夢物語
カラスヤマ
第1話
ママにおやすみを言ったあと、僕はベッドの中に素早く潜った。ワクワクしながら目を閉じる。
今日は、どんな夢が見れるかなぁ。
夢の始まりは、いつも突然でーー
最初は寝ぼけているから、気をつけていないと大変なことになる。前に一回、夢の中で崖から落ちそうになったし。
白い光。まぶしい。
乾いた空気。どこまでも広がるサラサラした砂。砂。砂。
まだまだ、砂。
体が、焼けるように暑かった。汗が全身から噴き出す。
砂漠の真ん中に、僕は立っていたんだ。
ここが、夢の中だってことは分かった。
だって、さっきまでベッドの中にいたし。
「また、会えたね。マモル君」
僕に話しかけてきたのは、オモチャのロボット。左手が壊れていて、ぶらぶら垂れ下がっている。僕の夢に必ず登場する相棒だ。
「ここは、どこ?」
「遠い遠い未来だよ」
「えぇっ! 未来は、砂漠になっちゃうの?」
「そうだよ。戦争が起きてね、世界中が壊れてしまったんだ。残ったのは、この砂漠だけ」
「そんなぁ……。空飛ぶ車とか想像してたのに。これが、未来。はぁ~」
砂山の向こう。花火のような音が、聞こえた。
僕は、滑りながら砂山を登った。
山のてっぺんから見下ろすと、お爺さんを一人発見した。ピストルをバンバン撃っている。
「あのお爺さんは、何をしてるの?」
「戦争が終わったことに気づかないで、今も見えない敵と戦っているんだよ。危ないから近づいちゃ、ダメだよ」
なんだか、悲しそう。
「おじいさーーーん!! 戦争は、終わったよーーーー」
僕は、思いきって叫んでみた。お爺さんは、驚いた顔でこっちを見ている。
「……戦争が、終わった?」
「そうだよーーー!!」
「それは、本当なのか?」
「本当だよーー。だから、もう一人で戦わなくて大丈夫だよーーー」
「そうか……。戦争は、終わったのか……。長かった。本当に……。本当に……」
お爺さんは、空を見上げていた。
僕も、相棒のロボットも空を見た。
青空が、さらに青く澄んで見えた。
……………………。
………………。
…………。
ピピピピ。ピピピピ。
目覚まし時計の音がする。
「また、今度」
「うん。またね」
僕は、ロボットとお爺さんに手を振って、サヨナラした。
【 七十年後、僕は、彼らに会う。そして、やっと思い出す。ロボットの隣にいた少年が、『昔の僕』だったということ 】
夢物語 カラスヤマ @3004082
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