第7話 入部届け
「うん、いい返事だ」
「ようこそ白河先輩、陰陽研究部へ!」
ありがとう!これで僕も部活に入れる。なんか長かったなー。
「ではとりあえず入部届けを出してもらおうか、入部届けの紙は持ってるか?」
はいはいはい、持ってますよー。今出しますー。ガサゴソガサゴソガサゴソ。あれ?ガサゴソガサゴソガサゴソガサゴソガサゴソガサゴソガサゴソ。
あれれ?...ない。ガサツとは思ってたけどここまでとは!絶望した!自分に絶望した!ちゃんと入れといたはずなのにおかしいなー。
ん?あった!!!!バッグの底にあった!すっごいシワクチャだけど。
「これを提出する気か?」
真田先輩が怪訝な顏で言う。ギクッ、おっしゃる通りにございます。
「大丈夫ですよ真田先輩!しっわしわのくっちゃくちゃのこの紙でも直す方法はあります!」
楓が明るい顔で言う。結構言うんだね、楓って...。割とショックだよ...。でもその方法って?
「アイロンです!」
アイロン?アイロンって服のシワをとるあのアイロン?アイロンって...
「ナイス!確かにアイロンでやれば新品のような紙になるね!」
革命的だよ!これで入部届けが出せるね。
「お前らはバカなのか?」
え。
「焦げるぞ」
あ。
「慎重にやれば焦げませんって」
そう言って早速楓は部室にある人数分のロッカーからアイロンを出して、僕の入部届けにアイロンがけをし始めた。アイロンを学校に持ってきてるなんて女子力高いね。一方真田先輩は軽蔑の眼差しだ。ドキドキ。うまくいくかなー。
楓はアイロンの温度を確かめて慎重にアイロンを紙に置く。いつのまにか部員全員がその作業に見入っていた。楓はプレッシャーがかかる中、長いあいだやってると焦げるから流しそうめんのようにサッとアイロンをかけた。
「できました!」
楓は花が咲いたような笑顔で僕に入部届けを渡した。すごい!シワクチャだったあの紙が新品同様になってる!すごいよ楓!
「もっと褒めてくれてもいいんですよ」
すごい!天才!憧れる!テレビ出れる!映画化決定!
楓は満足したかのように鼻歌を歌い始め、アイロンをかたずけた。
よし!入部届けに必要なことを書こっと。まずは名前でしょ、ビリッ。紙は無残な音を出して破けた。あーー!破けた!
「アイロンは水蒸気が出るからな、乾かさないと紙は破けるぞ」
がびょーーん!
破けたところは裏からテープを貼ってなんとか入部届けは書き終わった。だけど、その後ってどうすればいいんだっけ?
「顧問の先生に出すんだ」
顧問の先生って誰ですか?
「言ってもわからないだろうから一緒に行こう」
さすがイケメン真田先輩。僕が転校したてで先生の名前とか覚えてないのを察してくれたのかな。
「ありがとうございます。」
「というわけだから、お前らはもう帰っていいぞ。時間も時間だしな。自己紹介は明日だ。」
「真田先輩!私も白河先輩について行っていいですか?」
「まあ、いいぞ」
いいのかな?楓の時間を使ってまで僕について行くなんて。気を使わなくていいんだよ。
「私が行きたいだけなんでいいんですよ」
そっか。じゃあお願いします!
「じゃあ私たちは帰るな、また明日な新入り!」
「じゃーねー」
さようならー。
ギロッ
びくっ!急に背筋に寒気が走った。もしかして今誰かに睨まれた?
「早く行こう白河」
まっ、気のせいか。
僕たちは3人で顧問の先生のもとへと行くことにした。てくてくてくてく
「顧問の先生ってどんな人何ですか?」
「うーん...綺麗な人、だよ...」
真田先輩が返事に詰まってる。どんな感じの人だろう。優しい人がいいなー。
「私もあんまわからないんですよ、いつから顧問なんですか?」
楓もわからないのか。
「俺が入学したときにはもう顧問だったな」
じゃあ結構ベテランなんだ。ベテランってことは結構厳しいのかな?
真田先輩は急に足を止めた。
「ここにいると思うぞ」
あれ?ここって保健室...。まさか顧問の先生って。
真田先輩はノックして保健室に入った。
「あら?また何かようかしら」
あ!保健室の先生!
「この人が俺たちの部活の顧問の楠本先生だ。」
「ええそうよ、どうしたの?珍しいわね」
綺麗な人だなあ。キリッとしたツリ目、ふんわりとした香水の香り!まさに大人の女性って感じだ。
「えっと、入部届けを出しに来ました!」
なんだか緊張しちゃうな。
「あらそうなの、これからよろしくね」
入部届けを楠本先生に渡し、僕たちは保健室を出た。はあ、緊張した...。
「やっぱり私あの先生苦手です...」
「ああ、俺もだ...」
え!?なんで?
「ぜーんぜん部活来ないんですよー」
そうなんだ。
「それは別にいいんですけど、なんか本心がわからないっていうか、謎が多すぎるんです!」
「あの人の言うことはどことなくわざとらしい。ビジュアルで男子からの人気は高いが俺は何となく受け付けん。」
男の中の男、真田先輩が言うってことはよっぽどなのかなあ。でもなんとなく本心が読めなさそうだったな。
「なにはともあれ、これでお前は正式に陰陽研究部の部員だ」
「よろしくお願いしますね、白河先輩!」
真田先輩と楓は僕の方に向き直って言った。真田先輩は僕に右手を差し出し握手を求めた。
「よろしくな、紅生」
きゃ!名前呼び!
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