第90話

 しばらくの間水中都市を歩き調べ続ける。その間も魚人の攻め手は止まることはなく何度も襲われ続ける、周りの通りすがりのプレイヤーもかなり苦戦していた。


『助かったよ、そっちは何か見つかったかい?』

『いえ、困った時はお互い様です、資料不足で考古学ではさっぱりですそちらは』


現在、襲われていたプレイヤーと共闘し魚人を撃退し治療時間の情報交換をする。


『学術系のスキルを僕らのチームは誰も取っていなくてね、でもお宝はいくらか手に入れれたよ、それじゃ僕らは他を調べるよ』


 碌な情報は手に入らず、まぁ根気良く調べるしかない、もしくは別のスキルかな。

地道に考古学で建物を調べ続けていく。


『お宝はあまり見受けられないわね、取られた後かしらね、考古学は?』

『今回でようやく何かわかったよ、考古学では正確に判別できない代物だって』

『なによそれ、ここまで頑張った結果がそれとかどういう事よ』

『考古学は人類が残した物質文化の痕跡を調べる学問だったかな、だから考えられる事としてこれらは一般的な建築方法や建材とかじゃないって所』


見た目は石材っぽい。水中じゃ詳細を調べるには安定しないかどうしたものか。


『ねぇ、コージィ、あそこ光ってるわ、誰かいるのかしら?』


 サクが袖を引っ張り指を向ける方向を見るよう指示する、ふむ……規則正しく光っているな、トントントンツーツーツートントントン…………ってこれ。


『急ぐぞ、あの光を出している人は助けを求めている』

『はぁ? ただ光っているだけでなにが分かるってのよ、いや、まぁ行くけど』


水中を泳ぐのも随分と得意になったもので、水中スキルも習得したというものだ。


『コージィあんたの言った通りよ魚人が3体いるわね一人が迎撃してる光魔法使ってる魔法使いは瓦礫に埋もれてる、作戦は?』

『まほつかうそのすきとつげきいじょう』

『せめてまともに打ちなさいよ、了解』


 水中で泳ぎながらチャットしてるんだ荒れるのは許して欲しい、意図はなんとか伝わったみたいなのでとにかく行動開始、音魔法のバインドノイズを発動する、不快な音によって敵の行動を一時的に封じる魔法だ効果は抜群のようで魚人たちは槍を取り落して、耳を塞ぎうずくまる。


 その隙を逃さないようにカーレッジを召喚、カーレッジは呼吸いらずなので水中で活動することが可能であった、まあもともとが鈍重な為水中では更に鈍重だが。そんな鈍重でもうずくまる魚人であればその拳で殴りつけれた。サクと一人迎撃していた戦士が残りの二体も撃破。


『大丈夫ですか?』

『救援あざっす、探索してたら魚人に襲われて他の仲間も皆やられちゃって』

『埋まってる魔法使い助けるわよ、コージィ手伝って』


 サクが瓦礫の撤去を始めるので僕もカーレッジで手伝う、ハンマー使いの戦士さんも一緒に魔法使いさんの救出、ほどなく魔法使いさんは救出されるのだった。

壁の一部が崩壊している、壊して進もうとして失敗したのかな。


『本当に助かりました、モールス信号が伝わってよかった』

『やっぱりモールスだったか、覚えててよかった』

『モールス信号って、なんか軍隊とかで使ってる感じの?』

『瓦礫に埋もれてチャット機能使えなかったのでモールス使ったんです』

『んなもん知ってるやつがいるのかとは思ったっすけどね』

『あんたはよく知ってたわね、普通覚えてるそういうの?』

『SOSだけでも覚えておいて損はないって父さんがね』

『あんたの父さん何者よ』

『機会があったらそのうち話すよ』

『話すのはいいすけど、呼吸薬の時間は大丈夫すか?』


時計を見れば既に残り10分を切った、帰還魔法で戻るべきかな。


『俺達は先戻るっすね、助けてくれてあざっした』


二人は先に帰還魔法でこの場を去ってしまう。


『私達もそろそろ戻りましょうか、お宝は見つからなかったわね』

『ちょっと待って瓦礫を回収していく資料として調査したい』


 適当な大きさの瓦礫をインベントリにぶち込んでいく、謎を解くカギになるかは僕次第だ、そうして回収した後に帰還魔法を唱える、どうやらイベント中は船も街として認識されているようで帰ってきたのは船の甲板の上であった。


「ふぅー、ようやく喋れるわね水中戦はかなり大変だったわね」

「おおむね同感、水中での活動に有効な魔物と契約するのも手かもね」

「ホオジロザメか魚人かしらね、もっといいビジュアルの魔物がいいわ」


そんなふうにしばらく水中での感想で盛り上がる。


「さて、結局手に入ったのはこの箱一つね、中身は何かしら」

「貸してみてよ開けてみるからさ、さてさて中身はなんだこりゃ指輪」


 箱から出て来たのは指輪、それもかなり年季の入った代物、観察や博物学で調べる

考古学も使ってみるが、わからないと出る。


「素材か性能が分かればなぁ、一体全体何だってんだか」

「指輪でしょつけてみればわかるわよ」


 サクは僕から指輪をひったくると迷うことなくそれを指につけるも何も起きることはなかった、こりゃ外れかな、僕は僕でこっちを調べるか。


 インベントリから水中都市の建物の建材の瓦礫を出して調べてみる事に。

しかし出した瞬間に、崩れてしまう、握りつぶせば粉々に、なんだこりゃ。

観察スキルで調べてみたらなんと砂になっていたのだ、この建材は砂で出来ているあれらは砂で出来た家だってのか? 家の中の家具も? ではどうやって固めた? ただの砂だってなら考古学で分かるはずだ、分からないならその建材の作成方法は人類が知らない何かだ、思い付きで崩れた砂をブロック状に整えてもダメ、崩れた時点で建材は既に砂になってしまったってわけか。

ぱっと見では混ぜ物をしているわけでもなさそうだし……


「コージィ、考え事の最中悪いけど、そろそろお昼ご飯の時間じゃないかしら?」

 

 サクのその言葉を聞いてメニュー画面を開き時計を見れば確かにお昼の時間が迫っていた、建材についてはお昼休憩の後説明するので一時解散でこの場はお開きとなった。










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