星流夜

卯月

隕石召喚

 魔法使いはメテオストライクの呪文を唱えた。遥か天空の彼方から隕石が召喚され、光る尾を引いて、漆黒の夜空を切り裂く。その軌跡に向かって魔法使いは、

「彼女が欲しい、彼女が欲しい、彼女が欲しい」

 願い事を三回唱えた。


   ◇


 二十日ほどのち。

「あんたね! こないだ、メテオストライクした魔法使いってのは!」

 おさげ髪の若い娘が、魔法使いの家に押しかけて、鼻息も荒く詰め寄ってきた。

「そ、そうダが?」

 普段、年頃の女性と話し慣れていない魔法使いは、裏返った声で答える。

「メテオの破片が降り注いだせいで、ウチの畑はめちゃくちゃよ! どうしてくれるの!」

「ええエっ!?」

「責任もって、元に戻しなさい!」

 そのまま、娘に首根っこを掴まれて、山向こうの村まで引きずられていく。


   ◇


「それで、まほうつかいのねがいは、かなったの?」

 男の子が、父親に尋ねる。

「まぁ、一応叶ったのかなぁ……」

 おさげ髪の娘に叱られながら、畑の復旧のため肩を並べて働いているうち、いつの間にやら婿になっていた。

「一応とは何よ、一応とは」

「す、すまン」

 しかし、未だに妻には頭が上がらない。


 ちなみに、婿入りしたその日から、男は一切の魔法が使えなくなったということである。

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星流夜 卯月 @auduki

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