第95話

 夕飯を食べ終わってからのログイン、僕は更に声をかけるべく、ある人に連絡を取る事にしたのだった。


「もしもし、薩摩野郎さんですか? お時間よろしいでしょうか?」

「おう? コージィじゃないか大丈夫だぜ、久々だな野菜売りの時以来か」


 薩摩野郎さん、かつて王都での野菜販売の時に協力してくれた一人だ。

生産メインの為戦闘は不得手かもしれないが、彼ほど頼り甲斐のある人はいない。


「ええ、その節はお世話になりました、それで今回のイベントなんですが」

「ああ、水中都市のイベントだろ、お前も参加してるのか?」

「ええ、サクと二人で、薩摩野郎さんは?」

「おう、他のプレイヤーと一緒にな、畑は一時休業だ」

「へぇ、戦闘は不得手ではないのですね?」

「俺だって探索者だ農業だけが能じゃねぇぜ、それに海に貴重な植物の種とかがあるかもしれないだろう」

「そうでしたか、チームなどは組んでおられたりは?」

「おう、セルカンド農協組合ってチームだ」

「チームリーダーは?」

「俺がやってるよ、それと副リーダーにトーマがいる知ってるだろ」

「そうでしたかお時間もらえませんか? 居場所を教えていただいたらそちらにお伺いしたいのですが」

「今から海に飛び込もうって所に連絡が来たんだよな、すまん、ちょっと時間は取れそうにないな。」

「そうでしたか、いつならお暇です?」

「どうして時間が欲しいのか理由を聞いてからだなどうしてか聞かせて貰えるか」

「僕、今クランを作ろうとしてるんですよ、そのメンバーとして勧誘の打診を」

「そういう話か、ちょっと待ってな」


薩摩野郎さんが僕との通信を切ると、その数分後再び通信が入ってくる。


「おう、待たせたな、俺達セルカンド農協組合もその話に乗っかるぜ」

「えぇ!? あの直接あって話を聞かせようと思ったのですが」

「大丈夫大丈夫チームの奴も納得してっからクラン名教えてくれもしくは勧誘メールを頼む」

「それならいいのですが、まだ実際にクランを作ってはいません、人数の目途は立っておりますが誘えるだけ誘っていこうと思っておりまして」

「そうか、なら、結成の時にはまた連絡くれよ、それじゃ!」


そういうと通信を切ってしまう、まぁ、これでまた1チーム確保。さてと、お次は。


「……もしもし、軍師殿? 僕だけど」

「はいはい、こちら天才軍師、伏龍鳳雛ジャン、っと大将、久しぶり……でもないジャン」


 この自信満々な口ぶりの少女は伏龍鳳雛、かつてはともにチームとして活動もしたけど、今は別のチームを作り活動しているという話だ。


「ちょっと野暮用でね、チーム作りは順調かい?」

「順調というかもう出来たジャン、永花エイファってチーム名」

「そりゃおめでとう、それじゃ永花のチームリーダーにお話があるんだ、直接会えるかい?」

「会えるジャン、王都にある酒場に来て欲しいジャン、そこで今日の計画を練ってたジャン」

「わかった、すぐにでも転移で移動させてもらうよ」


 さてと、多分、ここが一番くせ者揃いな気がするよ、あの軍師殿のチームだし。

 

 と、そんなわけで軍師殿の言っていた王都の酒場まで転移で到着。

お邪魔しますよっと……あれかな、ゴスロリ姿が目立つからわかりやすいよ。


「やぁ、待たせたかな? 軍師殿?」

「やぁ大将、大丈夫ジャン」

「伏龍様、この方はどちらさまでしょうか?」

「見ない顔だな、少なくとも王都では見たことないな」

「たまに雛ちゃんの言ってた、魔法使いの大将君じゃないの?」

「あ、言ってたなぁ、あんた強いの? それとも弱い?」


 軍師殿に近づけば、数名の男女が口を開く一人は赤色に金糸で施された蘭の刺繍がされたチャイナドレスに身を包む女性。


 背中に炎の一文字があつらえてある中国の演武服というのだろうか? それに身を包み腰には青龍刀を指した大柄の男性。


 もう一人は細身でビジネススーツに身を包んだ細めの男性。


最後の一人は半そで短パン、腰にじゃらじゃらとナイフをつけてる物騒な少年だ。


「まずは自己紹介だろう皆、初めまして、エーイチというんだ、よろしく」

「あのぉ、なぜその顔、そのお姿なのですか」

「お、これに気づくとは君、結構勉強家だな?」

「いや、つい最近のニュースで知ってる人は多いかと」


 最後に口を開き普通に自己紹介しているこのエーイチという人物、服装こそどこにでもいるようなスーツ姿であったがその顔は日本資本主義の父、生涯で500もの会社を立ち上げた、そして数年後、福沢諭吉に代わり一万円紙幣になると言われている。渋沢栄一であった。


