第2話 かえでという女の子

今日も、いつものように、公園にいた。

かえではいない。

しばらくすると、ピアノの音が聴こえてきた。


曲名は・・・わからん・・・


でも、よく聴く曲だ。

「今度会ったら、訊いてみよっと」

しばらくすると、演奏が終わった。

「さっ、帰るか」

そうやって帰路に着いた。


自慢じゃないが、俺は音楽の知識は乏しい。

でも、いい曲だというのはわかった。

演奏する曲に、法則があるのかと思ったが、なさそうだ。


次の日、いつものように、いつもの時間に公園に行った。

すると、かえでがいた。

まあ、普通なら不思議はないのだが、普通じゃないから、不思議だ。


「お兄ちゃん、ごぶさた」

かえでが手を振っている。

制服姿だ。

学校の帰りか・・・


「今日は演奏はしないんだね」

「うん、義務じゃないからね。たまには休まないと、飽きるよ」

「確かに、飽きるね」

いくら好きでも、同じ事を毎日すれば、飽きるだろう。


「そういや、かえではどこの高校?」

「えっ」

「いや、答えたくないならいいけど・・・」

「○○女子高、制服でわからない」

まだ、越してきてそんなに経ってないので、制服だけならわからないが、

○○女子高なら、よく耳にする。

かなり、お嬢様チックな高校だ。


ただ、幼稚園から高校まで、女子ばかりで男子は身内でも、出入り禁止ときく。


「かえでは、女の子ばかりの環境だったんだね」

「うん。先生も女ばかりだしね」

「男と話す機会があるの?」

「家族以外は、あまりないかな・・・」

俺には普通に話している。

理由は、みじめになるので、訊くのはやめた。


「普通なら、話しにくいんだけど、お兄ちゃんは私のピアノを気に入ってくれたので、

打ち解けるかなと思い、声をかけたんだ」

先に言われた。

「でも、声をかけてよかったよ。お兄ちゃんは、やはり素敵」

「あっ、そう」

素敵の意味は、わかったので、言葉にはしなかった。


「かえではピアノは、習ってるの」

「ううん、習ってないよ。独学」

「独学で、あんなに上手に弾けるの?」

さすがに、信じがたい。


「お兄ちゃん、信じてないね」

「いや、そんなことは・・・」

否定できない。


「いいわ、お兄ちゃんの眼の前で、弾いてあげるから、聴いてみて」

「かえでの家でか?」

「さすがにそれは無理だよ。近くの公民館」

「だよね・・・」

知らない男を、いきなり家に入れるのはまずいだろう。


「じゃあ、リクエストがあるんだけど・・・」

「お兄ちゃん、当日でいいよ。楽譜さえ用意してくれたら、その場で弾くから」

「わかった。で、いつ?」

「今度の日曜」

「明後日じゃないか?大丈夫なのか?」

「平気、お兄ちゃんの腰を抜かせるから」

そういって、去って行った。


さてと、帰るか・・・

俺は帰路に着いた。

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