第4話



 ゴブリンの悦楽のため標的にされ、蹂躙されている農村は、

 まさしく地獄絵図だ

 家屋は燃え盛りゴブリン達は逃げ惑う村人達を、まるで狩りを

 楽しむかのように追い立て 嬲り殺しにしている

 汚物と腐臭と屍で汚しつくされ、女も子供も老若男女問わず

 犯し殺されている

 そこかしこに裸の死体が転がり、糞尿があちこちに垂れ流しで

 その絶望感を漂わせている


 酷い有様の中で蠢く無数のゴブリンは、ゲタゲタという哄笑し

 狂った様に喚き眼の前にある惨劇を見ては更に興奮し

 喚き散らしていた

 この『異世界』にとって、最もおぞましい魔物と言えるのはゴブリンだ

 子供ほどの身長に醜悪な面をし、攻撃的な性格をしているゴブリンは

 数が多く何処にでも棲息している

 まるで道端を徘徊する野犬のように街や村に住む人々を襲い殺し、

 犯して嬲り殺すのだ

 それがゴブリンの習性であり本質なのだ


 その醜悪な外観も仕草も習性は、吐き気を催すほどの醜悪さで有る

 轟々と燃え盛る焔が集落の各所から立ち昇り、空を焦がす様な

 勢いで黒煙が上がり千差万別の悲鳴が飛び交い

 絶叫と悲鳴が合わさって雷にも似た音が木霊する

 ゴブリンの群れは、もはや享楽に酔っているかのように血走った

 眼を光らせており興奮状態に陥っている

 周囲には肉の焼け焦げる異臭が立ち込め、焼かれたばかりの人の

 死骸が散乱し その死骸の肉片を、まるで貪るかのようにゴブリン達は

 我先と奪い合いをしている。

 また逃げ惑う村人達を嬲り殺すためか、数体のゴブリンが槍や剣で

 武装して追い立てていた

 その光景はまさに阿鼻叫喚だ


 そんな絶望的な状況の中にいながらも、村を守るために自分たちの家族や仲間が

 犯されているにもかかわらず果敢に抗っている数人の男達がいた

 だが、あきらかにゴブリンの数が圧倒的に多く、その数に

 圧倒されて徐々に追い詰められていた

 ゴブリン達はそんな男達の抵抗を嘲笑い、醜悪な貌をニヤリとさせている

 この集落の人間はこれで全滅する、後は適当に略奪を繰り返せばいいと

 ゴブリン達は考えていた。

 抵抗している男達ももう助からないと覚悟を決めていたのだろう。

 悲壮な面持ちだが眼をぎらつかせて抵抗している

 だが、この集落の人間達とて負け犬ではなく最期まで

 抗う気なのだろう

 ここにいる男達は農作業で鍛え上げた体躯を誇っている為か、身長も

 170cmほどあり、その体躯は引き締まっており、筋肉の鎧を身に纏っている

 また手に持っている剣や槍は刃こぼれが酷く使い物にならないが

 それでも武器としては十分だ。



 ゴブリン達がさらに肉薄しようとした時―――鼓膜が千切れそうな

 凄まじい轟音が空気を引き裂いた

 それは狂った饗宴に終止符を打たれるかの様だった

 大気を震わすその轟音は、瞬く間に周囲全ての空間の時間が

 止まってしまったかの様な 錯覚させるほどの凄まじさを持ち

 一瞬にしてこの場を支配した

 不意に起こった現象にゴブリン達と男達も、とっさに反応できず

 思考が追い付いていない様で戸惑った

 轟音の正体は5体の『召喚人』、『ドルフ・ラングレン』貌の

 召喚人達が構えていたウィンチェスターM1866が撃発した音だった


『隙を突いて、一匹でも多く排除しろっ! 』

 黒サングラスを着用している『ドルフ・ラングレン』貌の召喚人が、

 コルトM1991A1の引き金を絞りながら叫ぶと素早く左右に目を向け

 ゴブリン達の位置を確認して撃発させる

『ドルフ・ラングレン』貌をした4体の『召喚人』は、足音を

 荒々しく一斉に走りだした

 それぞれゴブリンに照準を合わせると、ウィンチェスターM1866の

 引き金を絞り撃発させる。

 正確な射撃で、ゴブリン達に弾丸を喰らわせていく

 撃ち出された弾は、次々にゴブリンの胴体や頭部を

 貫通して その命を刈り取っていった

