第54話 青い空

地球の氷が全て溶ければ、地球は水の惑星ではなく、水だけの惑星となる。

もう、20世紀には言われていた。

「そんな事は起こるはずがない」と一蹴されていたが・・・

それが、リアルに起こりうる事態に、昨今なっている・・・


現に、かすみのいる2200年はもう、そうなっている。

文明の進化のせいか、どうやら絶滅はまぬがれているが、時間の問題だろう・・・


かすみはその悲惨な未来を、僕の時代では起こさないためにやってきたわけだが・・・

時間がかかりそうだな・・・


「お兄ちゃん、行ってらっしゃい。はい、お弁当」

「ありがと、行ってくるね」

「うん」

アメリカ風の挨拶で、送り出される。


いいもんだな・・・


会社からは、友情と勝利とテーマにしたアニメ映画を作る事になり、

そのキャラクターデザインを任された。

脚本とかプロットとかは、見せてもらっていない。


僕のデザインしたキャラを見て、どういうストーリーにするか決めると言う、

いい加減なものだ・・・


「もしかして、騙されてないか?」

疑心暗鬼になるが・・・


「大丈夫ですよ。雅志さん」

「リン?」

「言葉はわるいですが、これは実験なんです」

「実験?」

「ええ、あなたの絵を見て、今後の作品づくりの参考にするのです」

「どうも・・・」


腑に落ちないが、引き受けた仕事だ・・・

頑張ってみよう。


でも、僕が見たあの未来の地球の姿・・・

それを見せても、信じる人はいない。

ほら吹きか、良くてもせいぜい、「空想力があるな」としか取られない。


あの未来を、本気にする人はいないだろう。

いたとしても、遠い未来なので、自分には関係ないと思うだろう。


なので、あの未来を見せるのは止め、逆に過去に拠点を置いた。


経験はないのだが、戦争の悲惨さを描いた映画にした。

勝利は難しいが、とりあえず努力を中心に考えてみる。


勝利は戦争の勝利ではない。

人間関係の勝利を重視した。


まあ、ストーリーを考えるのは僕ではないが、少しでも意図が伝わることを祈る。


仮題は、「青い空(Blue Sky」


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