第26話・会長の王子さま

 「ん…っ、ったぁ~~~……くそ、あのアホめ、本気でどつきやがってからに…」

 「…目が覚めた?」

 「んへ?」


 意識が戻り、ひとしきり弟への罵りを口にすると、目を開いてみた。

 すると。


 「おはよ。王子さま」

 「………かいちょ?」


 自分の顔のすぐ上で、こちらを覗き込んでいる伊緒里と目が合った。


 「…『会長』ぉ?」


 そして、その中に剣呑な光があることにも気がついた。


 「…阿方」

 「……そ、それも…まあいいわ。で、気分はどう?」

 「悪かないね。特に後頭部の感触が」

 「ばか」


 そんな罵倒も、どこか柔らかく感じる。


 「もう起きられるよ。だいじょ…」

 「もう少しこうしていなさいよ。ほら、ほっぺた腫れてるし」


 と言って、伊緒里は少し強引に起き上がろうとする次郎の頭を押さえる。

 気がつくと、濡れたハンカチが自分の頬の、三郎太に殴られた辺りに当てられて、それを伊緒里が支えていた。

 つまり自分の顔に、伊緒里はずっと手を当てていたことになるわけで。

 ハンカチ越しとはいえその感触に気がつくと、次郎は急に気恥ずかしくなるのだった。


 「置いてあった水のペットボトルにまだ水が残っていたから…別に汚くはないわ」

 「そういうことを気にしたんじゃないんだけどな…」


 逃れようと軽くもがいたことを、そう誤解したのかもしれない。

 この間、一度も自分から目を逸らそうとしなかった伊緒里の圧に負けて、次郎は疲れた風よ装って目を閉じた。

 そうすると余計に伊緒里の腿の柔らかさを意識させられるが、この際ずうっと見られているよりはマシ…でもなかった。


 「…あの、そんな見られてるとすんげー恥ずかしいんスけど」

 堪らず目を開いて、けど視線は逸らしながらそう言った。目は閉じていても視線は感じるとかいう、わけの分からない状態だった。

 「どうして?いいじゃない、減るものじゃないのだし」


 割と自分の精神的平穏とかがガリガリ削られてはいるんだけどなあ。


 「…次郎くん、さ」


 だからもう、耐えるだけにしておこう、とやっぱり固く目をつむっておく決心をした頃、伊緒里の方から話しかけてきたのは幸いだった。黙っていたらきっと自分がどうにかなってしまいそうだったから。


 「…どうして、あの時三郎太くんと殴り合いまでしようと、してくれたの?」

 「………女の子ってそういう質問好きだよね」

 「茶化しはやめて。私、真面目に聞いているんだけど」

 「俺だって真面目に応えてるんだけどなあ」

 「じゃあ、真面目に教えてよ」


 実際、そう思う。

 男からしてみれば分かってることを、女の子はわざわざ言葉にして欲しがる。

 まあ次郎も、深い仲にはなったことは無くとも浅く広く、女の子とは付き合いのあった方だ。それがどんな理由からなのか、一言で言ってしまえば。


 「…まあ、男と女の子じゃあ、意地を張る理由も向きも、ぜんっぜん違うからなあ…」

 「なにそれ」


 少なくとも、次郎はそう思っていたからだった。


 「…阿方がさ、姉貴にああやって突っ張ってみせたのと、俺が三郎太にケンカ売ったのもさ、形としちゃあきっとそう大差無いんだと思うよ。けど、阿方が意地張ったのは自分に対してで、俺が意地張ったのは………やっぱ、やめない?この話」