 胴体や頭部を撃ち抜かれていくゴブリンは、血飛沫と肉片を

 辺りに飛び散らかせて地面に倒れていく


 その様は、まるで緑色の霧雨が舞っているかの様だ。

『召喚人』の射撃能力はまさに熟練した狙撃手並みで、数メートル

 離れているにもかかわらず、いずれも頭部や胴体に命中させている

 その狙いは正確に致命傷となる急所を捉えているほどだ

 銃撃されたゴブリンは断末魔の叫びをあげて地面に倒れ伏していく

 銃弾一発一発を無駄に撃つようなことはせず、確実に命中する部位を

 狙っているのは明らかだ

 通常であれば一発だけでも射撃は精度が著しく落ちてしまい、外すことが

 少なからずあるはずだ。

 しかし『召喚人』達の弾丸は狙い違わず正確にゴブリンに命中している

 驚異的な動体視力や反射神経を持っているのか、それとも

 実戦経験に溢れ市民の残る戦闘を想定しての救助活動という

 特異事態に即した最適な訓練を重ねてきた結果が 表れているのか、

 どちらかはわからない。

 だが、彼らの射撃は確実に的を捉えており 命中率はほぼ100%だろう。

 それを示すように次々に撃たれた弾丸がゴブリンの

 命を刈り取る

 弾丸は霧雨の如く飛び交い、地面には無数の死骸が散乱していく

 蹂躙していたゴブリン達は、突然凄まじい銃撃を浴びせられて

 混乱をはじめた


 4体の『ドルフ・ラングレン』貌の『召喚人』は残骸を利用しては

 身を隠し、そして前進する

 残骸を利用しては身を隠すという動作を繰り返して、確実に

 ゴブリン達を排除していく

『ドルフ・ラングレン』貌をしている幾体かの『召喚人』の表情には、

 しかめつらを浮かべていた

 それは『召喚人』にも感情らしきものも有るという事を示している。

 その証拠に、眉間にしわを寄せている個体や何が起きているのか

 理解しようとしているのか、周りを見渡して状況判断をしている個体も

 存在している

 暗がりや曲がり角などの怪しげな所に、ウィンチェスターM1866の

 銃口を向け 周辺を警戒する仕草を見せる個体もいる

 歯を剥き出して粗悪な棍棒や鉈で、襲いくるゴブリンに情け容赦なく

 引き金を絞り続け、無慈悲に排除を続ける


『混戦に慣れていないのは、俺達も『現地』冒険者も一緒か』

 冷静な判断と口調で言葉を発しながら、半狂乱で膝を屈し祈るかの

 様に喚き散らす一匹のゴブリンへ、無慈悲にウィンチェスターM1866の

 引き金を絞った『ドルフ・ラングレン③』が、半狂乱のゴブリンへ

 無造作に引き金を絞った

 炸裂音を発しながら撃ち出された弾丸は、狙い違わず吸い込まれる様に

 して命中すると、その頭を粉砕する

 頭を失った胴体は糸の切れた操り人形の様に地面に倒れ伏す

『 今回の事案にはゴブリン討伐未経験の戦場処女の兵員も

 参加させて、経験積ませる事もある

 俺達は何度か経験はしているが、これからはそうもいかなくなる 』

 ウィンチェスターM1866に弾丸を装填しながら、周囲を警戒をしている

『ドルフ・ラングレン②』が返答をした

『この状況は事前情報以上だぞ?

 大なり小なり程度は違う実戦経験者にのみ先行してブリーフィングを施し、

 農村を蹂躙する大規模ゴブリン討伐作戦を行うとは聞いていたが

 これほど酷いとは思ってもみなかったぞっ! 』

『ドルフ・ラングレン③』がいつもの冷静な口調とは裏腹に、怒りの

 こもった声で返答をした

 その態度からは珍しく怒りを顕わにしているのが伝わってきた

 珍しい感情を現した姿を横目に見た『ドルフ・ラングレン②』は、

 思わず苦笑してしまう


『異例過ぎる大規模ゴブリンに対して、『我々』を駆り出したのには

 それ相応の理由があるからだろうな』

『ドルフ・ラングレン②』はそう独り言を言いつつ、視線を村へ向ける

 そこにはゴブリンが蹂躙し、家々の殆どを破壊して火を放っていた

 もはや集落は機能を果たさないだろう

『ゴブリン一匹排除完了――――!!

