第67話ニュースを見る男

 目の前ではテレビが朝のニュースを流していて、それを俺とリリアナ。カタリナが見ている。


「ふーん。犯罪の多い国なのですね」


 トーストにバターを塗って、コーヒーをブラックで飲みながらカタリナは眉を顰める。


「朝のニュースってのは大体そんなもんだしな」


 俺はそれに軽い調子で合わせると同じくブラックコーヒーを口にした。


「どうして悪いニュースばかり流すのですか?」


 基本的にニュースというのは注目を浴びなければならない。

 そして、人は他人の幸福話よりも不幸な話の方がより注目をしてしまう。


 視聴率を取る為には過激な話題やホットな話題をこぞって取り上げるのがマスメディアなのだ。


 そして、カタリナはそんな穢れに対して憤りを覚えているのだ。

 何となくこの純粋な少女の頭を俺は撫でてみる。


「どうしたのですか? サトル様」


 目をクリクリさせて俺に問いかける。頭を傾けてくるところをみるともっと撫でて欲しいのだろう。俺は気のすむままにカタリナの頭を撫で続けた。


「リリアナ。あなた妙な物でも食べたの?」


「ふぇっ?」


 話題を振られたリリアナはトーストにこんもりとマーマレードを塗る作業の手を止めると顔を上げる。


「だって変じゃない。私がサトル様に甘えているのに邪魔しないなんて」


 心ここにあらずといった感じだったリリアナだったが、カタリナの視線を受けると…………。


「な、なんでもないのですよ」


 カラ元気をだすとリリアナはその甘ったるいトーストを頬張って見せた。




「そろそろ時間だが……」


 夜になり俺はリリアナを呼び出す。


「準備できてるのですよ」


 リリアナはローブに杖を持った状態で現れた。それというのも……。


「ドラゴンの一匹や二匹。リリーが倒して見せるのです」


 これから魅音さんを救出しに異世界へと赴くからだ。

 先日、シリウスと話をしていた時にでてきた生贄反対派の筆頭がウィレット家だったのだ。


 カタリナを欠いたウィレット家は発言力を著しく落とした。

 そしてその隙を見逃す強硬派では無い。パワーバランスが崩れたのを好機と見ると魅音を生贄にすることを決定してしまった。


 その事でカタリナは人質としての価値を失う。魅音が生贄にならないための交渉材料が裏目に出たのだ。

 今更カタリナを戻したところで覆らない。それならば…………。


「とっとと倒して戻るのです」


 最初から知らせる事無く全て解決して見せる。


「とはいえ俺とリリアナの二人じゃな……」


 シリウスは表立って動くことが出来ない。

 相手が国を立ててきたからにはこれまでと違い交渉相手が国になる。


 なので、今回はリリアナと二人で事を納めなければならない。


「平気なのですよ。サトルさんの転移魔法があれば有利な位置から攻撃できるのです。ドラゴンの死角から攻撃して隙をついて…………」


 そう上手く行くのだろうか?

 そんな風に考えこんだ油断があったのか。俺は物影が動くのを見逃した。


「生贄に捧げられる魅音さんは助けて見せるのですよ」


「それはどういう事なんですか?」


 暗闇から現れたカタリナは揺れる瞳でリリアナに問いかけた。



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