五年目





 どうも、リュウです。この世界に転生してから、今日で五年が経った。

 既に俺は立派な子供になっている。


 俺の魔法は、ハッキリ言うと規格外のものだった。複製という魔法は、<対象をコピーして自身に移す>というものだ。

 これが意味するのは一つ。


 ステータスや魔力も複製が可能なのだ。それだけで、既に一般とはかけ離れているだろう。

 これを使うだけで、相手の身体能力を、自分に上乗せできると分かったんだから。


 そして、次に神力。


 これに関しては、はっきり言って何も分かっていない。ためしに呟いてみても、効果は無かった。俺の魔力が足らないのか、それとも何か条件があるのか。

 それまでは分からないけど、とりあえず使えなかった。


 今の俺のステータスがこれだ。


 _____________________________________


 ≪名前≫ リュウ・シルバー(佐藤 亮太)


 ≪LV≫ 1


 ≪魔力適正≫ 複製 神力 氷抵抗 炎電 保管庫


 ≪スキル≫ 魔法技能 暗算 成長促進 剣術 


 ≪称号≫ 女神の心 神の代行者


 _____________________________________



 五歳の子供が可笑しな状況になっている。普通の五歳児は、外で友達と楽しく笑っているだろう。

 しかし俺は、鍛錬をずっとしている。


 中には遊ぼうと言ってくれた子もいたが、それも断った。唯一、妹のリリナとはしっかりと遊んでいる。

 リリアは、意外と泣き虫で甘えん坊なのだ。

 しっかりと兄である俺が面倒を見ないといけない。


 リリナは四歳と、俺より一つ下の年に生まれた。鍛錬で何をするのか、というのは簡単だ。

 魔力の使用法、魔力の増加、身体の強化、この三つだ。


 魔力の使用方法は、毎回少しずつ実験して確認している。どう扱うと魔力を多く使うのか、少なく抑えられるのか。

 それによって、効果に変わりはあるのか、など。既に幾つかの事がわかっていて、それらも含めて有意義な情報だと思う。


 魔力の増加とは、魔法を使う毎に減る魔力を増加させる訓練だ。多ければ多い程、魔法の使用回数も増える。だからこそ、魔力を増加させる。

 方法としては単純で、魔力を多く使うと、その減った量に比例して増加するのだ。

 ただ、これも年齢差があるのか、一歳の頃に比べると大きく増加量は減ってしまった。

 

 身体の強化は、この世界の情勢が関係している。どうやらこの世界では、魔物がかなりの強さなのだそうだ。

 そのため、各国の中でも辺境の地である村に軍を割く余裕などない。


 ならば、どうやって村を守るのか。それが、俺が強くなるという結果に繋がるわけだ。

 この村の近くには、幸いにして魔物は極僅かしかおらず、そしてどれもが弱いらしい。だからこそ、この村は続いている。

 何時かは王都に行きたいが、どうせそれもまだ先だ。


 今は、最短で強くなっておきたい。




  ◆◇◆◇◆◇◆






 朝日が昇る前の朝早く。俺は村の端にある空き地に来ていた。

 此処が俺の練習所であり、実験所でもある場所だ。


「さて、今日は魔法の練習かな?」


 そう呟いた俺は、魔力を高めた。右手を前に翳し、そこに魔力を移動させる。感覚としては、体内を巡る血液を、なるべく集める感覚。

 魔力適正を使用せず、自身の単純な魔力と感覚で発動させるのだ。


 それを、人々は無属性魔法と言う。これは、初歩的な索敵のために覚える者もいるが、そのほとんどが必要としていない。

 そのため、簡単な抜け道に気付けなかったのだ。


 集まった魔力は、そのまま球体に変化していく。次第に具現化しつつある魔力は、だんだんと黒色に染まり始めている。

 大きく、大きく、そして速く。

 掌サイズの球体が完成したら、俺は右手を的に向けた。


 的、といっても廃材を立てただけだ。風が吹くだけでも倒れるから、幾つかの板を組み立てて何とか形にしている。


「魔力弾」


 発射された魔力弾は、高速で的に激突した。しかし、音は立たず、そして衝撃も無い。

 しかし、的はしっかりと貫かれているのだ。


 これが、無属性魔法の真価。魔法を使用したことさえ気付かない。一瞬で相手の命を刈り取れる魔法だ。

 

「よし。これで魔法もかなり上達したな。後は”雨”も再現出来たら・・・・・・」


――と、そんな時だった。


「おにーちゃん・・・・・・・・・・・?」

「え・・・・・?」


 突然の声に振り返ってみれば、そこにはリリナがいた。彼女の視線は、的と俺を交互に見ている。

 ていうか不味い。


(バレた!?)


 密かに練習したのをリリナに見られた。これは、かなり危険かもしれない。

 リリナはまだ小さいから大丈夫だが、もし間違って大人に伝われば、確実に俺は怪しまれる。五歳にして、板を貫通させるなんて異常だ。


「あ、あのさリリナ」

「なに?」

「この事は、父さんと母さんには言わないでくれる?」

「ん~~・・・・・・・いいよ?」

「いいの?助かる!」


 嬉しくなった俺は、リリナの頭を撫でてあげた。前に一度だけやった時、リリナが中毒になりそうな顔をしてたから止めたのだ。

 なぜだからはわからないが、俺が撫でるとリリナは凄く嬉しそうに喜んでくれる。それも、過度に。

 しかし、今はリリナに感謝しなくてはいけない。


「えへへ~」


 気持ち良さそうに目を細めるリリナ。かなり可愛らしい妹だが、俺の居場所を突き止めたのは凄い。

 まあ、警戒してなかった俺が悪いんだけど。


(今度からは、気配の察知に関しても要検討かなぁ)


「じゃあ、これからも言わないでね?」

「じゃあじゃあ!かわりにあそんでね?」

「・・・・・良いよっ!」


 眩しい笑みを浮かべて答えたリリナを見て、俺も少しだけ嬉しくなる。ロリコンではない。絶対に。



 

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