 俺はブリーフィングを聴いてた限りでは、補給、撤収に関する

 支援情報が不十分な印象だった

 蹂躙されている大所帯の農村から生存者を救助するには、動員する

 兵力としては不足もいいところだ。

 まして戦場処女の兵員にも経験積ませるなんてのはまともな

 オツムがあれば絶対にしない』

 コルトM1991A1を撃発させ、標的のゴブリンの息の根を止めた

『ドルフ・ラングレン④』が苦々し気に言葉を吐き捨てる

 村を蹂躙しているゴブリン達へ向けたその眼は、まるでゴミでも

 見るかの様だ


『被害規模だってろくに分かっちゃ――――

 十時方向! 30匹程度のゴブリン接近中!! 』

 その事に疑問を投げかけようとしたタイミングで、暗闇を

 動く影に気づいた

『ドルフ・ラングレン③』が大声で意を呼びかける

 瞬時に『ドルフ・ラングレン②④』がそちらに眼を向けた

 先には、憤怒と憎悪で醜悪な貌を歪めさせ30体ほどの

 ゴブリンが奇声を発して迫ってきていた。

 その後方には、さらに多くのゴブリンが犇めいているのも確認できる

 その醜悪な貌に下卑た笑いを浮かべているゴブリン達は、まるで

 勝ち誇っているかのようだ

『了解! 迎撃態勢に入る』

『ドルフ・ラングレン③』が中腰の姿勢を取りつつ、ウィンチェスターM1866の

 銃床を 肩に当てて構え、射撃姿勢をとる。

 その横で同じく中腰の姿勢を取る『ドルフ・ラングレン②』も、

 ウィンチェスターM1866の銃口を向けた

『ドルフ・ラングレン④』も、片膝を地面に付け姿勢を低くし

 コルトM1991A1の照準を合わせる


 一斉に引き金を絞ると銃声が轟き、無数の銃弾が発射されていく

 薬莢内の火薬に引火すると炸裂音と共に高速で弾丸が射出され、空気を

 切り裂く弾丸は狙いを外さず、30体のゴブリンの頭部や身体を貫いていく

 何体ものゴブリンが銃弾を身体に喰らって、緑色の液体を吹き出す。

 悲鳴をあげてバタバタと倒れていくが、それでもゴブリンは倒れた

 同族の屍を踏み越えて突進してくる

 銃弾の発射に伴う、断続的な射撃音がまるで激しい機関銃の音の

 様に響き渡った

 その行動は予想通りだったためか、既に狙いを定めていた銃口から

 弾丸が発射される再度、弾丸が音速を超えて放たれて、先頭の個体の胸部に命中すると貫通し、後ろのゴブリンにも命中した

 しかし弾丸の勢いと破壊力は凄まじく、心臓を含めた器官を全て破壊して

 一瞬で絶命させた

 断末魔を発しては、緑の血液をまき散らし地面へ崩れ落ちる

 断続的に射撃が続けざまに放たれて、その度ゴブリンは身体のどこかに

 穴を穿たれていく

 身体を支える足が止まり地面に倒れ込むと、後は物言わぬ肉塊となって

 地面へ横たわった

 弾丸が発射される度に緑色の飛沫が飛び散り、霧雨のように降り注ぐ



 並みの冒険者なら反吐を吐き散らす事は間違いない白兵戦を

 繰り広げているのは、ナナシだった

 手には刃渡りは50cmほどで柄まで入れると、70cmほどの剣としては

 短い刀剣が握られている

 その刀身は、まるで新月の夜の様に真っ黒だ

 打撃力を強化しつつ、防御面を考慮されたデザインで刀身は厚く

 頑丈に作られている

 幅広く磨かれた剣先が鋭利に輝いていた

 それでいて刃と柄が一体型になっているため、非常に

 使いやすくしている

 装飾などは、ほとんどされておらずただ斬るためにだけ

 作られた様であった

「糞ゴブリン共を優しく、派手に歓待してやれ!!」

 そう吠える様にナナシが、付近にいる『ドルフ・ラングレン』貌の

