第6話

 ナナシとゴンザレスは、『』を率いて、『ゴブリン』の群れから村人を保護及び避難するまでに、60匹以上した。

 殲滅をしなかったのは、避難民を優先するためだった。

 避難民と共に戻ってきたのは、ナナシとゴンザレスが主に『』で

 活動拠点としている城塞都市だった。

 外部の脅威から防衛するためか、円を描く様に20メートルはある城壁

 が囲んでいる。

 城壁の上には武装した兵士らしき姿が点の様に見える。

 一つの荘厳な門の前には、避難民の手当てや緊急依頼に参加した冒険者からの

 状況の聞き取りを行うためか、冒険者ギルド職員が大勢集まっていた。



 避難民が乗っている馬車からナナシがゆっくりと降りた。

 その後からゴンザレスがよろけながら出てくるが、ハリウッド俳優貌集団の

 姿は何処にもなかった。

「ゴンザレス、分かっているとは思うが、もう少し堪えろよ。

 

 ナナシが後ろを振り返らずに静かに告げる。

 その右手には、麻袋を持っていた。

「・・・

 真っ青な表情を浮かべ、右手を自分の口に当てている。

 ナナシが貌を顰めてさらに何か言おうとした時、 小麦色の肌で、くすんだ栗色の髪ショートウルフの筋骨隆々とした冒険者ギルド職員が歩いてくるのが見えた。

 その右手には、バケツを持っている。



 周囲にいる避難民に時折視線を向けるが、バケツを持って近づいてくる

 冒険者ギルド職員は、足を止める事はなかった。

「どうだった?」

 冒険者ギルド職員が、顎で荷台を指しながらナナシに尋ねてくる。

「 幸い小型の『』が一匹だけ。駆除の証拠に」

 そう言いながら、冒険者ギルド職員に麻袋を手渡す。

「 か・・」

 冒険者ギルド職員が、麻袋を受け取りながら告げる。

 ナナシがさらに何か言おうとしたが、ゴンザレスが冒険者ギルド職員が持ってきていたバケツをひったくる様に取って、よろめきながら離れていったため、言うことができなかった。



「・・・詳しいことはギルドマスターに伝えるよ」

 ナナシは、ゴンザレスの後ろ姿を見ながら応える。

「わかった」

 小麦色の肌の冒険者ギルド職員が告げた。

 何か言おうとした時、『緊急救援』に随行していた冒険者ギルド職員が小麦色の肌の冒険者ギルド職員に、近寄ってきて一言二言、小声で言葉を交わす。

 貌を顰めながらさらに小声で交わすと、『緊急救援』に随行していた冒険者ギルドが離れていき、ゴンザレスが立ち去った方へと向かっていく。

「彼が一番、

 小麦色の肌の冒険者ギルド職員が、が苦笑いを浮かべながらな声で尋ねた。

 ナナシも同じような苦笑いを浮かべながら応えた。



 ゴンザレスには、ナナシと小麦色の肌の冒険者ギルド職員がどのような会話をしているのか、考える余裕はなかった。

 よろめきながら、人気のない城壁の近くで蹲るなり、ひったくる様に持ってきたバケツに貌を向けた。

 彼の口からは――――がジャリジャリ・・っと音を出しながら吐き出されていた。

』で流通している通貨ではない。

』で流通している通貨だ。

 金色に輝く通貨が、恐ろしい勢いで貯まっていく。

 ようやく全てを吐き終えたのか、軽く咳込みながら振り向くと 冒険者ギルド職員が近づいてくるのが見えた











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