03 「娘連れ狼ーLone Wolf & Kitty」
「これまで君たちには魔獣たちと戦ってもらってきた。それはこのクトゥルフの復活を嫌がる『風の一族』との闘いだ。彼らの王ハスターは、これを防ぐことを条件に封印から解放されたからね。必死なのさ。ついに援軍を要請した。それが今から30年ほど前だがね。この宇宙は数限りなくある並行宇宙の一角にある。すべての宇宙の造物主は
ノーデンスはこの銀河系の諸種族と交渉するかたわら、現場監督としてヴォルヴァドスをこの惑星に送り、ヴォルヴァドスは眷属の焔神クトゥグアを連れてきた。このノーデンスとクトゥグアは私とは昔から深い因縁があってね。彼らがついにこのプロジェクトに妨害をしかけ始めたのだよ。」
「じゃあ質問。」
ジャックが尋ねる。
「あのさ、だったらノーデンスとやらは前回クトルゥフを封印させたやつをまーた使えばいいんじゃないのか?」
「その通りだ。しかし、前回その封印を助けた『古の者ども』と呼ばれた連中は、ほぼ全員ノーデンスのいる世界へと引っ越してしまったのだよ。それがこの惑星に文明の跡を残している者たちだ。彼らはクトゥルフの牢獄としてこの惑星を提供してくれたのさ。ところが、君たちの愚かなご先祖様がのこのここの惑星にやってきて、再びクトゥルフが復活するチャンスをくれたというわけだ。」
「で、なにか問題でも?」
ジャックはあまり「人類の滅亡」そのもには関心がないのだ。
「まあ『古の者ども』も今回ははきみたちの王、アーサーに
そこできみたちに頼みたい。その男を探して見つけ次第私に報告してほしい。実は彼がクドスに現れたという通報が来ている。」
「殺すのかい?」
イーサンがようやく反応する。
「いや、その必要はない。じつを言うと、クトゥルフの復活にはその男を生贄としてささげなければならない、いや、ささげた方が手っ取り早いのさ。」
「なぜ?」
「クトルゥフは現在4つの『
クトゥグアの持つ火の刻印『紅蓮』。
ノーデンスやクトゥルフの持つ水の刻印『怒涛』。
ハスターのもつ風の刻印『震天』、
そして私がチャウグナー=フォウンに預けてある地の刻印『鳴動』だ。
この『
「なるほど、封印なのだから、開けるにも閉めるにも同じ鍵が必要というわけでござるな。」
リッチーがうなずく。
「そういうことだ。その男はすでに火と水の刻印を持っている。きみたちはその男を監視し、我々の仲間に引き込むか、彼が失敗して命を落とす際にはその刻印をもらい受けてほしいのだ。」
「わかった。で、そいつの素性は?」
彼の名は『宝井舜介=ガウェイン』。今は『ディーン・サザーランド 』と名乗っている男だ。いわゆる『カインの末裔』と呼ばれるハンターだ。」
「ならキャラバンは?」
「いや、今はキャラバンを追われたらしい。フリーランスだそうだ。」
「じゃあどこかのシンジケートにいるはずだろ?」
シンジケートとはキャラバンやフリーランスのハンターの「互助会」組織である。
「それが、『ダイラス=リーン』だそうだ。」
「え?ナイジェルの旦那のところじゃねえか。」
ナイジェル・ジェノスタイン。フェニキアでも豪商であり、銀河系でもこの近辺での有力者である。マウントバッテンとも旧知の仲のはずだ。『ダイラス=リーン』は彼の主催するシンジケートで魔結晶を集めているのだ。ノーデンスは銀河連盟と友諠を結び、魔結晶の回収に多額の奨励金を払うことにしたのだ。一攫千金を夢見るフェニキア商人たちが大挙してこの惑星に乗り込んでいるのだ。
「無論、情報の大半は彼からのものだ。ただ、こちらの計画の真意を知られるわけにはいかないのでね。それに、そうそう彼を巻き込むわけにはいかぬのだよ。」
「男の特徴は?」
「暗めの銀髪にグレーの生命維持スーツを着て、大型の重力浮上式バイクで移動している。ちなみにご本人は『
「たいそうなお名前なこって。」
「いや、小さな娘を連れて仕事をしているから意外に目立っているらしい。」
「へえ。珍しいな。」
「ああ。だからその界隈ではこう呼ばれているらしい。『
そして、4人は立ち上がってそれぞれの仕事に戻る。そして、マルゴーが呼び止められた。
「なに?お小遣いくれるの、マイク。」
「成功すればな。マルゴー、色仕掛けで例の彼を落としてもらえないか。」
「いやよ。青臭い坊やなんて趣味じゃないわ。」
「そのかわり、難易度は高くないだろう?」
「そうね、そのかわり、お小遣いははずんでもらうんだから。」
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