第12話  季節は冬へ・・・

「お兄ちゃん・・・」

「ああ、俺はぼっちだった。誰も気付いてくれなかった。

そして、やり直したくてこの町は来た・・・そして・・・」

「そして?」

「かえでは、俺を見つけてくれた。どんな意味でも、きっかけでも、

俺はそれが、嬉しかった」

「お兄ちゃん」

自然と言葉出る。


「ありがとう。お兄ちゃん。私もお兄ちゃんに気付いてくれて嬉しかった」

「かえで」

「お兄ちゃん、かえでの花言葉知ってる」

「大切な思い出」

「さすがだね。その通りだよ。もう、私の事は大切な思い出になるんだよ」

「かえで、知ってると思うがかえでは、春にもさくんだ」

「うん」

「俺の苗字が春だから、いっしょになれば・・・」

心にはなかった・・・でも、勝手に口が動いた。


「うん、それは私も考えた。でも、いったでしょ?お邪魔虫さんがいるって」

「お邪魔虫?」

「うん」

「実はね。お兄ちゃん。私にはもう、婚約者がいるの?」

「婚約者?」

「うん、親同士が勝手に決めたね。いわゆる政略結婚というやつね」

「断れないの?」

「うん、うちの家庭のこと、知ってるよね?」

「ああ」

「だから、その血を絶やさないためにも、私に選ぶ権利はないの・・・」

かえでは悲しそうだ。


気の強い男なら、一緒に駆け落ちするところだが、俺はそれが出来ない。


「お兄ちゃん、以前お兄ちゃんのリクエストした曲を、断ったことがあったよね?」

「ああ、ドリーム&パワーか・・・」

「唄ってみて」

「チャンス、手堅くものにしろ!ピンチ、堂々抑えこめ」

「そう、その歌詞、私には辛いの・・・だから・・・」

かえでは、俺に抱きついて号泣した。


俺には何も出来なかった。


「かえで・・・」

「何?」

「教えてくれ!夏の俺との旅行の意味を」

「あれは、私のわがままだよ、本当に好きな人と最後に思い出が欲しいと」

「かえで・・・」

「誤解しないでね。私も私の両親も、お兄ちゃんの事は理解してるから・・・

弄んでいたわけではないから・・・」

ごめん・・・かえで・・・

俺には何も出来ない・・・


「お兄ちゃん、ファーストキスくらいは、本当に好きな人とさせてね」

そういうとかえでは、唇を重ねてきた。


その後のかえでと言葉は、耳にはいらなかった。

気がついたら、俺は立ちつくしていた。


季節は、もうじき冬になる。


また春は来るのか・・・

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春と秋 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu

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