第2話 入部テスト!?

「入部テスト、さ」

真田先輩は綺麗な黒髪を掻き分けながらそう言った。

「も、森でですか?」

「そう、森でだよ」


森で入部テスト?一体どんなことをするつもりなんだ...そもそも入部テストって何!?この部活、文系っぽいのになんで!?入部テストってことはまさかペーパーテスト?どうしよう、この前の国語のテスト31点なんだよなあ。赤点ギリギリで、友だちから割とガチ目に引かれたし。って森でペーパーテスト?意味がわかんないよなあ。


ってことは体力テスト?いつもいつも微妙な結果だから体育の先生からの評価が普通に毛が生えたレベルって書かれたし...。ってもう部室に誰一人いない!待ってくださーーい!


僕は全速力で走った。もしかして今なら時速百キロメートルいけるかも!

急げえええええええ!!!!


「スピードはまあまあってとこかな」

はあ、はあ、づ、づぎゃれた...誰だよ時速百キロメートルって言った奴...。え、まさかこれが入部テスト?

「違うよ」


ああ、真田先輩の笑顔は眩しいです。疲れた体がじわーんと吸収されていきますう。けどこの森、学園にあるにしては森すぎない?いや森なんだけどさ。道と言える道がないし木が生い茂まくってて昼間なのに夜っぽいし。なんか森感がとてつもなく強いっていうか...


「森感?」

真田先輩が初めて聞いたぞ、そんな言葉。って顔をしている...。なんでもないです。ただの独り言ですんで気にしないでください。


「そういえば細川さんと楓はどこに行ったんですか?」

今は真田先輩と僕の2人っきり。部室から出たときには2人はもういなかったけど...


「楓は他の部員を呼びに行っている。君の友達は...どこかにいるんじゃないかな?」


え、でも森で迷子とかになったら見つけるのって難しいんじゃ...細川さんはそんな人じゃないけど...。でもやっぱり心配だよ。少しの間だけでも探しに行ってもいいですか?


「......」

真田先輩は眉を下げて硬い表情をしている。ダメかなあ。...でも僕が森で迷子になったらきっとすごい心細くなると思う。だったら探しに行かなきゃね。


「...いいだろう。友思いのやつなんだな」

やった!でもどこから探したらいいか...木しかないから目印もないし、僕も迷子になっちゃうかも...。


「俺も手伝おう」

うわー、ありがとうございます!じゃあ手分けして探しましょうか。

「でもお前も迷子になったら元も子もないだろう」


ですよね、うーん......。じゃあお互いが見える範囲のところで探しましょうか。


「急ごう、もうすぐ日が暮れる」

はい!僕たちは手分けして探すことにした。まだ春だし、日が暮れるのは結構遅い。でもこんな大きい森を探すのは相当時間がかかる。急がないと!


「細川さーーん!いたら返事してくださーーい!」

僕が暗い森に向かってそういうと、


「いやぁぁぁぁぁっっっ!!」

切り裂くような叫び声が森にこだました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る