 いや、確かに顔いじれるけどさ、よりによってなぜそれ!? こういうのって肖像権とかどうなるんだろ……


「とにもまぁ、僕はコージィ、今日は軍師殿もとい伏龍鳳雛とそのチームメンバーに用事があってきました」


 僕の自己紹介が終わると永花のメンバーも自己紹介を始める。

チャイナドレスの人はイェンさん。演武服の人は武炎ウーイェンさん。

短パン半そでのナイフ少年はフェイ


 このチームの戦闘の屋台骨の三人、中国系の名前だが別段、中国人という訳ではない。スーツ二人組のさかいさんとエーイチさんは軍師殿と一緒で商業メインでゲームを楽しんでいるといった感じ。


「これが僕のチーム永花じゃん、さてと大将……いやコージィお話を聞こうジャン」

「おうけい、軍師殿……いや伏龍鳳雛殿、と言っても話は一つでクランを作ろうと思ってね、君のその知略が是非とも欲しいと思って勧誘を打診しに来た」

「また、ですわね、申し訳ございませんが、我が主伏龍様はどのクランにも……」

「了解ジャン、いやぁやっぱ大将ならやると思ったジャン」

「えぇ!? どうしてですか伏龍様、今までクランへの誘いは断ってたじゃありませんか、それが、なんでこんな貧相で冴えない感じの場末の魔法使いのクランに」

「蓮ちゃん、言い過ぎ言い過ぎ、ごめんね、コジっちゃん、蓮ちゃん口が悪いけど根は悪い子じゃないんだよ、本当……ウン、ホント」

「いえ、まぁ、先も三流魔法使い扱いされたばかりなのでもう慣れました、さてと、了解も得られた、軍師殿、結成の折にはまた連絡するから、それじゃ」

「お待ちを! コージィとか仰いましたね決闘です! 決闘を申し込みます、伏龍様は渡しません!」


 えぇ……、周りの男性陣も飛君以外は額に手を当てたり溜息をついてあきれていた飛君はやれやれとヤジを出し、軍師殿は笑みを浮かべるだけで何もしない。


「えっと、すみません敗北確定なのでしません、今の僕、死亡ペナルティに使役魔物の特殊スキルのペナルティで能力値もスキルもガタ落ちしてるので」

「そうですかそんなやつと闘って勝っても意味ないですし面白くありませんわね……では明日のリアル時間のお昼過ぎに試合をいたしましょう、それに勝てたら私達永花はクランに入ります、伏龍様を簡単には渡しませんわ!」

「蓮ちゃーん、もう雛ちゃんは入る事了承してるし、そりゃないんじゃない?」

「いや決闘なんて面白そうジャンそれは見てみたい、でも、クランには入るよ、蓮、大将が作り上げたクランなら、僕も不満はないジャン」

「そんな!? 伏龍様がリーダーじゃないなんて、嫌ですわ!」

「うちの子がなんかさっきからごめんね、蓮ちゃん雛ちゃんの事、ライクじゃなくてラブな方での好きなんだよね」

「さいですか、じゃぁ、こうしましょう、僕が勝ったら僕が造るクランを、僕が負けたら伏龍鳳雛をリーダーにクランを作ります、僕が今まで勧誘したメンバーは僕が責任もって説得しますよ、それでどうです?」

「それならいいですわ、それでは明日、またここで逃げないでくださいね」

「正直な所真っ向勝負は僕の苦手分野だが、ま、逃げないよ、それじゃ」


 そんなこんなでいきなりの決闘を申し込まれたが、まぁ……勝てる努力はしておこうかな、後誘えるのは……あいつらかな。


「もしもし、ソーヤー今時間あるかい?」

「あいよマブダチ、大胆不敵、大盗賊ソーヤー様とは俺の事、なんか用事?」

「クランを作る、お前らというワイルドカードが必要だ、入ってくれるか?」

「いいぜ、マブダチの頼みは断れないってなもんさ、勧誘メール寄越せよ」

「それはまた後日だ、ちょっとまだ厄介な案件が残ってね、それが終わってから」

「おっけい、そん時を楽しみにしてるぜー」


 はい、これでよしっと、ノリと勢いで生きてるソーヤーもとい田中君だからな。

それに友人だし、何か弄せずともどうとでもなると思ったが、ここまで楽だとは。

さてと、決闘に向けて、少しでも足掻いておきますかね。

ペナルティもあるから探索には呼ばれなかったし、適当に鍛えたら切り上げてログアウトしよう。












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