特撮オタの私、時給1000円で魔法少女やってます。
キャベツ人間
第1話 私、時給1000円で魔法少女やってます。
私の名前は、星野ヒカリ。
スターライトというありきたりな名前で、恥ずかしながら時給1000円で魔法少女やってます。
主な仕事は、町の清掃や迷子になったペット探しなどのボランティア活動。でも時には強盗犯などを捕まえるような事件にも関わっちゃいます。すごいでしょ!まぁ、私はまだまだ未熟なのでそんな大きな仕事には関わったことすらないんですけど…。大体、そういった事件的な仕事は、上位ランカーの魔法少女に取られてしまうので。
でも、そう思って気を抜いているときほど、大抵そういった大きな事件に遭遇してしまうんですよね…
それは、ごみ拾いのボランティアが終わって、缶コーヒーで一息ついていた時でした。
「こちら魔法システム局1034室、N番地の〇〇〇宝石店にて強盗事件が発生しました。ただちに出動してください、スターライトさん!」
「はい、こちらスターライト。っていうかなんで私なんですか…。今めっちゃ忙しいんですよ、プレベンで限定ベルトの予約戦争が始まるんで…っていうか、ほかの魔法少女の先輩方は、どうしたんですか?いつもはそういう人たちが解決するじゃないですか。」
「現在、スマートブレイク社のビルで大きな火災が発生していて、今そっちの方に多くの魔法少女たちが出動しているから、人手不足で大変なんだよ!」
「へぇ~、なるほど…。でも私、こういった事件って関わったことないですし、そもそも私が戦闘に使える魔法なんて、若干空を飛べるのと、指から水鉄砲出せるくらいのものなんで、強盗を捕まえるなんてこと絶対に出来ないですよ!」
「わかった、そんなこと言うんだったら、別の魔法少女に頼むからもうお前は出撃しなくていい。あ~あ、せっかく時給+1000円に、プレベン限定の変身ベルトをプレゼントしようと準備してたのになぁ~。」
「え…⁉な、な、なんですか、そのいかにも嘘くさい詐欺みたいな条件は!でも、プレベン限定の変身ベルトなんて出されちゃったら、特撮好きの私にとって、見逃せない条件ですし…。あ~もうしょうがない、わかりましたよ、行きます…その代わり、後からそんなの知りませ~ん、言ってませ~んとか言って誤魔化したら、弁慶の泣き所に私の水鉄砲を直撃させてやりますからね!」
「うわっ、なんて奴だ、コワッ!まあでも、直行してくれるんだったら、お願いね。詳しい情報は、スマホに送っておくから!じゃあね~。」
「うざっ」、でもこういった大きな仕事ってマジで関わったことないから名前売るにはちょうどいい機会だし、プレベン限定のベルトもタダでもらえるしなぁ、やるしかないか…。ただ、問題はどうやって強盗犯を捕まえるかなんだよなぁ。私が戦闘において使える魔法ってマジで空を飛ぶのと、水鉄砲ぐらいしかないし…。ん~あ、もういいや!とりあえず、考えるの面倒くさいし、とりあえず現場に行こ!
