第13話 エルフの砦
リリに乗って、地上を見下ろせばエルフの砦だろうか?
森の中にぽつんとある街にぐるりと城壁を囲ったような砦に向かって、まるで押し寄せるかのように山から魔物の群れが向かっている。
うん。まだ砦の方には到着してないようで助かった。
「コロネ!コロネとリリは、レベルが上がりすぎて気を失うとかあるのか!?」
私が聞けば、コロネは首を振り、
「いえ、ドラゴン種やエルフは精神世界への耐性が高いのでありません」
「うし、パーティーを組む!
どういう仕組みかは後で説明するからリリとコロネは システムウィンドウが開いたら「はい」を選択してくれ!
んでもってこれ持ってろ!!」
と、コロネとリリに経験値2倍のオーブを渡しておく。
パーティーを組んでおけばリリにもコロネにも経験値がいくはずだ。
ちなみにこのゲーム、パーティーを組める人数は8人まで。
組んでいれば経験値範囲内にいれば、誰が倒しても全員に経験値が等分される。
一緒に行動するなら少しでもレベルが高いほうがいい。
目視できる範囲でしか経験値が届かないという縛りがあるが、リリとコロネには空中で待機していてもらえばその縛りもクリアできるだろう。
「いいか?リリとコロネは空中でこのまま待機。
絶対降りてくるなよ!」
ざっと空中を見回したところ、空を飛べるモンスターはいないらしので空は安全だろう。
私は二人にそう告げると、瞬間移動で、一気にエルフの砦の前にワープするのだった。
△▲△
砦の前に降りると、エルフの魔導士たちだろうか。
慌てた様子で結界か何かを張る作業をしているところだった。
「なっ!?お前は確か猫まっしぐら!??」
私の姿を確認したクランベールが叫ぶ。
くっ、随分面倒なところに着地してしまった。説明するとか面倒くさい。
このおっさん相手するの面倒なんだよ。マジで。
「あんたたちは砦に戻ってろ!!もう先頭集団がこちらにつくぞ!!」
私が叫べば、エルフの魔導士達に動揺がはしる。
流石に彼らも向かっている敵が自分たちでは敵わないというのは理解しているらしい。
「何を言う!!我らエルディア騎士団は例え敵わぬとわかっていようともひく事はできぬ!
砦を何としてでも死守してみせようぞ!」
と、熱血君みたいなセリフを言うクランベール。
「ああ、わかった!?じゃあそこから絶対動くなよ!!」
正直相手をするのは面倒なので放っておくこう。
既に魔物の足音がこちらにまで響きわたり近いことがわかる。
こちらも準備をしなければないけないのだ。
私は両手をつき、巨大な魔方陣をかきあげあた。
そう、森を覆うくらいの巨大な魔方陣をだ。
書き上げた魔方陣はトルネリアの砦で披露した魔方陣と同じ。
自分よりレベルが100以下の魔物は倒せる魔方陣だ。
とりあえず自分よりレベルが100より下の敵は全部間引いておく。
「トラップ発動――【死神の演舞!!】」
私の言葉とともに現れた黒い骸骨の顔をした死神達が、レベル653以下のモンスターを瞬殺するのだった。
△▲△
「クランベール様!!こちらに向かっていた敵の半数以上が……倒されました!!!」
魔道具で様子を見ていたのだろうか、兵士の一人が叫ぶかのように報告した。
「んなっ!??
馬鹿なっ!!!カルネル山の魔物だぞ!?いくらプレイヤーでも!!」
「本当です!!残りの魔物は残りわずかとなっていますっ!!」
「ありえんっ!?何がどうなってるんだ!???」
後ろでエルフの魔導士軍団がワイワイ騒いでいるのがこちらにも聞こえてくる。
まぁ、スキルで聴覚ちょっとあげてるから聞こえるってのもあるけれど。
にしても、やたら喜んでいるが、むしろ問題はここからだ。
残った魔物はレベルが653より上なのは確定している。
これが何時ものごとくゲーム上の話で廃装備をしているなら「楽勝!!」とか言ってドヤ顔のひとつもしてみせるが、いま私が装備している装備は、課金アイテムのレベルにあわせて武器性能が変わる武器だがレベル600のB級程度の装備である。
武器レベルは SS>S>A>B>C とあり、最低ランクの一つ上くらいなのだ。
これでも200レベルの武器で闘うよりはずっと楽ではあるが、普通に闘う分にはかなり苦戦を強いられる。
なにせこのゲーム。攻撃力や防御力はプレイヤーのステータスなどお飾り程度でほぼ武器や防具の性能で強さが決まる。
一匹程度なら私でも楽勝だが、相手は複数なのだ。B級装備はちとキツイ。
「いいか、お前ら!!絶対そこから動くなよ!!こっちに来た奴の命まで保証できないからな!!」
私は言うと、両手を地につけると、魔法を発動した。
私が最も得意とする土魔法。土で壁を作り出す魔法だ。
「
言うと同時に、砦から外に出ている魔導士連中も一緒に囲むように高い壁を砦周辺にぐるりと囲ませる。
そして私はその土の壁にクリスタル化の魔法をかけると、即席の壁を作り出した。
レベル600以上の魔物には慰め程度の強度だが、何もないよりはマシだろう。
そして私はダッシュで駆けるとこちらに向かっているモンスターをスキルの【魔力察知】で探知する。
すぐ近くにきているモンスターは5体。
いちいち一体一体相手をしていたら、何体かは砦に向かってしまう。
自分に対する危険度はぐっとあがるが、とりあえずスキルの【殺気】で全部自分に引きつけるしかない。
『リリ!コロネ聞こえるか!』
私がパーティーチャットで話しかける。
この機能、パーティーメンバーならどんなに遠くても声が届く便利機能だ。
『はい!聞こえます』
『ウン!キコエタ』
私の問いに二人が元気に答える。
『これから残った敵を全部私に引きつける!空から、敵の取りこぼしがないか見張っててくれ!』
『そんな事をすれば猫様が危険では?』
『でもやるしかないだろう!
大丈夫!勝算はカエサルのときより全然高い!』
『ナラ ネンワ ツナグ リリ と コロネ ミタモノ ネコも 見エル ようになる』
と、リリちゃんが言ってくる。
なんとそんな便利な機能があるのか!?
『じゃあそれで頼む!』
私の一言とともにリリが念話をつなぐ感覚がわかった。
確かにリリの言うとおり、リリとコロネの視ているものがこちらにも伝わってくる。
おおう!?これマジ便利!!
『じゃあ見張りはお願い!二人とも!!』
私が念話で喋れば――何故かその声は本来の私の声。橘楓の声だった――。
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