 「いや。全部、話して」


 いやもう、本当に拙い。このまま続けたらきっと、自分はあの時感じた「甘酸っぺーもの」の正体を知ってしまうことになる。

 でも。


 「話してくれなかったらキスするわよ」

 「………どーしろってんだ」


 本当にもう、なんだか伊緒里が遠慮ない。きっと、やれるもんならやってみろ、なんて言った日には、即顔を寄せてきそうだ。今日の彼女には、そんな迫力がある。

 だったら、まあ。俺にも覚悟を決めさせて、くんねーかな、と。


 「………一つだけ教えてくんないかな。交換条件として」

 「…ふふっ」

 「…なして笑うん?」

 「だって、いつぞやも同じような話をしたじゃない。立場は逆だけど」

 「……そーいやそんなこともあったな。で、どう?」

 「いいわよ。もちろん」


 まあ彼女ならそう言うだろうな、と思った。

 そして、目を開いた。

 目をつむったまま聞くのでは、なんとなく誠意に欠ける気がしたから。

 そして気がついた。


 「…阿方、眼鏡外した?」

 「……うん。なんか、そうした顔を見て欲しくって」

 「へへ、眼鏡外したら俺の顔よく見えないだろ?」

 「そうでもない。私、絶対眼鏡がいるほど視力悪いわけじゃないし」


 それじゃあなんで…と聞きかけて、止めた。きっと彼女にはそうしないといけない理由があるのだろうし、第一、自分が格好つけて言った台詞がダダ滑りしていることを、気付かれてしまう。


 「じゃあ、聞きたいことがあるのなら、どうぞ」


 覚悟を決めたつもりでいて、やっぱり気が散った。今、自分たちの周りがどんな色なのか気がついてしまった。

 もう、夜になるところだ。公園の街灯だけが光源で、日が沈んだ途端に気温も下がってきている。

 なるべく早く終わらせて、送っていってやんねーとな。

 そう思ったら、割とすんなり、思ったことが言えた。


 「…前にさ、有働数馬って男知ってる?って聞いたら口を濁したじゃん。あのさ、それよりちょっと前に、その男と一緒に、誰もいない空き教室にいるところ、見たんだわ。だから、その…どんな、関係?かって…」


 …と、思ったのだが意外につっかえつっかえだった。答えを聞くのが、ちょっと辛い。


 「…なーんだ」


 けれど、伊緒里の返事は、軽く明るく、拍子抜けしたとはこのとだ、と言わんばかりだった。


 「そんなこと気にしてたの?うん、もういいから全部言っちゃうけど。確かに有働先輩は学部の人で、自治会に部会やあなたたちと距離を置くように言ってきた人よ。でも、もうそんなの終わっちゃってるし、わたしが吾音に突っ掛かってたのも自分が理由。もちろん、このことは口外しないように、って言われてもいたけど…もう、そんなことどうでもいいもの。次郎くんや、吾音、三郎太くんとどんな付き合いをしたって、私自身の理由だもの」

 「………」

 「それと、次郎くんに見られたのも別に…その、ね………あ、あの、もしかして、妬いて…くれてたの?」


 なんか前にも同じよーなこと聞かれた覚えあるなあ…その時とは表情が全然ちげーけど。

 伏し目がちに言葉を継いでいた伊緒里が、急にそわそわし出すのを見て思い出す。


 「まあ、割と…いんや、結構、かな」

 「…そういうこと言うと私、勘違いするわよ」

 「解釈はご自由にどーぞ。ってか、勘違いって何なんだ」

 「…ばか。それで、有働先輩と一緒にいるのを見られた時って…その、実は、ね…」


 口澱む姿は確かに恥ずかしそうなのだが、なんとなく次郎には、自分の懸念…というか心配とは方向性が違うような気がした。

 つまり、フツーに、女の子が、羞恥心を覚える、という類のもので。


 「……私、古いレコード集めるのが趣味なんだけど……その、有働先輩が、ガンズンローゼズの、ファーストアルバムの…それもファーストプレスの本国盤をー…見せてくれるっていうから、ちょっと……」


