第37話 未来に向かって

   ≪こちら、緑かすみ、ただいまより、父の緑豊氏と、コンタクトを開始します≫

   ≪かすみか、そっちはどうだ?≫

   ≪はい、今のところ、問題なく進んでおります≫

   ≪雅志さんとは、上手くやっているか?≫

   ≪はい、おにい・・いえ、雅志さんとは、良好です≫

   ≪今、お兄ちゃんといいかけたな、かすみ≫

   ≪そ・・・それは・・・≫

   ≪ははは、かなり上手くやっているようだな≫

   ≪はい、お兄ちゃんで良かったです≫

   ≪たのむぞ、地球を、我々のようにしてはいけないからな≫


かすみと豊さんが、このようなやりとりをしている事は、感ずいていた。

しかし、今は何も言わないのが吉。


かすみから、話してくれるのを待とう。


かすみは、同じ服を何着も持っていて、交互に来ていたが、

今は、この時代の女の子らしく、おしゃれを楽しんでいる。


4月になった。今日から年度初めだ。

先日、卒業したクラスメイトたちも、それぞれの道を行く。


大学に行く者、予備校に通う者、専門学校に通う者、就職する者、

そして、結婚する者・・・


僕は、かすみの予言通り、デザイン会社に就職した。

面接で、馬の逆立ちを描かされた。

ふざけているようだが、絵のバランスを見るには、不可欠らしい。


そして、即採用となり、既に出社している。

といっても、仕事場は僕ひとり。

他の社員は、別の仕事ばにいる。


時々、上司や事務の方が様子を見に来る程度。

まあ、そのほうが集中できるのだが・・・


他の社員も、同じような感じらしい。


「お兄ちゃん、会社は慣れた?」

「ああ、大変だけど、ひとりだから、気楽だよ」

「応援してるね。」

「ありがとう」


しかし、わからない。

イラストと未来を変える事との、つながりが・・・


かすみに訊いても、「私の言う通りにして」としか言わない。

まあ、先は長い。

急がず焦らず・・・でも、休まずに・・・


ただ、かすみの残っている2つの力が、ひっかかっていた。









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