第11話 VS古代龍
ガッコォォォォン!!
カッコつけて古代龍に挑んだ3分後。
私はものの見事に古代龍にしっぽで吹っ飛ばされていた。
土魔法でヤリの壁をつくり古代龍の視界を塞ぎ、瞬間移動でワープして魔法をぶっぱなした……まではよかったのだが、魔法が与えたダメージは0。
私が絶望に打ちひしがれているその瞬間、私の身体は無情にも古代龍の尻尾で叩きつけられ、岩山に突っ込んだのだ。
私が突っ込んだ岩山がガラガラと音をたてて崩れ、私の身体を埋めていき……
シーーーン
私の身体は完璧に岩山に埋もれてしまう。
数分の静寂。
私が埋まった場所はぴくりともしなくなり、先ほどまでみなぎっていたドラゴンの殺気がみるみる萎れていくのがわかった。
岩の中からは生体反応らしきものはなく、ただただ、壊れた岩山が広がるばかり。
何の反応も示さない岩山に興味をなくしたのか、ズシンと古代龍が一歩引く。
うん、どうやら私を死んだものとして見てくれたらしい。
まぁ、普通、レベル200の雑魚がレベル1200の一撃なんて喰らえば即死だしね。
そう判断するのも仕方ない。
身体を咄嗟にほぼすべての攻撃を無効化できる【硬質化】してなければ即死だったはず。
スキルで【硬質化】してる間は無機物判定なので、もちろん生体反応もなくなる。
どうやら古代龍は私の目論見通り、私が死んだと思ってくれたっぽい。
これは、あれだね。
悪い顔して「計算通り!」って決め顔する場面だよね。
硬質化した私の手の中にある糸にはきっちりと、ドラゴンの鱗の欠片が巻きついていた。
私の狙いは最初から【闇の女神の涙】を使用するために必要だった古代龍の身体の一部である鱗だったのだ。
鱗に糸を巻きつけて古代龍に吹っ飛ばされるその衝撃で鱗を砕く事にあった。
なにせ自分のレベルは200。私の力では古代龍の身体の一部がほしくても古代龍の鱗に傷一つつけることもできない。
だからこそ古代龍本人の力を借りる必要があったわけで。
どうせダメージ0だろうと思っていたが、魔法を打ち込んだのは、ドラゴンの鱗に糸を巻きつけたのを気づかないようにするためのフェイク。
『
そして糸ごと【硬質化】し、ドラゴンの尻尾で叩き飛ばされる。そうすれば、そのドラゴンの尻尾による攻撃の衝撃の力で鱗をめくりとれるという作戦。
わざと尻尾で払いのけやすい位置で魔法をぶっぱなしたのもその為だ。
……まぁ、蚊を潰すがごとく尻尾でぺちっと潰される可能性もあったわけだが。
それはそれで【硬質化】した自分がウロコにぶっ刺さって、ウロコが割れて破片くらい手に入るかな、なんて計算もあった。
うん、だってレベル200じゃレベル1200のドラゴンのウロコを傷つけるとかも、無理ゲーだし。
しかしレベル1200は鱗ですら伊達じゃないらしく、ウロコの一部で小さい欠片が糸に絡まってはいたが、ウロコ一枚とれた訳ではないらしい。
ドラゴンにしてみれば鱗の一部がちょっとかけただけなので痛くも痒くもないはずだ。
しかし【闇の女神の涙】に必要なものは身体のごく一部でいいので、これで問題ないはず。
ゲームのプレイ動画で使ってる所見てた時も小さい破片で作動したし。
……うん。たぶん。
私は硬質化を解き、ウロコの一部を【闇の女神の涙】にセットすると、すぐさま魔法で私の身体を埋めた岩山を吹っ飛ばした。
あまりノンビリしていると、コロネと白龍がやられてしまう。
ドゴォォォンという爆音とともに古代龍の驚きの視線がこちらに向くが――
残念。もう遅い。
私の詠唱はすでに終わっている。
さぁ、レア✩5のアイテムの力見るがいい!
『全ての慈愛をもって御身に捧ぐ!邪悪に染まりし其の者に、永遠の安寧を!!』
私の一言に【闇の女神の涙】は反応した。
物凄い闇を凝縮し、その場全体の空気がまるで【闇の女神の涙】に集まるような感覚。
そしてそれは具現化した。
漆黒の鎧を身にまとい天使のワッカをつけた漆黒の翼をもつ女神。
漆黒の髪をなびかせた美女『闇の女神アルテナ』
古代龍はまるで金縛りにあったかのように動けないまま、突如空に現れた女神に魅入っている。
そして、女神は口を開いた。
『その命、捧げよ』
刹那。
古代龍を大きな黒い槍のようなものが貫くのだった。
△▲△
「ぐがぁぁぁぁぁぁ!!」
古代龍の絶叫のようなものが辺に響く。
うん、動画で見たことあったとはいえ、やっぱりすごいわ。
そしてエグイ。
つかアルテナちゃんマジ天使。
闇落ちしても優しいという謎ステータスの美人だし。
そんな事を考えながら、悶え苦しむ古代龍を横目に、私はコロネとホワイトドラゴンの前にワープした。
「猫様っ!?」
コロネが驚きの声をあげるがいまは構っている場合ではない。
ホワイトドラゴンもコロネの渡した薬が効いたのかすでに体力は回復しているっぽい。
銀色の綺麗な瞳でこちらを見ている。
「二人とも、私の後ろへ!!まだあれだけじゃ古代龍は倒せない!!」
そう、【闇の女神の涙】の与えるダメージは90%。
残り10%のHPがまだカエサルには残ってる。
そして、思った通り、怒り心頭の表情で古代龍がこちらを睨む。
口や鼻など至るところから光が漏れ、身体全体が淡白く発光しだした。
このモーションの時の攻撃は大体決まっている。
やっぱりくるか。
ドラゴンの大技『破滅のブレス』
ドラゴン系はHPが85%以上減ると、大技の全体攻撃ブレスをしてくるパターンが多い。
古代龍といえども、そのパターンはどうやら同じようだ。
カバァと口を大きく開いた瞬間
光が全てを飲み込んだ。
広範囲攻撃『破滅のブレス』
命がかかった土壇場で出す大技だけあって、その威力は全体攻撃なのに絶大だ。
レベル1200が放つブレスである、レベル200の私が食らえばひとたまりもない。
ただし、――食らえばである。
そう、即死の攻撃など、わかっているなら食らわなければいいだけの話。
すでに対策はしてある。
アイテム【冥王ナースの大鏡】
レベル補正関係なく、全ての攻撃を跳ね返すレア星5アイテムである。
【闇の女神の涙】同様使える回数が決まってるため、勿体なくてゲーム上では使えないタンスの肥やしアイテムだ。
大鏡は私と後ろのコロネとホワイトドラゴンを守るように現れ、ドラゴンのブレスを跳ねす。
跳ね返ったブレスはそのまま迷うことなく古代龍を貫いた!
「ギガァァァァ!!!」
自分の絶大なブレス攻撃を浴び、古代龍が断末魔にも似た悲鳴をあげた。
うん。痛そう。
燃え上がり、ぷすぷすと音をたて、ウロコの隙間から煙がたちあがっている。
さすがに自慢のウロコも、自分の最大攻撃までは防げなかったようだ。
まぁ鱗はノーダメっぽいので、中身蒸し焼きにされた感じかもしれない。
ズドォォォォン
大きな音をたて、古代龍は倒れ──息絶えるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。