第3話 国王との謁見
「うわぁぁぁぁぁ!!勇者様バンザーイ!!」
モンスターを私の職業【トラップマスター】のスキルの罠の広範囲技で撲滅し、モンスターを先導していたと思われるエルフを捕まえて砦に帰れば、なぜか見張っていたのか城の騎士がさも当然のように出迎えてくれた。
そして、城にて是非お礼を言いたいと、騎士達に招かれて、城壁に囲まれた都市に到着してみれば……国民総出の大歓迎だったのだ。
国旗?だろうか、旗のようなものを振りながら街道にところせましと国民が私を出迎えてくれたのだ。
うん。なんだろう。これは凄く恥ずかしい。
馬車に揺られながら私がため息をつけば
「凄いですね!猫さんすっかり英雄じゃないですか!」
とアルが目を輝かせて言う。
ちなみにベガ、デネブ、アルも勇者である私を召喚したとかで、一緒に表彰されるらしい。
「そりゃそうだよ!あんなモンスターの大群を一瞬で消滅させたんだぞ!
猫さんあれ、どうやってやったんですか!?」
今度はデネブ。
「馬鹿っ!!そんな事話せるわけないだろう!?
強い人は自分の手の内を教えないんだ!!」
そう言って「そうでしょ!?」と言わんばかりに私をみるベガ。
なんだかすっかり私に懐いてしまった3人だが、年齢を聞いてみるとまだ15歳らしい。
通りで言動が幼いと思った。
「にしても、よくエルフの大賢者コロネ・ファンバードを捕まえる事ができましたね!
コロネ・ファンバードといえばレベル143ですよ!」
「うーん。まぁ……な」
私は口篭った。そう、モンスターの大群を倒しに向かったその先でエルフの部隊とも遭遇したのだ。
そこにいたのが、ゲーム時代にも存在したエルフの魔術師。
茶髪がかった金髪の中年エルフ、コロネ・ファンバードだった。
最初ゲーム中ではまだ青年エルフだったため見かけが結構変わっていて本人が名前を名乗るまではわからなかったのだけれど。
美青年タイプのNPCがなぜかなかなかイケメンな中年エルフへと成長していた。
NPCだったコロネがいた事と、彼が成長していたことを考えればどうやらこの世界。ゲームの未来の世界らしい。
このコロネ・ファンバードはMMOではお馴染みの多人数で協力して強大なボスを倒す、『レイド戦』のイベントで登場するNPCだ。
プレイヤーには「即死のコロネ」と呼ばれた、アケドラル帝国の宮廷魔導士。
昔、あまりにも凶暴だった魔獣が神々の力で封じられたのだが、現代になって蘇ってしまい、それをプレイヤー皆が一丸になって倒すというイベント。
神々の聖杯『ファントリウム』で、魔獣の超回復してしまう力を防ぐ、という役目を持っていた戦闘参加型NPCだったのだ。
まぁ、この即死さんがあまりにも、ボスモンスターの攻撃ですぐ死んでしまうため、プレイヤーには即死のコロネの愛称で呼ばれていた。
どういうわけか、その即死のコロネが、モンスターを煽動していたと思われるエルフ部隊の隊長として、私の前に立ちふさがったのだ。
まぁ、いろいろあってこうして捕まえて、この城に連れてきたわけだけれど。
いま拘束された状態で別の馬車で運ばれているはずだ。
コロネが拘束されている別の馬車を見つつ、私はため息をついた。
なんとなく話の流れでいろいろ解決してみたものの、コロネがいたと言うことは間違いなくこの世界はゲームの中の世界で間違いないだろう。
ゲーム中では「ヨクキタ ボウケンシャ タチヨ!」くらいのカタコトなセリフしか喋らなかったコロネが、ペラペラと流暢にしゃべっていたし……。
旗を嬉しそうにふる国民達を見ながら、私は今更思う。
うん。異世界転移とかマジありえねぇぇぇぇぇ。
△▲△
「勇者よ、トルネリアの砦を救い、悪の権化であるエルフの魔法使いコロネ・ファンバードを捕らえた件、誠に見事であった」
センテール王国の城の謁見の間で。
玉座ににふんぞりかえったまま小太りの金ぴかの衣装を着た、国王が私を上から見下ろし言う。
その隣には王女だろうか?これまた高そうなダイヤっぽいアクセサリーをチャラチャラつけた化粧のどぎつい王妃様が控えていた。
因みに私のちょっと後ろにはベガ、デネブ、アルの3人と、この国の騎士がずらりと後ろに控えている。
「は、はぁ」
と、気のない返事を返す、私。
いや、だってよく考えてほしい。
国王だの貴族だのに免疫のない私が国王相手にどう答えろと?
こちらの貴族のルールなんて私わからないし。
いきなり異世界で偉い人の相手をしろといわれても対応できるわけがない。
「褒美に何か欲しいものとかあるかね?」
やたら上から目線で聞いてくる国王。
「陛下、勇者様もこの世界に召喚されてまだ間もない様子。
いきなりお礼をと言われても思いつかないでしょう。
そうでしょ?勇者猫まっしぐら様?」
言って、王女様が妖艶に微笑んだ。
「そうですね。少しお時間をいただければ」
「うむ。そうか。では城に勇者が滞在できる部屋を用意せよ。
思いついたらこちらに申し出てくれればいい。それまでこちらの城で休まれるがよい」
と、にんまりとした笑みを浮かべた。
うーん。なんというかまぁ……この国王と王妃、見るからに信用できない。
笑がゲスいっていうか何というか。
「勇者様、父からの褒美とは別に、私からプレゼントがあるのですが宜しいですか?」
言ってでてきたのは……王妃の隣に控えていた、金髪の超美少女だった。
ひらひらドレスに派手な冠。格好からするとお姫様だろうか。
私がもし本当に中身も男だったら、やべぇ超萌!!異世界万歳!!と言っていただろう。
現実世界ではなかなかお目にかかれるレベルではないほどの絶世の美女なのだ。
後ろでベガ、デネブ、アルの達が美人きたこれ!と超感動している。
「お礼ですか?」
「はい。我センテール王国の女性が、感謝を示すために贈る、金のブレスレッドです」
と、少し顔を赤らめてにっこり笑う。
お姫様が手にもっていたブレスレッドは、とても可愛いらしいブレスレッドだった。
勇者にお姫様がプレゼントとか一見すればとても微笑ましい図なのだが……。
私がそのブレスレッドを鑑定してみれば
**従属のブレスレッド**
このブレスレッドをつけたものをは、ブレスレッドをつけた相手の命令に絶対服従してしまう。
呪いのブレスレッド。
と、きっちりと記載されているのだった。
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