スターライトは、缶コーヒーを一気に飲み干して、時速30kmで空を飛ぶことが出来る魔法を使って現場へと向かった。
一方、現場の○○〇宝石店では、今回のターゲットである強盗が一人の店員を問い詰めて、とある宝石を探していた。
「おい、パライバトルマリンはどこにあるんだぁ!」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ。誰か、助けて~!」
「おいっ、パライバトルマリンはどこにあんのかって、聞いてるだろぉが!マジで、パライバトルマリンがねぇとやべぇんだよ‼」
「ぎゃああああ、早く誰か~~~!」
そんな中、缶コーヒーを飲み干したせいで、一回トイレに駆け込み、結局到着予定時間よりも10分遅刻して現場に到着したスターライトは、予想を大きく上回る衝撃的な光景を目の当たりにしていた。なぜなら、全長2メートルほどのスーツに身を包んだ一つ目玉の怪物が、女性店員の腕を掴んで何度も繰り返し怒号を浴びせている光景があったからである。
「えっ、ちょっと待って…強盗犯って、人間じゃないの⁉」
プルルルルプルルルル…、ライダーのベルトのケースに入っているスターライトの携帯がタイミングを窺うようにして鳴った。
「あーもしもし、こちら魔法システム局1034室です、あのぉスターライトさん、現場には着きましたか?いやー、ちょっと厄介なことになりまして、実は今から対峙してもらう強盗犯なんですが、人間じゃなくて、宇宙人だったみたいなんですよ。」
「遅っ!いや、もう目の前まで来てて、そいつの姿目撃しちゃってるんですけど!一つ目のめっちゃやばそうな怪物が暴れちゃってる最中なんですけど⁉」
「あ~、なるほど。そいつは、パライバトルマリンという宝石を燃料にして星々を渡っているパライドル星人ってやつなんですよ。まぁ、別に人に危害を加えるようなやつではないので、多分燃料が尽きて燃料を探しているだけなんでしょうけども。」
「いや、なに呑気なこと言ってるんですか‼すでに、女性店員が一人腕を掴まれて襲われてるんですよ‼」
「まあ一回落ち着いて下さい…そんなに強いやつじゃないですから。でも、強盗に間違われるくらいってなると、スターライトさんのレベル的には強い部類に入るやつなんでしょうね。まぁ、これ以上被害出されてもまずいのでなんとか退治お願いします☆キラ」
「ちょっ、じゃあせめて弱点かなんか教えてくだっ…」
「プツッ」、スターライトの話が終わる前に電話が切れた。うそでしょ、どうやって戦うのこんなのと…。こういう時って、特撮だったら大体、なんか変身ベルト的なものをいきなり貰って、よくわからないまま変身して、やべぇ、めちゃくちゃ強い力手にしちゃったみたいな展開になるんだけど…。すでに私、魔法少女に変身しちゃってるしなぁ。あ~どうしようかな、ん~、考えろ考えろ。あっ、そう言えば、こういう一つ目の怪物って大体目が弱点なんじゃないっけ、相場的に。よし、こうなったらイチかバチかだ、あの目に向かって私の唯一の攻撃技『水鉄砲』をお見舞いしてやる!
「ウォー、食らえ水鉄砲っ!!」
「なんだこいつは!おい、ちょっっと、待て‼おいって‼」
いきなり飛び出してきたスターライトに不意打ちで水鉄砲を食らってしまったパライドル星人は、何も言い返すことが出来ずに倒れこんだ。
「よっしゃー‼やっぱりね、大体こういう一つ目の怪人って、目玉が弱点なんだよね。」
「おい、何倒した気になってんだよぉ、お前!」
「えっ、あれさっき目の前に倒れたはずじゃ…。」
後ろを振り向くと、そこには倒れて伸びていたはずのパライドル星人がイラついた様子で立っていた。
「いやいや、俺、別に目玉弱点じゃねぇし!倒れこんだのも急に目に水が入ってきてちょっとびっくりしただけだから‼つーか、いきなり不意打ちってひどくねぇーか、お前⁉なんかもう少しやり取り的なものってあるだろぉよ、普通‼」
「えっ、なにこいつ…。もしかして、特撮オタクなの?」と思いつつも、スターライトは、またパライドル星人の目に向かって水鉄砲を発射した。
