第8話 水分の重要さ。

             あらすじ


 レシュトリアを捕まえ、その責任を俺に押し付けて来るべノム隊長。

それは無いと反論する俺だが、言い争っている内に、気絶したレシュトリアに変化が起こる。

 体が急激に成長して、縛っていたロープを引き千切り、彼女との戦いが始まる…………


バール   (王国の兵士) レシュトリア(バールの娘と名乗る少女)

フレデリッサ(バールの恋人)べノム   (王国の兵士)


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



 レシュトリアから放たれた攻撃は、今までよりも激しく強くなっている。

 口からだけではなく、杖の先からも黄色いものが放たれた。

 杖の先から出ているものは口からのものよりかなり弱いが、なるべくならあれは当りたくない。


「貴様のチ〇コを寄越せええええええええええええええ!」


「ひいぃ、何なんですかあの女は、まさか切り取って食べたりするんですの?!」


「おいバール、あんな男にとって危険な女は退治しちまってもいいんだよなぁ?!」


「はい、でもなるべく生かしてくださいよ。流石に殺すのは可哀想なので」


「ああ、出来ればやってやるぜ!」


 隊長がレシュトリアの後ろに出現し、先ほどと同じように攻撃するのだが、バチンと弾き飛ばされた。


「同じ攻撃を二度とくらうものか! 観念して、貴様の物を寄越せ!」


 掴みかかろうとするレシュトリアの手をかわす隊長だが、隊長が動きを止めて、地面にゆっくりと降りて行く。

 そして地に降りると、股間を押さえてうずくまった。


「ぬぐ、うおおおおおおおおおお! なんか玉がキュンキュンするぞ! 一体なんだこれはああああああああ!」


「ふっ、貴様には玉がキュンキュンする呪いをかけた。全ての男は私の前では無力になるのだ! さあ大人しくズボンを下ろせ!」


「や、やめろ! 俺の大事なモノに触るんじゃねぇ!」


 なんて恐ろしい攻撃なんだろうか。

 男の玉がキュンキュンするのは稀に良くある現象だが、その痛みは動くのに困るぐらいには痛いのだ。

 動けない隊長をこのまま放って置くのは不味い。

 レシュトリアによって、男としての機能を切り取られてしまう!


 俺はちょっと怖かったが、盾でレシュトリアへとぶつかり、弾き飛ばす予定だった。

 ガンとぶつかった俺だが、俺より体重の軽いだろうレシュトリアは、そのまま止まったまま動きもしない。


「パパ、無駄な事はしないほうがいいのよ。さあパパにもかけてあげる」


 レシュトリアの手が俺の股間近くに伸ばされ、ペロッとでた。

 手は触れていない。

 触れてはいないのだが、俺の玉がキュンキュンしだした。

 しかも何かたまにくるものよりも異常に痛い。


 痛みで顔面から倒れこんだ俺は、レシュトリアに尻を突き出した状態になってしまう。

 ああ、地面が異常に冷たい。

 まるで氷ついてるみたいだ。


「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


「さあパパ、もう少しよ! 私と一緒に帰れるのよ!」


 レシュトリアはうずくまった俺の背後から、ズボンに手を掛けた。

 女性にそれをされるのは別に構わないのだが、アレが切り取られるのは絶対に無理!

 しかし俺は痛みで動けず、隊長も動けなくなっている。


 もう彼女を放っておけば、全世界の男の敵になってしまう!

 それは不味い!

 男のチ〇コを切り取られまくったら子供が出来なくなって、本当に世界が滅びてしまう!


 たっけてフレデリッサ、世界を救えるのはもう君だけだ!


「待ちなさい、その男のモノを斬り落とされては、私もほんの少しだけ困りますわ。止めさせてもらいましょうか!」


「ふん、おばさんが今更何の用なの? 邪魔だから逃げ帰れば良いのに」


「ふふふ、今は何方がおばさんなのか、貴女の方がおばさんなのではなくて? ふふふ」


「へ~、私と戦おうというの? おばさんがは自分が勝てない相手だと理解出来ないのかしら?」


 フレデリッサはどう動く?

 普通にやっても勝ち目がないし、攻撃も弾かれる。

 だが、フレデリッサは不敵な笑みを絶やさない。


「確かに貴女の攻撃はすさまじく、攻撃も効かないのなら打つ手がありませんね。でしたら、それが攻撃ではなければ如何いかがでしょうか?」


「おばささん、まさか時間稼ぎでもしようというのかしら?」


「いいえ、もうすでにその時間は終わっておりますわよ。貴女が、その二人の男に気を取られている間にね」


 レシュトリアの目の前に雪の結晶が舞い落ちた。


「…………ッ!」


 俺と隊長、フレデリッサが居る場所以外は、地面に霜が立ち、天井からは氷柱が伸びている。

 普通なら周りが冷えれば、気付く者もいるだろう。

 だが俺達だけは、その温度を体感していない。


 フレデリッサが操る雪の魔法とは、水に熱引いた魔法で、使うのはベースとなる水、それに炎という熱を操る魔法を加え、極限にまで熱を除去した魔法。

 そう、その熱の魔法を使い、俺達の周りにだけ今までと同じ気温を作り出していたのだ。

 気付くはずもない。


「それが一体なに?! 私には何もダメージは…………!」


「気付きましたか? 自分の足が動かなくなっている事をね。それだけでは御座いませんわよ。貴女は湿度と言う物をご存知かしら? ……まあ化け物なんですから知りませんわよね。貴女の周りにだけ、それが限りなくゼロになっているとしたら、今の貴女の状態は…………」


 レシュトリアは自分の手で喉を押さえて、苦しみ始めた。


「う、げほッ、げほッ! がッ、かは…………」


「そうなりますわよね。もう口は開かない方が宜しいですわよ? 直ぐに乾燥して肺にまで影響がでますので」


「げほッ、げほッ、げほッ…………!」


「動けず、口も開けず、残る手段はその杖だけですが……その状態で使えるのでしょうか? 諦めて降参なさったら如何いかがですか?」


 抵抗しようと立ち上がるレシュトリアだが、今こうしている間にも別の効果を表し始めている。

 それは寒である。

 薄着のドレスしか装着していないレシュトリアにとって、冷気というのは大敵だったのだ。


 体や腕をブルブルと震わせ、落ちるのも時間の問題だ。 

 これは入念に準備を進めていたフレデリッサの勝ち。

 キュンキュンしていた玉の痛みも徐々に収まって来ている。

 体調の万全になった俺達三人に、体を震わせ、息も満足に出来ないレシュトリア。


 もう勝負は決まり、そして俺達に掴まった彼女は、狭い個室に閉じ込められて、両手両足を鎖で繋がれた。

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