第38話 辛さと、楽しさと

僕の仕事は、広告などのカットを描く仕事。

趣味で描いていた時は楽しかったが、仕事となると、そうれだけはいかない。


描き直しや、クレームがつくことも、多々ある。


でも、それを辛いとは、思わなかった。

「イラストで生活ができる」

それだけで、満足だった。


確かに、収入は少ない。

でも、僕とかすみを養える分には、不自由はしていない。

余程の贅沢さえ、しなければ・・・


それに伴い、豊さんからの、仕送り?は激減していく。

時折、お小遣い程度に送られてくるようになった程度だ・・


「お兄ちゃん、いつもお仕事、お疲れ様」

「こちらこそ、いつもありがとう」」


かすみが今は、家事全般を引き受けてくれる。

それで、僕は仕事に集中できる。


5月26日の僕の誕生日も、ささやかながら、お祝いをしてくれた。

こんなにも、温かいものなのか・・・


そんなある日の事・・・

「お兄ちゃん」

「どうした?かすみ」

「パスポートはある?」

「いや、ないけど・・・」

「作っておいてね」

「えっ」

「近々必要になるから」

パスポート、海外旅行をする時に使う物。

海外旅行なんてしてことないので、必要ないと思っていたが・・・


「かすみの時代には、パスポートはあるの?」

「あるよ。でも、この時代のパスポートとは、違うかな」

「どんな感じ?」

「ICカードみたいな感じかな・・・」

「そっか・・・」

国の区別はあるが、この時代のように明確な国境というものは、ないのか・・・


「で、いつまでに作ればいい」

「今月中にお願い」

「了解」


でも、パスポートを作っても、かすみは同行できないんだな・・・

1人でも、もう平気と思うが、やはり気になる。


「完全に、お兄ちゃんだな」









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