「いや、何してんの、お前‼だから、目は弱点じゃねぇって言ってんだろぉ!お前マジで何がしたいんだよ、ったく!せめて、名前くらいは名乗れよ‼」
「はい、スターライトです。」
「ちっげーよ、なんかこう名乗るときは、それ専用の決め台詞的なのがあるだろぉがよ!」
「いや~実際、特撮とか見てるときは、そういうの格好いいなぁとか思うんだけど、いざ自分がやるってなるとなんか痛々しいし、っていうか、せっかく倒したと思ったのに、実際は倒せてなくてまだ生きてましたーっていうこの現状にもう戦う気が失せたっていうか…、ねぇ分かるでしょ、バラドル星人?」
「パライドル星人‼なんで、バラでアイドル活動しなきゃいけねぇんだよぉ、つーかもう、戦う気がねぇなら関わってくんじゃねぇよ!ったく、いかにも正義の味方ですって感じで向かって来やがったのに、どういう神経してんだよ。まぁいいや、俺はマジでさっさとパライドルマリンを見つけ出して次の星にいかなきゃいけねーから、マジでこれ以上首突っ込んでくんじゃねぇぞ!」
「プッチーン」、パライドル星人の見下した一言に堪忍袋の緒が切れたスターライトは、光の速さで自分の携帯を取り出し、魔法少女ランク第18位の大先輩、ウイングブラックさんに連絡を取った。
「プルルル、プルルルル…。あ、もしもし先輩ですか?救助支援中大変申し訳ないんですけども、今から自分が合図出したところに先輩のめっちゃくちゃ強いあれ、一発お願いできませんか?はい、一発だけでいいんで、お願いします。」
そう言って電話を切ったスターライトは、パライドル星人の目の前にいきなり手を突き出して、光の魔方陣を出現させた。
「えっ、ちょっと何してんの?まさかお前、自分では倒せないから、先輩に倒してもらおうっていうそういう魂胆じゃないだろぉな?おい、マジかよこいつ、どこまで性根が腐ってんだ⁉つーか、ここから20㎞ぐらい離れてるスマートブレイク社から攻撃が当たるわけないだろぉーが、バーカ!俺だって動きが封じ込められてるわけじゃねぇしって、あれ?体が動かないっ!」
「ふんっ、あんたのほうがバカだよ、バラ色星人‼なぜなら、私が発射していた水鉄砲には、体がマヒするような成分が入ってるんだから‼まぁ、効果が出てくるのが、20分後だから通常の戦闘ではほとんど無意味に近いんだけど…。」
「パライドル星人だぁ‼くっそー、姑息な手を使いやがって、おのれスターライトぉ‼」
「あ、名前まで覚えてくれてありがとうございまーす。でも、退治されちゃってくださーいねー。それでは、先輩お願いしまーす‼」
「グギャーーーーーー」
「ヒューン」、スマートブレイク社の30階から、猛烈なスピードで飛んできた黒い矢にきれいに撃ち抜かれたパライドル星人は、一瞬にして黒い光に包まれ、跡形もなく消滅したのであった。
「先輩、ありがとうございまーす!」
「良かったわね、スターライト。でも、もちろんこのお礼はしてくれるんでしょうね。私はサブライダーの変身ベルトとその武器のセットで良いわ‼ところであんた、今回の戦闘でランク相当上がってるんじゃないの?」
「本当だ!ランクが上がって、水鉄砲のマヒ効果発動時間が15分になってる!」
「まあ、ごみ拾いとかのボランティア活動よりは、こういった事件の解決のほうがレベルアップしやすいからね~、特に今回の事件は相手が異星人だったし…」
「でもめちゃくちゃ疲れましたよー先輩。先輩はこんなこと毎回やっているんですか?」
「まあね。でも実際、あんたは止め刺してないし、現場にも遅れて到着したんでしょ?まぁ、あんたはさ、魔法少女としてはまだまだなんだから、もっと気を引き締めて頑張りなさいよ。」
「はーい‼」
魔法少女スターライト。今回は、水鉄砲でマヒさせただけでほぼ先輩に任せるというゲスイ戦い方で乗り切ったが、次回はどのようにして魔法少女生活を送っていくのか、乞うご期待‼
つづくかも?
特撮オタの私、時給1000円で魔法少女やってます。 キャベツ人間 @cabbageningen
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