『召喚人』達へ指示を飛ばす

 その隙をついて突進してきた一匹のゴブリン腹部に、剣を突き出した

 剣先はその身を容易く貫き、勢いを止めきれずにそのまま

 貫通して地面を刺した

 引き抜く際に大量の緑色の液体が貌ににかかるが気にも止めない

 目視で確認できるだけでも、ナナシの視界には嚇し憤怒と憎悪を

 撒き散らしながら接近してくるゴブリンが500から

 700以上はいる

 幸いにしてかこの場には上位種が混じっている様子はなかったが、

 それでも数が多い


 ナナシは何の躊躇もなく、風の様に大群へ距離を詰る

 何匹もゴブリンがナナシを粉砕せんと手に持った得物を振りかぶってきたが、

 それをのらりくらりと躱しては確実にゴブリンの胸に剣先を突き刺していく

 重く鋭い突き刺しは、確実にゴブリンの心臓を捉えてはその命を奪っていった

 その 勢いでナナシがゴブリンの間を駆ける度に、緑色のしぶきが舞い上がり

 貌に緑色の飛沫がかかる

 しかしそれを気にする様子も全くなく、ただ目の前の獲物へ

 剣先を突き立てる

 これが『ゴンザレス』であれば、無謀な接近戦をする事は

 まずなかっただろう

『召喚人』に命じ、ゴブリンをキルゾーンへ誘引し、待ち受けて

 徹底的に叩いている


 だが、ナナシは半年ぶりに『異世界』へ『転移』してみれば、ゴブリンが

 傍若無人に暴れ廻り悍ましい饗宴を村で催している

 そんな事を『冒険者ギルド』で聞かされば、到底冷静でいられる

 状況ではなかった

 若干『現世界』職務での立て続けてのトラブルからの鬱憤を晴らさせる

 恰好の標的が転がってきた様な状況でもあった

 荒れ狂う状態のナナシに眼をつけられたゴブリンに取っては、大変な

 災難である事は間違いないだろう

 しかし、それに同情する様な者はこの『異世界』にはいない


 ナナシが振るう新月の夜の様に真っ黒な刀剣は、目視で捉えた

 一匹のゴブリンの下腹部を何度も突き刺しては臓腑を引きずり出し、

 緑色の噴水が血飛沫と共に噴出する

 ゴブリンは悲鳴をあげて腹から出てくる臓器を両手で押さえ込み、

 身体のバランスを崩して倒れるとそのまま絶命した

 肉片を周囲にばら撒きまるで血煙の様にその身を汚して、それは

 他のゴブリンの眼をくらませている

 その隙にナナシは、次の標的へ剣先を向けると矢のように

 突進していった

 数匹のゴブリンが我先にと言わんばかりに飛び掛かり棍棒を

 振り上げたが、紙一重で 身体を躱し剣先を頭蓋から胸部へと

 突き立てる

 続けざまに刃を引き抜き、別のゴブリンへと斬りつける

 新月の夜の様に真っ黒な刀身の刃は、無数の緑色液が付着していた

 それを振り払う事もせずに剣先を、次の標的に向け、再び突進する

 今度は側面から別のゴブリンが奇声を発し、棍棒や錆びた剣や鉈で

 反撃を開始する

 命を刈り取ろうと迫る錆びた剣や鉈を身体をひねって、一撃一撃を躱し、

 躱しきれない攻撃を剣で弾いた


 武器を振った後の無防備な瞬間を狙い、刀剣の黒き刃が煌めいて

 ゴブリン達の心臓を穿ち貫き、または腹部を大きく斬り裂く

 それは確実に、確実にゴブリンの命を狩り取っていく

 ナナシは時に屈んでは跳躍し、無防備なゴブリンを狙っては

 腹部へと蹴りを入れる事で、腹部を損傷させる

 蹴られたゴブリンは内臓破裂を起こし口から、緑色の反吐を吐いて倒れた

 時に踏み台にし、勢いをつけては背後のゴブリンを斬り裂いていく

 勿論、背後に迫るゴブリンはその剣を受け止める事が出来ず

 身体を深々と斬り裂かれて絶命する