 そしてそんな顔をしてされた告白の内容ときたら。

 唖然。

 まあ、今の自分の顔を表現するとしたら、文字通り、そーいう感じだろーなあ、とぼんやり思った。


 「…だっ、だって女の子の趣味としては変なのは分かってるし……」


 つまり、次郎があの時見た伊緒里の憧憬の表情というのは、趣味が満たされた時の、呆けた顔だった、というだけであって。


 「あっ、でも、でもねっ?!譲ってくれるとは言ってたけれど、私それは断ったんだから!そりゃあ、欲しいとは思ったけどそんな貴重なものもらうわけにいかないもの!だから、だから…その、次郎くんの思うよなことは無かったわけで……あの?」


 あっちこっち目線をやりながら、弁解から言い訳っぽくなってきた伊緒里を見て、次郎はつくづく思うのだった。


 (この子、ほんとーに可愛いよなあ)


 と。


 「…そんなに笑わなくてもいいじゃない」

 「いやー、可愛い趣味だな、って思ってさ」

 「え…可愛い?……次郎くんが、私を、可愛いって…」

 「趣味が!可愛い、のな?!」


 なんかもう、何処にスイッチがあるのか分からなくなっているのだった。




 「まあそれはともかく」

 「………うん」


 いつまでもこうしているわけにもいかなかったので、次郎は強引に伊緒里の膝から頭を上げて、ベンチの隣に腰をかける体勢に変わった。

 不満そうだった伊緒里がやけに眩しく思えたが、気のせいだと言い聞かせて。


 「話戻すけどさ、あの時阿方が意地を張ったのは自分のやってきたことを曲げたくなくって、だと思ってさ。そして俺が三郎太にケンカ売って意地張ったのは、きっと…」


 と、そこに至るまでの経緯を思い返して、次郎は気付く。


 「……そっか。俺結局、姉貴の思うとおりに動かされてたんだなぁ」

 「え?どういう…こと?なんで吾音がこの話に…」


 次郎の呟きはしっかり、伊緒里の耳にも入っていた。


 「なんでも何も。あのさ、阿方。俺ら最初からずっと、姉貴がこうなって欲しい、って思う通りに動かされてたんだと思う」

 「ええ…?」

 「怒るかもしんないけど、姉貴、俺と、そのー、阿方をさ。くっつけようとしてたんじゃねーかな」

 「くっつ…ええええっ?!」


 意味が分かってか分からずにか、伊緒里は大声を上げ、大きく開けた口に手を当てた姿勢のまま固まっている。


 「…くっそー、やられた。まんまとのっかっちまったわ…今頃三郎太と一緒に笑ってんだろーなあ…」


 実際はそうでもないのだが、まあ次郎としてはそう思う他はなく、悔し紛れの憶測は…。


 「…待ってよ。吾音が笑ってるって…どういう、ことよ」


 伊緒里の怒りを買うところとなった。


 「言葉どーり。あー、あぶねーあぶねー。ホイホイ乗せられてとんでもねーことになるとこだったわ。わりぃ、会長。俺そろそろ帰…」

 「る、とか言い出したらただじゃ置かないから」

 「え」


 鞄を持ち…と思ったらそれは吾音が先に持って帰っていたのだった。

 が、その事を知らされていない次郎は、瘴気じみた空気を醸し出している伊緒里に鞄の在処を聞くことも出来ず、絡め取られたように足も動かせず、ゆらりと立ち上がった彼女のジト目の視線を正面から受け止める羽目になる。


 「…いいじゃない、別に。吾音にのせられてだって。次郎くんの本音が、それと同じならいいじゃない」

 「……いや何を言ってんのかわかんねーんだけど」

 「分からないふりをまだするの?私がこうまで言って、それでも分からないの?」

 「………」


 実のところ、いくら次郎でも気付かないわけにはいかない。伊緒里が自分に、そういう類の好意を抱いているだろうとは、姉を鈍感女呼ばわりするだけのことはあって理解…いや、理解させられつつある。


