第96話

 翌日の朝、ジョギングもそこそこにログイン、さてと、昼まで時間はあるな。

少しでも鍛えておくか、しないよりかはマシ程度にはなるだろう。

王都から少し出てから、適当な魔物を見つけたら、隠密で近づき攻撃。

これが必殺の一手にならないかなぁ……っと、通信?


「おはよう、コージィ今日はどこで油を売ってるの?」

「油は売ってないよ、王都の近くの草原でスキル上げだよ」

「コージィが王都の近くで訓練だなんて、珍しいわね、どういう風の吹き回し」

「いや、昨日クランメンバー集めの折にだね……」


昨日の蓮さんとの決闘騒ぎについて一部始終を語ってやれば。


「それ勝算あるの? 相手はチームの戦闘要員なのよね」

「うーん……8:2かな?」

「こっちが8よね?」

「相手が8で僕が2だね、軍師殿が中途半端な戦闘員を仲間にするはずないから」

「今からでも頭下げてきなさい、私はコージィがクランリーダーやらないなら入らないからね」

「そう、来ましたか、うちのじゃじゃ馬おてんば姫は我儘が過ぎる」

「もうじゃじゃ馬でもおてんばでもかまわないわよ、いい、絶対に勝ちなさいよ」

「はいはい、となると、少しでも戦力の補強かな、具体的には使役できそうな魔物を……」

「王都の周り何かいたかしらねー、ま、色々捜してみたら?」

「そうさせてもらうよ、それじゃ、通信終了」

「私もその決闘は見たいから、時間になったら教えてね」


 と、そんなことをいいながらサクは通信を切る、さてと、訓練と魔物は何かいないかね……グラバーもゴーレムもパワーファイターだし、ごつい奴じゃないのがいいかな、一匹はあいつを捕まえるかね。さて草原を見渡せば、馬が走っていたり、野生の牛だろうか、いやバッファローのが正確かな? が草を食んでいたりする。

そしてそれを襲うゴブリン達。魔物の中にも食物連鎖があるもんなのかね。うん? あ、あいつ!?


 僕が目にしたのは一匹の魔物の狩りの姿。そいつは姿を完全に「透かしていた」

隠密どころじゃない、完全に姿を透かし、風景の一部になっていた。

僕が気づいたのはウサギに噛みつこうとしたその瞬間に姿を見せたからであった。

赤茶色の毛並み、犬に似ているが尻尾の形や耳の形からあれは狐か? 

その狐にウサギは瞬時に気づき。いっきに距離を取るため跳び逃げていく。


 残念、狐は心なしかしょげながら二本足で立ちあがり、次の獲物を探し始める。

おっと、見つからないように茂みにしゃがみ込み隠密で隠れる。こちらに気づいてはいないようだ。あいつなんなんだろう、あの能力は魔法? それとも特殊スキル? でも、あれが魔法とかのスキルであれば……5:5に持っていけるかもしれない、契約したいいけるか?


 ゆっくりと近づく、気づくなよ。まだ、まだ……!?

