第10話 絶景・・・そして、秋へ・・・

かえでの親戚の家で、1泊した後、挨拶をして帰路に就く。

鈍行だと、7時間以上かかるので、早めに出る。


「楽しみだね、お兄ちゃん」

「うん、今日は景色を、ゆっくりと堪能できるな」

「昔、飯田線の歌があったみたいだね」

「飯田線のバラード?」

「うん、それそれ、お兄ちゃん知ってる?」

「いや、俺もリアルタイムでは、知らないよ」

「そうなんだ、同じだね」

当時、問題になったようだ。

今で言う、聖地になっていたようで、困っていたようだ。


田切駅だったか・・・


「あっ、列車に乗る前に買っとかないと」

「何を?」

「駅弁とお茶」

「大丈夫だよ、お兄ちゃん」

「どうして?」

「私が、早起きしてたくさん作っておいたから」

気がつかなかったが、鞄が増えている。

重そうだ。


「持とうか?」

「ありがとう。でも、もうすぐ乗車だから、平気だよ」

「ああ」

見かけによらず、腕力がありそうだ。


少なくとも、荷物持ちについては、助ける必要ないだろう。


列車に乗り込んだ。

適当に腰かける。


行きは、じっくり堪能できなかったが、飯田線の秘境には、圧倒された。

鉄の間で、人気が出るのがわかる気がする。


「はい、お兄ちゃん」

かえでに、お弁当を渡される。

「ありがとう」

食べてみる。

かなり、上手い。


お弁当を食べながら、じっくりと景色を眺める。

特急では、味わえないな。


そして、夏の思い出が終わり、季節は秋となる。

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