大きく距離を置くトトマ。荒れた息を整える両者であったが、トトマの表情は冴えず、一方でモブは自信ありげな表情を見せる。
『ここにきて、またもや大展開!!一度は優位に見えたトトマ選手ですが、まさかの苦戦です!一体どうしたというのか!?』
そう叫ぶカキコの隣で、ムサシは『拡声石』には乗せずに一人悩ましくも「うむ」とだけ呟いてトトマを見つめた。
ムサシも感づいた通り、ここにきてトトマの弱点が露呈し始めたのだ。
トトマは勇者ではあるが、しかし決して戦闘向けな勇者ではない。その戦闘能力だけで言えば、おそらくは並みの挑戦者程しかなく、攻撃に特化したスキル持ち相手であれば、トトマの方が劣ってしまう。
その事実は、ダンジョン攻略という点に関して言えば、大した問題ではない。なぜなら、足りない部分を補うのが仲間であり、パートナーである。個よりも群としての力が求められるダンジョンにおいては、トトマは成長したし、その能力を発揮できる。
だが、個人戦闘においてトトマは圧倒的に不利であり、その大きな理由の一つに彼の使える技の種類がある。
トトマは他の挑戦者、他の勇者と比べて、圧倒的に技の数が少ない。「勇者のスキル」の「武器万能」を上げれば上げる程、勇者はそれぞれの武器に特化した技を身に着けていくことができるが、トトマが身に着けたのは今のところは剣技が二つのみである。
技の数が直接その人の戦闘能力に繋がるわけではないが、多ければ多いほど戦術は広がり、様々な場面に対応できる。それが、今まさにトトマが陥っている状況であり、彼の有する技だけでは今のモブを超えることは困難であった。
「ほらほら!どうした!!勇者様よッ!!」
「ぐッ!くッ!!」
その事実に薄々気が付き始めたモブは反対に勢いづいてトトマを責め立てていく。純粋な技と技では勝ち目はなく、トトマもモブも同じくらいの力量を持っている。ならば、気迫も技も勝るモブに優位があったが、ここでトトマが最後の手に出る。
「くらえッ!!」
激しい剣戟の中、完全に油断しきっていたモブの一瞬の隙をついて、トトマはその顔目掛けて何やら青い袋を投げつける。
「な!?」
とっさの出来事に驚いてすぐに対応できなかったモブであったが、とりあえず彼はその青い袋を盾で受け直撃は避けた。
「な・・・!?な・・・、何ともない?」
モブの盾にぶつかったことでその袋が破裂し、中から何やら青い粉が辺り一面に飛散したが、それを浴びたトトマにもモブにも大した影響はなかった。
きょとんとした顔で、モブは辺りを見渡し、またトトマを見つめる。
「おい一体、な・・・に・・・を、あれ?」
息を落ち着かせ、再び剣をトトマに向けようとしたモブであったが、その剣は彼の手からするりと抜け落ち、それどころか、体の力ががくんと抜け落ち膝をつく。
「な・・・何を・・・俺・・・に!?」
力なく地に伏せ、顔だけを必死に上げるモブに対し、トトマは特段勝ち誇った表情を見せることなく、どちらかというと申し訳なさそうな顔を見せ、モブを抱き起す。
「す、すみません。『麻痺毒』です」
「ま・・・『麻痺毒』!?」
ざわざわと騒めく会場の中、トトマは説明しながらもモブを掴んでずりずりと彼を何処かへと引っ張っていく。
「な・・・なんで・・・そんな・・・ものを?」
体が痺れ、口も思い通りには動かなかったが、モブは必死にそう尋ねた。一方で、トトマは彼を引きずりながらも、彼の質問に律義に答える。
「ゴブリンってモンスターは知っていますよね?」
「あ・・・当たり前・・・だ、あの・・・忌々・・・しい」
「この『麻痺毒』、彼らが使う秘薬で、彼らの吹き矢に使われるものなんです」
「ど・・・どうして・・・それ・・・を?」
「えっと、詳しく説明するとあれなんですが、簡単に言えば貰ったんです」
「貰・・・った・・・だと!?」
トトマはダンジョンの道すがらモンスターと会話し、仲間にしなくとも物々交換することがあった。そして、この『麻痺毒』はダンジョンの第二十階層以降に生息するゴブリンたちから交換したもので、彼らしか知らない技術と素材で作られたものである。並みの挑戦者であれば、肌に触れたり、呼吸で体内に入れた場合はモブのように全身が痺れて動けなくなる。
