第5話 任命

かすみの家の中に通された。

家の中は、僕の時代と変わらないようだ。


「まーくん、もう普通にお話出来るからね」

「そう・・・」

でも、緊張して言葉にならなかった。


どんな理由でも、女の子の家に入るのは、緊張するだろう。

しない方がおかしい。

僕は、プレイボーイではない。


しばらくすると、今に通された。

「お父さん、お母さん、ただいま」

「かすみ、お帰り。」

両親と会話をしている、かすみ・・・


この場合、僕はどう挨拶すればいいんだ?

初対面なのに、「お世話になってます」とは言えないし・・・

かすみに、頼るしかないか・・・


「お父さん、お母さん、連れてきたよ」

かすみが僕を、横見する。

知っているのか?ご両親は・・・


「あなたが、佐藤雅志さんですね」

「そうですけど、僕の事ご存知なんですか?」

「ええ、その前に挨拶しておきます。私がかすみの父の、緑豊です。」

「どうも、初めまして」

「こちらが、妻でかすみの母の、緑あおいです」

あおいさんが、おじぎをする。


事態が飲み込めない。


「雅志さん、担当直入に言います。私たちはあなたの子孫です」

「子孫?」

僕は驚いた。

子孫がいた事ではない。

子孫がいるということは、僕はいつか結婚するということだ。

その事に驚いた。


「で、過去から僕を連れてきて、何の御用ですか?」

「えっ?」

「ただ何の目的もなく、連れてきたわけではないでしょう」

かすみたち家族は、顔を見合わせる。

僕の発言は、予想外だったようだ。


「さすがですね。では単刀直入にいいます」

またですか・・・

「雅志さん、あなたに未来を変えて下さい」

「未来ということは、この時代をですよね?」

「はい」

「どうしてですか?」

不思議そうな顔をしていた。

おそらく心では、「わかるだろ」と思っているだろう。

僕も、予想はついていた。

でも、かすみ一家の口から聞きたかった。


「雅志さんの事ですから、おそらくわかっていると思いますが、

今の地球は、もはや地球ではありません」

「ええ、別の意味で驚きました」

科学が発展しているとは思っていなかった。

でも。まさか本当に水の惑星になっているとは?


「地球を昔のような、緑の惑星にしてほしいのです」

「でも、もし歴史を変えたら、あなたがたは?」

「大丈夫、この時代はこの時代として、残ります」

「パラレルワールドですか?」

「そうです」

地球を本来あるべき姿に戻してほしいというのはわかった。


「でも、それならもっと前の時代の方が・・・

せめて。20世紀とか・・・」

「いえ、昔過ぎても、無理なんです。あなたのいた20××年が、丁度いいんです」

「でも、僕にそんな力は?」

「大丈夫です。かすみをお共させます」

お共って、桃太郎じゃないんだから・・・


「かすみには、七つの力があるというのは、聞きましたね?」

「ええ」

ふたつは見せてもらった。

ひとつはタイムトラベル、二つ目は酸素導入(でいいのか?)


引き下がれないな・・・


「わかりました。やってみます」

「ありがとうございます」

深々と頭を下げられた。

  

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