第31話 初雪

地球温暖化の影響は、かなり前から問題視されている。

冬は暖冬と化し、夏は猛暑となる。


もし、地球上の氷が全て溶けたら、地球は水の惑星でなく、水だけの惑星になる。

かすみたちの時代では、それが現実と化してしまったのだが・・・


僕に食いとめる事が出来るかわからないが・・・

かすみを信じよう。


「お兄ちゃん。今日は寒いね」

「じゃあ、こたつだすか?」

「うん」

かすみたちの時代はこたつを使う習慣はないようなので、初体験となる。


こたつを出すと、かすみはもぐりこんだ。

「これ、やってみたかったんだ」


僕は、テーブルの上のみかんを置いた。

「みかん?」

「こたつとは、セットだよ」

「そうなんだね。」

何だか愛らしい。


「少し、買い物に行ってくるね」

「うん、行ってらっしゃい。お兄ちゃん」

それにしても、今日はやたらと寒い。


少し羽織っていくか・・・

いや、近くだから、いいだろう。


外へ出て、僕は驚きの声をあげようとして、飲み込んだ。


「かすみ、来てごらん」

「何?お兄ちゃん」

かすみは、体を震わせながら来た。


そういえば、四季もなくなるんだな。


「お兄ちゃん、どうしたの?」

「見てごらん」

「えっ?」


空から、白くて冷たいものが降ってくる。


「お兄ちゃん、これ?」

「これが雪だよ。この地方では、珍しいんだけどね。


かすみは、手を広げる。

手のひらに、雪が落ちる。


「本当に、冷たいんだ」

「うん」

「これが、雪なんだね・・・」

「うん」

かすみの横顔は、嬉しく、そして、寂しげだった。


かすみの気持ちはわかった。


「お兄ちゃん」

「うん?」

「何でもない」

かすみは、寄り添ってきた。


「かすみ、入ろうか、風邪引くよ」

「もう少し、このまま・・・」


雪は、夜になってもやむことはなかった。






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