気づかれたか、狐は急に立ち上がりこちらに威嚇してくる。手を上げ姿勢を低く。

僕は敵じゃない、そう敵じゃないぞ狐は警戒心が高い反面好奇心も高い敵意さえ見せなければ、逃げない……と思いたい。


 そういや夜行性なのになんで昼間っから狩りなんてしてるんだ……狐をよく観察する、大分やせ細っているな、おそらくは……


「えっと、お腹空いてない? 口に合うかは知らないけど食べる?」


 牛丼を皿に移し置いてやり、後ろに下がる。狐はゆっくりとその牛皿を嗅ぐ。

ど、どうかな? 危険はないと判断したのか、がっつき始める。かなり腹減ってたんだな。ゆっくりと近づき背中にそっと触れながら契約と言えば

システムメッセージが飛んでくる。


【インビジフォックスと契約しますか? YES/NO】


 よし成功! インビジ、まぁ透明化する魔物にはお似合いの名前かな、勿論イエスっと。さてと能力は。


【名前】

インビジフォックス


【契約者】

コージィ


【ステータス】

HP:1330

MP:1860

筋力:269

生命:133

器用:162

敏捷:218

知性:90

精神:86

魅力:84

幸運:10


【習得スキル】

狩猟23/採取22/隠密21/警戒23/回避26


【特殊スキル】

毒牙25/透明化☆/愛嬌26


ふむ、割と狐っぽいな、毒牙なのか、ただの牙じゃなくて。

エキノコックスとかの寄生虫が危険だからかな? 別にあれ適切な処置さえすれば確か除去は出来るって話だしなぁ、なんだったら、飼育だって出来た一例があったはず


 まぁおいといて、典型的な敏捷タイプだなぁ、動物らしく筋力も高い。

警戒はいいかも、窃盗とかへの対策になるかも? ま、悪くはないな。

名前も付けてやるか、きつねといったら、やっぱり……


「さてと、次の仲間を探しに行くよごん、といっても決まってるしさくっと捕まえに行くだけだけどね、牛肉は美味しかったかい? そろそろ行くよ」


 命名、ごん、もちろん元ネタは小学生の頃に必ず習ったあれからだ。

口の周りを牛丼のたれでべたべたにしてたのでマントで拭いてやってから出発。

透明化が使えればと思ったがとん挫した今、後はアイツだけが僕の唯一の光明か。

せめて7:3には持っていけるかな? さくっと捕まえてくる、頼むぞー。


そろそろ時間かな? よし、これでいったんログアウトして、お昼ご飯にしよう。




◇◆




 という訳で、ご飯を食べ終わって、戻ってきましたウォレス大陸。

時間まではまだありそうかな? とりあえずサクは……まだ来てないか。

なら、MPを使わない範囲でスキル上げでもしておくか。

王都で何が出来るかなと思ったが、まぁ走り込みでもしてるか。

「お? コジっちゃん、どうしたの? 走り込みして」

「あっと……堺さんだっけ? どうも、昨日もですが、その呼び方は?」

「コージィだから、コジっちゃん、嫌だった?」

「いえ、構いませんよ、今日はどうされたので?」

「ああ、決闘はこの後だろ、ちょっと宣伝してトトカルチョでもね」

「トトカルチョ?」

「知らないならいいのよ、いい勝負、期待してるよ、そんじゃーなー」

そういって、堺さんは走り去っていく、決闘を宣伝ってギャラリーが集まるって事

うーん、見世物にされるのはなぁ……いやまぁ、いっか。

「もしもーし、コージィログインしてる?」

「あ、サク、ログインしたんだ、今は王都にいるよ、スキル上げしてる」

「ふぅん、じゃぁそっちの転移するわね」

どうやら、転移でこっちに来るようだ、城門まで迎えに行くとするか。

というわけで、城門、なんか人が多いなぁ、サクは……いたいた。

「やぁ、昨日ぶりだね、サク」

「そうね、しかし、なんだか人が多いわね、イベントに行かないのかしら」

「確かに何かあるのかな? ちょっと聞いてみる……あ、もう時間だ」

「あら、なら早くいかなくちゃね、王都の中央広場でしょ、ちなみにあれから勝算の方は?」

「そうだね、まぁ、6:4までは持ってこれたと思いたい所」

秘密兵器とインビジフォックス、カーレッジの防御スキルが功を成すのを祈ろう

 さてと、中央広場についてみれば、既に蓮さんが中央広場には立っていた。

この前のような赤に金の刺繍の豪華なチャイナドレスではなく、ジーンズにタンクトップという戦いやすい衣装になっていた、まぁあの服で戦ってたら、下着見えるだろうなぁ。しかし、何か人が多いな、堺さんが集めたのかな。

「おーっと! ついに来ました、“槍足”に挑む挑戦者だぁぁぁあああ」

堺さんが僕の方を指さして叫びあげる、槍足って蓮さんの事? 

何その格好いい二つ名、僕も欲しい、とにかく前に出るとしよう。僕が蓮さんの前に歩む姿を色々な人に見られる、うう、緊張するなぁ。

「さぁ、張った張った! ここまでオッズは9:1だ、誰か挑戦者には賭けないか!」

武炎さんが観客に向かって大声で呼びかける、賭け? まさかこの勝負で金が動いてるのか、リアルマネーではないと思うが。

「ふぅん、トトカルチョか」

「堺さん、あ、永花のメンバーの一人ね、その人も言ってたけど、なんの事?」

「サッカー賭博って意味のイタリア語ね、使い方は微妙に違うかもだけど賭博の意味でも使っても、まぁニュアンスは伝わるんじゃないかしら?」

最近、イタリアに何か縁があるな? まあいいけど。

「へぇ、どうやら僕は不人気の様だけどね」

「なら、ちょっと行ってくるわ、そこの人、コージィに賭けるわ、これ50万よ」

んなっ! どれだけ稼いだんだそんなお金、昨日の探索とかかな? まあいい

よいしょっと、ようやく対峙できたっと、さてと、いっちょ頑張るかな!















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