第11話 秋・・・そして・・・

季節は秋となる。

この時期になると、木々が赤く染まる。


俺は秋が好きだ。


俺のためだけのかえでのピアノコンサートは、今も続いている。

しかし、直接会うのは、減ってきている。

「向こうも、用事があるのだろう」

あまり、気にとめないでいた。


しかし、ある時かえでから、メールが届いた。

「すぐにあいたいから、公園まで来て」と・・・

時刻は夜七時で、問題ないのかと返信したら、「平気だよ」とのこと・・・


そして、俺は公園に向かった。

すると、既にかえでは来ていた。


「お兄ちゃん、わざわざごめんね」

「いいよ、それより何?」

「うんとね」

かえでは、真剣に答える。


「秋だね、お兄ちゃん」

「ああ」

「お兄ちゃん、私の名前は?」

「えっ、秋野かえでだろ?」

「うん、お兄ちゃんの名前は?」

「春日冥」

「苗字に季節がはいってるね。偶然かな」

いや、偶然だろう。


「お兄ちゃん、秋好き?」

「ああ」

「いいよね、秋。で、わたしの名前のかえでだけど、意味はわかるよね」

「もちろん」

「私も、気にいっているんだよ」

かえで、どうした?


「季節って不思議だね、お兄ちゃん」

「えっ」

「春からいきなり秋にななれない。間に夏が入る。お邪魔虫さんだね」

「かえで・・・」

「わたしね、いつしかお兄ちゃんの隣にいたいと思うようになった。

でも、無理だね。間にお邪魔虫がいるんだもん」

おそらく、付き合うには、障害があるのだろう。何かしらの・・・


やはり、ご家族の理解は得られていないようだ。

誤解されている気がするが・・・


「かえで」

「どうした?」

「俺の下の名前は?」

「冥だよね?」

「そう、冥王星の冥だ」

「冥王星は発見されてから、まだ100年経っていない。

そして、小さいという理由で、惑星から淳惑星に格下げされた」

「どうしたの?お兄ちゃん」

「つまり、気付いてくれる人は少ない。俺と同じだ。」

「お兄ちゃん?」

「でも、かえでは俺を見つけてくれた。それが嬉しかった」

思わず本心が出る。



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