第5話  きになる

私は毎日朝7時の電車に乗る。


駅は数か月前に新設された駅で、今まで使っていた駅より、10分近くなった。


家から駅まで10分の道のりを歩いてゆく。


今日は天気も良いし、気温も暖かく気分よく駅まで到着!


駅に着くと、人で込み合う開発を通り、ホームへ向かった。


私が降りる駅で改札が一番近い、先頭車両が止まる一番前のホームへ向かう。


ホームの端のドアの前の線の前に、20代くらいの女性が立っていた。


見慣れない初めて見た女性である。


私は、彼女の横へ立った。その時!


「ここ私の場所です・・・」


「へ?」


「だから私の場所です、並ばないでください!」


「えっ」


私は何で?と思ったが、朝からトラブルになるのも嫌なので、今日は私の方が引いて、2両目の車両の一番前のドアの並ぶ位置に移動した。女性は、すっとそこに立ったままだった、さらに彼女の横に並ぶものもいなかった・・・。


数分が立ち、電車が来たので私は車両に乗った。


それから私は、その先頭車両一番前の並び位置にいる女性がきになるようになった。


今日も、翌日も、更にその次も彼女は、同じ時間にその場所に立っていた。


だが・・・一か月がたち、そこに彼女は消えた。


その代わりに、私の目には、大きく太い街路樹では見ることのできない、大木、がそこに生えているのが見えた。


ほかの人には見えないのだろうか? 女性が、木になった??


そんな木の幻覚が見え始めて、一年がたった。


私は、思い切って、駅員に木について聞いてみた。


駅員が言うには、この駅が作られる前樹齢1000年ともいわれる巨木があったという。


あった??生えていた?いや生きていたということか・・・。


先頭車両の一番前の彼女は何だったのか?樹齢1000年の木が創り出した幻影だったのだろうか?

          

更に数か月がたった、いつの間にか、駅のホームの一番前に慰霊碑が建てられていた。


そこには樹齢1000年のかつて存在した木に対してのもので、慰霊碑の名称の横には、駅員一同並びに利用者一同となっていた。


見えていたのは私だけではなかったようで、その日から巨木の幻影も、現れることはなくなった・・・・。

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