 傷一つ追う事もなく駆け抜けていく姿は圧巻ですらあったが、

 その闘う姿は悪霊に憑りつかれ暴走しているかのようでもあった



 ゴブリンを殺し続けてはいるが、息をつく間も与えないつもりなのか

 続々とナナシ及び『ドルフ・ラングレン』隊の周囲へ

 足並みを揃え喉を鳴らし腐った息を吐き散らしては、続々と無数の

 ゴブリンが出現する

 その数は、100匹以上はいるだろう

『こいつは、殲滅させている余裕はなさそうだぞ!?』

 ウィンチェスターM1866の引き金を絞り、50~60匹一塊となり

 津波と化して向かってくるゴブリンへ銃弾を浴びせている

『ドルフ・ラングレン⑤』が叫ぶ

『集落の中は、もうゴブリンまみれだ! 生存者残っているのか

 どうかも怪しい!!』

 ウィンチェスターM1866に銃弾を込めては撃鉄を引き、引き金を

 絞っている『ドルフ・ラングレン⑥』がそう叫び返す

 排出された空薬莢が地面へ落ちると甲高い音が周囲に響く



『弾が尽きた!! 予備弾倉をくれ!!』

 そう叫ぶのは、膝撃ちの体勢でコルトM1991A1を撃ち続けていた

『ドルフ・ラングレン⑦』だ

『全部使い切ったなら、ゴブリンが持っていた鉈か棍棒を奪い取れよ!』

 ゴブリンの頭を蹴飛ばしていた『ドルフ・ラングレン⑧』が、腰に

 装備していた弾帯からコルトM1991A1の弾丸が装填された予備弾倉を

 抜いて投げる

『ゴブリン相手に、素手なんて考えたくもねえな』

 受け取った弾倉を銃把に装填した『ドルフ・ラングレン⑦』が

 そうぼやきつつ、ゴブリン集団へ 突進する

 その動きは『ドルフ・ラングレン②~④』に比べて明らかに劣っていた

 劣っているといっても、特殊部隊の優秀隊員レベルの身体能力を

 有 している事は間違いない


『ドルフ・ラングレン②~④』の動きは、獣の様な勢いとスピード感を

 有していた

 おそらくこの場にいる『ドルフ・ラングレン⑤~⑧』が、『戦場処女の兵員』な

 事は明白だ

『ドルフ・ラングレン⑦』は 力押しで駆けながら、コルトM1991A1の

 引き金を絞る

 撃発音と共に銃口から吐き出された弾丸は、狙ったゴブリンの

 コメカミを撃ち抜き 後頭部からはみ出る

 それに構うことなく次の標的へ勢いにのって、身体を横転させ

 足蹴りを別のゴブリンへ繰り出し腹部を蹴り上げる

 そのゴブリンは口から緑色の液体を吐き出しながら大きく 身体を

 のけ反らせた


『戦場処女の兵員』であれも、その射撃スキルと格闘スキルは

 相当なものである

『こいつら想像以上に気合入ってるぞ!? 』

『ドルフ・ラングレン⑤』がウィンチェスターM1866の引き金を

 絞りながら、焦りを滲ませた声でそう叫ぶ

 ナニか手応えある感じに、『ドルフ・ラングレン⑤~⑧』は

 焦りを滲ませる

 現状ゴブリンの集団は勢いに陰りが見えてはきていたが、総崩れには

 なっておらず密に連携をとっ てゴブリンは迫り来る

 何とか踏ん張っていたが、次第に押さえはじめると1000匹以上の

 ゴブリンに徐々に周囲を取り囲まれた


『そっちは大丈夫か?!』

『ドルフ・ラングレン⑤』がコルトM1991A1に持ち替え

 引き金を絞りつつ、背後にいる仲間に声をかける

『なんとかな!!  

 だが、これはなかなかシビアな状況だ 指揮官殿からの

 作戦方針明示は!?』

『ドルフ・ラングレン⑧』が、ゴブリンから奪った粗悪な

 棍棒を手にそう問い返す

 背後を跳びかかってきたゴブリンをその粗悪な棍棒で撲殺する


『指揮官殿があちらで奮戦されている!

