第9話 後悔

「楽しみだね、お兄ちゃん」

「ああ、楽しみだ」

かえでの承諾を得て、行きは特急ワイドビュー伊那路に乗ることになった。

この列車は、飯田駅までなので、飯田線の始発駅であり終着駅である辰野までは、普通になる。


飯田線の名所は、その秘境だ。

車窓に広がる大自然は、まさに芸術品だ。

日本もまだ、捨てたものではないと思う。


「お兄ちゃん、特急の乗り心地はどうですか?」

かえでが、いたずらっぽく声をかけてくる。

「快適だよ・・・でも・・・」

「でも?」

俺はかえでにわびる。


「ごめんなさい。かえでさん。私が間違ってました」

「どうしたの?お兄ちゃん。病気?」

「確かに快適です。でも、ゆっくりと車窓の景色を楽しめません」

「というと?」

「やはり、秘境の中を走る路線は、鈍行でゆっくりと車窓を眺めるに限ります」

「わかった?お兄ちゃん」

「はい。かえで先生」

「よろしい」

同じことを考える人は多いのか?

3両で十分なわけだ。


でも、今更ながら、JR東海はややこしい。

3両のうち、2両が自由席だが、一部だけ指定席。

わけわかんない。

(JR東海の方、しゃれですからね)


やがて、辰野に到着する。

ここで、かえでの親戚の家に一泊お世話になり、

明日は、かえでの希望通り、鈍行になる。


これはこれで、楽しみだ。


青春18切符?

忘れてた・・・


「お兄ちゃん、忘れるなんて失格だよ」

「かえでは、覚えてた?」

「嬉しくて、忘れてました」


かえでのご両親には、意外とあっさりOKされた。

鉄道ファンと言えば、即OK.


放任主義なのか?しばりつけたいのか?

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