そんなこんなと質疑応答を繰り返しているうちに、トトマは闘技場の端までモブを移動させてしまった。
「ま・・・待て!?」
「はい?何でしょうか?」
これから何が起こるのかは大凡予想できたが、モブは最後の疑問、『麻痺毒』を同じく吸い込んだはずのトトマがどうして元気なのかの理由を彼に問うた。
「それは・・・勇者だからです」
トトマは笑顔でそう答えると、ぽいっとモブを場外へと投げ捨てた。
「こんなの全然勇者らしくねぇ~~~!!!!」
一方で、投げ捨てられたモブの方はその怒りにも似た声を最後にあっけなく場外へと落ちていった。
何とも勇者らしからぬ戦い方ではあったが、しかし勝ちは勝ち。何でも使用可能な規則上、このような小癪な策を防げなかったモブが悪いのである。そして、それらを唖然とした表情で見ていたカキコであったが、ハッと我に返ると実況を続ける。
『な、なんだか腑に落ちないけど、トトマ選手の勝利!!』
その声に、同じく唖然としていた観客たちもまばらに拍手をし、何となくトトマの勝利を祝った。
(こうなる気がして・・・、使いたくはなかったんだよな)
周りの観客たちの対応に一人肩を落とすトトマ。こんなやり方で勝つのは当然彼としても不本意ではあった。モブが言い残したようにこんな戦い方は勇者的ではない。もっと華麗で観客を圧倒させる戦いをしたいとは彼自身強く思っていたが、今のトトマには手段を選べるほどに強くなかった。
だが、トトマも贅沢は言っていられない。規則は守っているし、反則な行為は一つも取っていないのだからと、彼は一人自分を言い宥めつつも闘技場を後にした。
そんなトトマの、勇者の戦いを一部始終観戦していた者が3人。
一般の観客席から離れた後方で、この闘技場を構成する大きな柱の一つの近くで、彼らはその遥か下で蠢く人々を見下ろしていた。
「やれやれ、あれが貴女のお気に入りの勇者ですか」
狐のような目をした男が嘆かわしいといった表情で呟く。
「ふふ、相変わらず面白いわ、12番目の勇者様は」
その隣で、羊のように穏やかな表情で少女は微笑む。
「・・・」
その更に隣では、怪しげな“八目”模様の仮面をつけた男が他の二人の会話に参加することなく、ただ黙っている。
「まぁ、彼が”候補者”になることはないでしょうね」
狐のような男は言う。
「あら?もしかしてってこともあるでしょ?私は彼に期待してるわ」
羊のような少女は言い返す。
「ほう、彼に何か特別なものを感じますか?」
狐のような男は興味あり気に聞き返す。
「まだ無いわね・・・そう”まだ”・・・ね」
羊のような少女は怪しく笑う。
「なるほど、まぁ邪魔はしませんので、お互いに頑張りましょう。それで、そちらの首尾はどうですか、ドクター?」
狐のような男は黙っているだけの八目仮面の男に語り掛ける。
「まだまだ大会は始まったばかり。勇者以外で役に立つような挑戦者は中々絞れませんね」
「そうですか。それでも我々と違って、貴方の仕事は勇者ではなく挑戦者の方ですからね。早い所、“仮面”の実験に適合しそうな検体を見つけてください、時間はお金では買えませんよ」
それだけを言い残すと、狐のような男は人込みへとふらりと消えた。続いて、八目仮面の男も一人少女を残して消え失せる。
「うーん、でも確かに今のままだと12番目の勇者様には“候補者”としてちょっと何かが足りないわよね。強さと言うか・・・、残忍さ、冷徹さ、がね」
そんな中、一人取り残された羊のような少女は困った表情でぶつぶつと考え込む。
「そうだ!それならちょっとした贈り物をあげようかしら、別に規則違反じゃないしね。ふふ、12番目の勇者様ならきっと喜ぶわ!」
しかし、羊のような少女はくるりと起き上がると、満面の笑みを浮かべる。
「待っててね、お兄ちゃん!今私が貴方を最強無慈悲な勇者にしてあげる!そして、行く行くは私たちの“王”に貴方がなるのよ!」
そんな様々な思惑が錯綜する中、果たしてトトマは2回戦を無事に突破できるのか、その行方は神のみぞ知る。
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