 「…それとも、はっきり言葉で言わないと分からないのなら、はっきり言ってやるわよ。いい?私はね、次郎くん。あなたのことを…」

 「ストーーップ!やっぱそれは言ったらダメ!」

 「なんでよ!次郎くん、私のこと嫌いなの?!」

 「んなわけないでしょうが。そーじゃなくって、姉貴のお膳立てに乗ってしまうのがイヤなだけなの、俺は」

 なんとも既に大事なところを過ぎてしまったかのような会話だった。

 「意地っ張り」

 「なんとでも言ってくれ。それでも俺は、俺の決断でやりたいの!…でないと多分、一生後悔する」

 「一生…」

 「なんでそこで感動してんのさ」


 しかし、伊緒里と次郎の認識に隔たりはあるようで、その点に一抹の不安を覚える次郎と、なんだか今宵この場で一点突破を計ってしまいたい伊緒里という、何ともかみ合わない状態に結局陥っただけに見えた。 


 「………ムカつく」

 「えっ?」

 「この期に及んで名前の出てくる吾音のことが、私はめっちゃくちゃに!ムカつくわよっ?!ええいもう、このもやっとした気分をどーしてくれるのよっ!!」

 「俺が知るかーっ!姉貴に言ってくれっ!!」


 そして日の暮れた公園で喚き叫ぶ、傍迷惑なことこの上無い二人だった。


   ~~~~~


 「そいじゃー、とりあえず。かんぱーい」

 「待て、姉さん。名目は何だ、乾杯の名目は」

 「んなもん次郎が伊緒里相手に二回目の失恋記念とかでいいわよ」

 「フラれてねーよ、今回は!」

 「…なんで私までこんなところにいるのかしら」


 翌週の日曜。

 なんだかいろいろと不安定に解決した記念、ということで日曜の午前を四人集って騒ぐ…仲良く会食することになった。

 会場は、オーナーパティシエールに椎倉葵心を戴く、洋菓子店兼喫茶店、コリン・デ・エスポワールの一角。


 「私としては次郎君が振られていた方が、やけ食いで売上伸びるので嬉しいのですけどね」

 「あのね、葵心さん。本当にフラれてたら洒落にならないからそーいうこと冗談でも言わないでくれる?」

 「あら、あり得ないと思うからこその冗談なんですけれど」

 「その謎の信頼感はどこから醸成されてんだよぅ…」


 ふふっ、と穏やかに笑うだけに留めて、葵心は店員の顔に戻ると去って行った。

 それを見送っていると、伊緒里が隣の次郎に聞いてくる。


 「…ねえ、あの人と知り合い?」

 「知り合いっつか、コネ?あ、そうだ。阿方にも後で紹介しとくわ。あれでOBやらOGやらに顔広いから、自治会の仕事の役に立つぜ?」

 「………そういうことを言いたいんじゃないのだけどね」


 ため息。

 四人がけの座席は一方に吾音と三郎太が並び、反対側に次郎と伊緒里が並んで座っている。

 だからそんなやりとりは対面の姉と弟には筒抜けなわけで。


 「…ねえ、三郎太さん?どう思われます?」

 「…知っててとぼけてるか素でやってるのか、判断の難しいところだな、姉さん」

 「はいそこ!勝手なこと言わない!」

 「そうよ。大体吾音のせいじゃないの、いろいろと」

 「いろいろ?」


 本気で分かっていなさそうな吾音の顔を、今年一番のしかめっ面で睨む伊緒里だった。


 「…まあいいだろう。とりあえず、姉さんと会長の仲直り記念だ。乾杯の名目はそれでいいだろう」

 「ちょっと三郎太くん?私は馴れ合うつもりはありませんからね」

 「それでいいんじゃない?わたしも伊緒里とはケンカしてる方が楽しいし」

 「ケンカというより姉貴の方が一方的におちょくってるだけのような気が…」

 「次郎くん!あなたどっちの味方なわけ?!」

 「難しいこと聞くなよぉ!」


 …放っておいたら永遠に続けそうな四人なのであった。


   ~~~~~


