第3話 咲綾怒りのドロップキック
「そーいう意味じゃないのよ鈍感がァ!」
「貴尋は、あんたと男女交際したいって意味で言ったのよ! 分かる!? 男女交際!」
「こっ、交際!? 私と!?」
「そうよ! だから私、あんたと登校しなかったんだから! 貴尋が告白するチャンスを、作る為に! ッたくなのにあんたは何訳分かんない事言ってんの脳ミソ入ってますか!? ん!? んッ!?」
空いている手で額を激しくノックされ、目が回りそうになりながら振り払う。
「い、いや、私と付き合いたいなんてそんな、貴尋が言う訳無いじゃないか……」
「告られたんでしょうが今朝」
「そうだけれど……」
「何? 貴尋の事嫌いなの?」
「まさか! 恋とかよく分からないけれど、嬉しいな……。ハァッ!?」
頭を抱えて、プレゼントを落っことした。
「た、大変だ……。私貴尋に、告白されたって分かってなかった所か、友達だなんて完全に脈無しみたいな事をッ……!」
こくりと頷く咲綾。
「死ね」
「
「恋に遅いなんて無いのよ
咲綾は突然歌うように言うと、無理無理私と肩を組む。
「恋とは、トキメいたその瞬間こそが始まり……! 誰もその“
「うぜえこいつ」
吐き捨てるが咲綾は止まらない。
「
「ありがとう老師! ここは任せた!」
咲綾に前を指され、急いでいるのと、これ以上絡まれたくないので階段を駆け上がった。
三年生の教室がある階まで上がると、
酷い態度を取ってしまったから、応えてくれるか分からないけれど!
大きく右腕を振りながら声をかける。
「おーい貴尋!」
貴尋は私に気付くと、足を止めた。
「あれ、一花?」
あ、普通に返事してくれた……。
だが安心と同時に、かあっと顔が熱くなる。
どう話していいのか、分からない。
友達としてならどうとでも話せたけれど、好いてくれてる人なんだと意識すると、頭が真っ白になる。
ぶんぶん振っていた右腕がじりじり下がって、意味も無く胸の辺りで停止した。
「あ……。いや……」
突然どもった私に貴尋は、少し寂しそうに微笑んだ。
「? 何?」
んぐっはァまずい今なら分かるぞ落ち込んでいると……。きっと今朝の告白を、「友達だもんなァア!!」と打ち返された手前(流石にここまでの勢いじゃなかったか)、私と話すのが辛いんだ……。早く謝らないと!
浮かんだ冷や汗を誤魔化そうと、拳を口元に当てた。
「ンンッ。ウォッホン。いやー今日は冷えるなあ。こりゃあ、雪でも降るかもな!」
っておい何世間話から慣らそうとしてるんだこの根性無し!
貴尋は眉根を寄ると、自虐的に笑う。
「そうだね。こんなに寒いんじゃ僕のマフラーも、あったかくなかったかな……」
大砲を撃ち込まれた如く、胸にボカアと大穴が開いた。
思わず胸辺りのブラウスを、ネクタイごと掴む。
いやもう罪悪感に胃も痛い。貴尋の顔は生気が無くて、おばけみたいになってるし! お前っ、さっき普通に返事してくれたのは、なけなしの強がりか!
「ばっ、馬鹿寒い訳あるかめっちゃぽっかぽかだわ!」
「そう?」
貴尋は口角を上げるが、目が全く笑ってない。
早く何か、励ましになるような事言わないと!
引かない所かダラダラに垂れて来る冷や汗に
「ああ! お前のマフラーさえあれば、服なんて
「いや、それは流石に……」
「あァ!? 要らないつってんだろ脱ぐぞオラ!」
上履きを脱ぎ捨てると上体を倒し、タイツを脱ごうとスカートに手を入れた。
貴尋はぎょっとすると、青いんだか赤いんだか分からない、不気味な顔色になる。
「でぇえっ!? ちょっと一花何やって……。いや何で下から!?」
「成る程! 上から脱いで欲しい派か!」
片手の指はタイツに入れたまま、もう片方の手でブレザーのボタンを外すと、左肩をバッと抜く。
貴尋は両手で顔を覆いながらも、指の隙間からガッツリ私を見て叫んだ。
「いや僕の言い方が悪かったどっちからでも駄目です裸にマフラーってただの全裸よりヤバいしね!?」
「ここをファッションの最前線とする!」
「犯罪的ホットスポットの間違いだよ!」
「正解だろうがガッツリ見てるじゃなッ」
追って来ていた
ぶっ飛ばされた私は
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