第58話魔法陣を撮影する男
「凄いなこれは」
地下室にて俺は大掛かりな魔法陣を発見した。
それは、以前リリアナと出会った時にもみた魔法陣と同等の大きさで、何かしら大掛かりな魔法を行使できそうな雰囲気を漂わせている。
特に中央に嵌め込まれている魔石はこれまで見てきた物に比べて随分と大きく、恐ろしい程の存在感を放っていた。
「リリアナに見せてやるか」
俺は魔法陣を撮影する。これ程のものならばリリアナ好奇心が疼くと思ったからだ。
「ん? 全然魔力が足りないのか?」
ふと、気が付く。備え付けの魔石の色は黄色。下から二段階目であり、これでは全然魔法陣を動かすのには足りない程度の魔力しか補充されていない。
恐らくだが、こんな場所にあるのだ、滅多に使わない緊急用の設備なのかもしれない。
「ここまで来たんだ。せっかくだからここも補充しておいてやるか」
まだまだ魔力に余裕があった俺はせっかくなので、ここにある魔石にも魔力を補充しておくことにする。
既に慣れている動作で近くの補充するための装置に手を伸ばす。そして魔力を篭めるのだが…………。
「うっ……これは相当……」
一瞬で凄い量の魔力が引っ張られる。それはこれまで体験してきた中でも最大の吸い込みで、みるみる間に俺の魔力残量が半減していく。
「い、いけるか……?」
ここにきて魔力が足りないんじゃないかと焦りが浮かぶ。
中途半端に補充してしまって、あとからカタリナに見つかったら気まずい。俺はなるべく意識を集中して魔石を睨みつけると。
どうにかなったらしく、しばらくすると魔石は虹色に輝いた。
「流石にちょっと疲れたな…………」
目の前の成果なのか、魔石の供給を受けて魔法陣が輝きを増す。ゲートを出すときにも似た青白い光だ。
疲れのせいもあってか、見慣れた光を目にしばらくぼーっとして過ごすのだが。
「とっ、そろそろ戻らないとな」
あまり遅くなるとカタリナも心配するだろう。
俺は満足するとその場をあとにした。
★☆★
「今日は楽しかったです」
こんなに楽しい夕食は何年ぶりなのか、カタリナは頬を綻ばせた。
会話はクリフと悟のプリストン王国の話がメインだったのだが、時折カタリナにも話を振られたので、それなりに話すことができた。
「サトル様のおかげで魔力に余裕もありますし」
隠し扉をあけて地下室へと入っていく。
魔法の明かりで照らしながら通路を進めばその先に広がるのは大規模魔法陣だ。
「全てを虹までなんて……やはりプリストン王国に現れた大賢者の再来はサトル様」
以前、噂を耳にしたカタリナ。なんでも『冒険者ギルドに膨大な魔力を保有する人物が現れた』と。
その真偽を確かめる為にプリストン王国を訪れたのだが、何者かの工作のせいで情報を得ることができなかったのだ。
「だとすると、協力してもらえるかもしれません」
毎日魔力を補給してはいるが、まだ全体で見ると壺の中の一滴にも満たないだろう。魔石には全然魔力が補給されていない。
「探し人を見つければ、多少のお願いは聞いてもらえるかもしれません」
考え事をしながら魔法陣の中に入り魔石に問題が無いか確認をするのだが……。
「そうすればミオンを――えっ?」
そこで初めて気が付く。
カタリナが地面に書かれた魔法陣をみると、そこは青白く光っていたのだ。
「まっ、まさかっ! 輝いてるっ!」
次の瞬間、カタリナは魔石を見る。先日までは黄色い光を放っていたそれは――
「ほ、補充されているっ!」
慌てて動き出そうとするカタリナだったが、
「くっ。ま、間に合わないっ! …………ミ、ミオンあなただけは何としても――」
その言葉を最後に部屋に静寂が戻る。
魔法陣は輝きを失い、青白い光の残滓が中空を漂う。
最後に残ったのは誰もいない空間と、輝きを失った魔石だった。
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