春と秋

第6話 アンパンマン

かえでと相談し、しばらくは会わない事にした。

別に周囲の目を恐れてではない。

ただ、俺だけのピアノコンサートは、毎日行ってくれる事となった。

毎朝、希望の曲をメールで転送する。

了解の場合は、ＯＫの返事が届く。

出来ない場合は、ＮＯの返事が届く。

まあ、これはまだないが・・・

以前にオリジナルはないのかと訊いたら、

「まだ練習中」とのことだ。

本来ピアノ曲ではない曲でも、弾いてくれる。

奏でてくれると言った方が適切だ。

そして、今日もいつもの場所で、いつもの時間に聴くことになる。

今日は、「アンパンマンのマーチ」をお願いした。

「ＯＫ］との返信が来た。

そして、俺がつくと同時に演奏がはじまる。

やはり、むこうからは見ているようだ。

「何が君の幸せ～何をして喜ぶ～」

思わず唄いだす。

やなせたかし先生は、メジャーになるまで苦労したが、あきらめなかった。

「俺も見習おう」っと・・・

ところで、アンパンマンのマーチが、軍歌だとか、戦死した弟さんへのメッセージというのは、

やなせたかし先生が、全面否定している。

ただ、子供向きだからといって、甘ったるい歌詞にはしたくなかったようだ。

凄いよ、やなせたかし先生。

その夜、かえでにその事を知らせたら、「弟さんへのメッセージと信じてた」と、

驚きの返信が届いた。