 つまり『事態は予測不能、臨機応変にやれ』という事だ! 』

『ドルフ・ラングレン⑥』がウィンチェスターM1866の

 引き金を絞りつつ、大声で叫ぶ

『いきあたりばったりな、『現地』の冒険者とは大違いだと言えばいいのか?』

『ドルフ・ラングレン⑦』がコルトM1991A1の銃口を、向かってくる

 ゴブリンへ向け引き金を絞りつつそう返す

 弾丸は撃ちだされ、眼の前に迫っていたゴブリンの頭部を撃ち抜いた

 宙に舞った薬莢が地面に転がる


 包囲されている中で、俊敏さを生かして巧みなみな

 立ち回りをしているのはナナシ1人だ

 その様な動きが出来るのは、それ相応の実力を伴わなければ

 到底なしえない事だ

 奇声を発し、錆びた槍や鉈、粗悪な棍棒を振り回して群がってくる

 ゴブリンを一瞬の迷いも見せずに一横薙ぎに斬り、突き倒していく

 時には、身体ごと回転させながら身を屈め敵の

 合間を駆け抜け背後から襲いかかってくるゴブリンも一刀両断にした

 殺戮と略奪を繰り返す事が生き甲斐のゴブリンは、それでも

 新たな獲物が小癪にも噛みついてきたか程度の認識なのか、

 動揺したそぶりも見せない

 強者への媚びへつらいと、弱者に対する容赦ない暴力を嬉々として

 行使するゴブリンにとって、この状況はむしろ喜びの感情

 が沸き上がっているのかもしれない


 ―――その時、鋭い銃声音と共に鋭い衝撃波で幾匹かのゴブリンが

 胴体や内臓を引き千切られ、または醜悪な貌を吹き飛ばされて命を失う

 それを眼の当たりにして、ゴブリン達の恐怖と怒りの感情が

 一気に膨れ上がったようだ

 ゴブリンと『ドルフ・ラングレン』隊の視界の端から、俊敏な

 動きで整然と駆けつけてくる集団が現れた

 それもちろん新手のゴブリンではない

 足音を荒々しく駆けつけてくるのは、10体の『キアヌ・リーブス』貌を

 した『召喚人』だ

 鬼の様な形相でウィンチェスターM1866を構えては 不規則に散開し、

 四方八方から視界に入るゴブリン集団を撃ち抜いていく


 ウィンチェスターM1866の銃撃音は、近距離ではまさに

 轟音と言えるものだ

 散開する薬莢と弾丸は緑色の液体が混じり地面を染め上げていく

 手を緩める事なく、引き金を絞りけるその姿はなまじ『貌』が

 ハリウッド俳優なだけに、現実味を感じさせずまるで大作の

 ハリウッド映画の一場面をかいま見ているようだ

『目標確認!! 援護射撃を開始する!! 』

 黒サングラスを着用する『キアヌ・リーブス』の『召喚人』が

 号令を出すと、 四方八方に展開したそれぞれの

『キアヌ・リーブス』貌の『召喚人』が攻撃を始めた




 凄まじい発砲音が再び響き渡り、放たれた銃弾はまるで弾道を計算し

 尽くしているかのように、ゴブリン集団に 命中していく

 その射撃は、まさに精密機械のそれだ

 1発も外していない

 また1匹として撃ち損じている『召喚人』はおらず、薬莢が地面に

 転がるたびに確実に一匹のゴブリンが銃弾を撃ち込まれ、

 地面に倒れ伏していく

『ドルフ・ラングレン』隊を包囲していたゴブリン達は、同族の生暖かい内臓の

 切れ端や緑色の体液を被り、一部は大恐慌に陥り肺が裂けそうな耳障りな

 絶叫をあげては後ずさり、次々と後退していく


『増援か!? ありがてぇ!!』

『ドルフ・ラングレン⑥』が安堵の溜息を漏らす

『最高の日になっただろ?』

 ゴブリンの包囲をものともせずに突き破ってきた、『キアヌ・リーブス②』が

 ウィンチェスターM1866の引き金を絞り、ゴブリンに向けて発砲しながら、

 笑顔を浮かべてそう話した


『キアヌ・リーブス』隊の中で黒サングラスを着用する『キアヌ・リーブス』が、

 ナナシの元に駆け寄ると、訓練された軍隊出身者を窺わせる整然とした

 敬礼を行った

『指揮官殿 

『キアヌ・リーブス』隊現着いたしました。ご指示を!』

 日本語吹き替えでもしているかのような、流暢な日本語を

 淀みなく 発する

 一瞬眼を丸くしたナナシだったが、すぐに気を取り直す

「『キアヌ隊』は、付近の脅威となるゴブリン排除及び

 生存者救助活動に当たれ!

 生存者を発見次第保護し、速やかに後方の馬車まで誘導しろ!」

 そう指示を出した

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