 とはいえ、店の迷惑も考えずいつまでも居座っているわけにいかず、お冷やのおかわりに葵心が訪れる頻度が五分に一回になった辺りで散会となった。

 三郎太は図書館へ。吾音は約束があるとかで、それぞれ別行動になる。

 最初吾音に付いていこうとした三郎太だったが、意外に強く抵抗されたので諦めてはいたが、下手したら尾行するくらいはやりかねんな、と思う次郎だった。やったところであの図体では即バレするだろうが。


 「…私と一緒でよかったの?」

 「姉貴の思惑にのっかるのは癪だけどさ、俺がそうしたいってんなら別にいーだろ」

 「そう」


 満点ではないにせよ、及第点はあげられるかな。

 伊緒里はそんな風に思って、並んで歩く次郎との距離を僅かに縮める。


 先週からはいろいろあった。

 副会長の今居明人が急に辞任を申し出てひと悶着あったが、実際のところ、今居はひとはいいが実際の職務で伊緒里の助けに大いになっていた、とも言い切れないのでなんとかなるだろう。どういうわけか、代役を吾音が見つけてきたことで自治会の運営に支障もない。

 そんなこともあってようやく落ち着いた今日のことは、企画を立てた吾音に感謝しないでもない。折良く次郎とも並んで歩けることになっているのだし。


 「…なー、阿方」

 「うん?」


 その次郎は伊緒里に合わせるというより、考え事があってゆっくり歩いている、という態から思いついたように声をかけてきた。


 「やっぱ、姉貴とは前みたく仲良くは…なれないんかな?」

 「…うん、こないだほど意固地になるつもりもないけど、その方が私たちらしい、って思うのは変わってないから」

 「そーか。まあそれならしゃーないか」

 「諦めがいいのね」

 「頑固なことにかけては俺の知る限り一番だからな、阿方は」


 顔の広いことにかけては伊緒里の知る限り一番の次郎に、そんな風に言われるとはどれだけ堅い女だと思われているんだろう。

 そう思ってクスリとする伊緒里だった。


 「…なんか変わったなー」

 「そう?私に言わせれば、次郎くんもすごく変わったと思うけど」

 「へー。どんな風に?」

 「どんな…って。自覚ないのかしら。次郎くんは子供の頃ってやたらとクールぶった三枚目だったのに、いつの間にか率先して無茶するようになってるし。こないだの三郎太くんとのケンカだって、昔だったら適当にいなして、それでいて一応目的は果たしてしまうでしょ?」

 「…自覚はねーんだけど。でもさ、阿方だったらどっちの方がいいのさ。三郎太と一戦やらかす俺と、口で丸め込む俺と」

 「難しいところよね…女の子としては、腕っ節で守ってくれる男の子に安心するところもあるけど、野蛮なのはちょっと…とも思うし。まあ、どちらにしても…」


 一歩、次郎に先んじる。

 次郎は伊緒里の後ろ姿を斜めから見る格好になった。


 「…次郎くんはさ、やっぱり吾音の弟なんだな、って思うわ。実は妹だった、とかいろいろ聞かされても私から見てあなたたちはそういう関係なんだって」

 「………」

 「姉弟として生きてきて、吾音はまあ、ああいうコだからそれに染められちゃって。でも私はまだ戸惑っている。オリジナルの次郎くんがいいのか、それとも吾音の弟として変わってきた次郎くんがいいのか、って。それと、一つだけ、間違い無く言えることはあるわ」

 「聞かせてくれるんだろ?」

 「うん」


 伊緒里は立ち止まり、一歩を追いついた次郎を下から見上げて言う。


 「私が吾音と仲良くなれるとしたら、きっと次郎くんが染められている赤い色を、今度は自分の色に染め返してやった時でしょうね」


 だから、それくらい強くあれ。

 そんなメッセージを込めて見る視線を次郎は受け止める。


 「おう。やってやんよ」


 その答えは、伊緒里にとって百点満点だった。

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