第85話

「ほらよっ、ソーヤー、言われた通りこれでいいかい、しかしジャマダハルとはけったいな代物を依頼するもんだよ、初めてだからてこずったよ」


 先ほどまで武器を作っていたナガソネさんが一つの武器を差し出す。

ジャマダハルと呼ばれたそれは今まで見たもの、この武器屋に置いてあるものとも違った。まず、持ち手である柄が全く違う。Hのような形をしている。これはどう持てばいいんだ? 刀身は両刃、およそ20センチ程度だろうか? そこは普通だな。


「あざっす! ちょっとつけてみます…………うん、こんなもんかね、魔物相手にゃ一歩遅れるかもだが、対人戦なら袖に上手く隠せば不意打ちとかいけっかな」


 ソーヤーが受け取った武器のHの真ん中部分を握る、ああそうやって持つのか、確かにナガソネさんの言う通りけったいな代物に入る方の武器かもしれない、そしてストレートやアッパーと攻撃のモーションを行うまあその握り方だとそっちの方がいいのか。しかし不意打ちとはまた物騒な使い方だ、ソーヤーと闘う時には十分気を付けよう。


「それとサクにはこいつもな、妖精の枝から作った弓だ奇を衒わずにロングボウにしてみたよ、性能は店売りとは段違いだけどね、いい素材だよお代は素材は自前だし、いい物見せてもらったって事で、無しでいいよ」


 サクにも一つの弓が渡される、こちらは木で出来たわかりやすく弓である。

サクが今まで使っていた弓が目じゃないレベルの性能か中々の逸品じゃないかな?

サクはきちんとお金を払おうとするがナガソネさんは頑として受け取らず。

今後とも贔屓にしてくれればそれでいいとの事。少々人が良くないかと思ったが。


「いいんだよ、取るものは脛に傷持ってる奴らからふんだくるさ」


 そういってソーヤーに向き直ると、ソーヤーに法外の額をふっかけていた、払えないなら武器返せとも言う。また酷い素材はこっち持ちだべとソーヤーが文句を言えば、盗んだ奴にバラしてもいいんだぞとあまりにもひどい脅しをかける。


 武器は欲しい、だがその額を払えば稼ぎは全て水泡と帰す、武器か稼ぎか。

天秤にかけた結果、勝ったのは武器でありソーヤーは大きなGの袋を差し出すことになったのだった。脛に傷は持たないほうが身のためだね、おー怖い。


「さてと、これで全員武器と防具が揃った感じだね、ありがとうございました

ナガソネさん、大切に使わせていただきますね」

「ああ、いい素材見つけて武器が入用になったら、いつでもきておくれよ」


 その言葉を最後に5人で店の外へと出ていく、さてと、こんなもんかね。

ソーヤーは僕の方へ顔を向けてくる、どうやらソーヤーもそのつもりのようだ。


「武器と防具の新調も終わった、ここら辺が潮時かね」


 そういって、ソーヤーが僕らのチームを抜けていく同時にビアンカさんも。

名残惜しいがsearcherとして共に組むのはこれでおしまいという事だ。

サクには既に僕から話を通しているので、特別驚くこともなかった。


「ほじゃまチームを作ってとビアンカさん入っていただけます? 斬鉄も入るんなら入れよ」

「勿論! その為にソーヤー君についてきたんだよ」

「拙者も名を連ねさせて戴くでござる」

「colpo di vento結成っと、今からは敵同士だぜコージィ」

「コルポ・ディ・ヴェントねぇ、チーム名の意味は?」

「イタリア語私の母国語ですねー、疾風とか一陣の風とかの意味がありますよ」

「ふむ、盗賊を名乗る拙者らには中々にうってつけでござるな」


 態々調べてつけたんだなよくやるよ、さて会話もそこそこにこの場を離れるとしよう次はどうしようかとサクに聞けば、夏のイベントは港町で開催されるそうなのでそこを目指すべきだと言われる、じゃあそうしますかね。最後に挨拶を交わす。


「さてとそろそろ行くよ。短い旅だったけど楽しかったよ、願わくば友人であるソーヤー達とは戦いたくないものだね、見逃してくれたら嬉しいね」

「っま、親友襲うなんて、よっぽど切羽詰まらない限りしねーよ、何か困った事があったらいつでも連絡してくれて構わないぜ、盗賊の前に探索者だしな俺達も」

「私は別よその首洗って待ってなさい、きっちり胴体とお別れさせてあげるわ」


 そういって、転移魔法を使用して僕は王都へと一度戻ることに。

サクも物騒な台詞を最後に一緒に転移してきた。

すぐに門をくぐり港町の方へ、早速新しい武器の性能を見たいのか剣を抜き放つ。

僕も折角だ接近戦をしてみようとサクと並ぶ。


「魔法剣士にもなるつもりかしらコージィ?」

「それも面白そうだね、さーて、どこまで戦えるか、試すとしますかね、手助けはいらないから好きに戦ってていいよ」


 そう言えばサクはなるべく港町に進みながら戦うように僕に言ってから先へと走っていく。そういうわけで歩きながら手ごろな魔物を探すことにそうすればここら辺じゃよく見るゴブリンと相対する。武器に見えないステッキに盾はマントの性能を知るため装備しておらず、それを見て防具を装備していない無防備な奴だと高を括って僕目掛け棍棒を振りぬいてくる、その攻撃をマントを翻し受け止める。


 さてマントで受けたわけだが打撃が受けた部分が一時的に硬質化するとダメージを防いでくれた、高い防御性能と耐久性と言っていたがこういう感じに防いでくれるのか、しかもノーダメージいい性能だな、ゴブリンはマントに攻撃を跳ね返されて戸惑いつつも更に打撃を繰り返す。それをマントで受け止め続けるがどんなに受けてもノーダメージ、さて次は武器を試すとしよう。


 一度後ろに下がり距離を取る、ゴブリンとこうして対峙するのは久々な気がする。

今までこそこそと隠れて不意打ちや目くらましをして逃げたりと。

まともに戦ったのは最初に相対した時以来じゃないだろうか。

そんな事を考えながら、ステッキの鞘から刃を引き抜きゴブリンの体めがけて突き刺す、刀身はステッキに収まるくらいなので細身、斬撃では威力不足。

ならばこうして刺突する、心臓を貫ければ儲けものだが、そんな技術は無い。


 ひとまず体のどこかにあたってくれれば……っく、棍棒で防がれる、ならば。

ソーヤーから頂いた魔導書で習得した火魔法を使う事にする。

ソードステッキを持っていない手の平で棍棒に触れた瞬間に魔法を発動。

すると棍棒は一気に炎に撒かれ燃え上がっていく。

その炎は棍棒を通しゴブリンの体へと燃え移りゴブリンを火達磨へ変えていく。


 火魔法の初歩的魔法ファイアだ、MPの強弱で出力も大きく変わる。

ウィンドやサウンドと違いどう転んでも火傷は必至、ゴブリンはしばらくのたうち回った後に粒子となって消えてしまった勝利である。うんエグイなこれ、攻撃としては優秀の一言、何せ一番最初に覚える魔法なので出力を上げたと言ってもそこまで消費する事はない。まぁこの魔法は手の平や杖先からが基本なので遠距離戦が主軸の僕が使う事は今回のように接近戦をしかけるか仕掛けられた時くらいだろう。


 更に言えば、普通に攻撃魔法を使ったほうがいいスキル上げの為に態々使っただけであったりする。とにかくこの新しい装備を以てして夏に向かえるというイベントに向けて新しく覚えたスキルや伸ばしていないスキルを鍛えていくことにしよう。

もうすぐ夏休みそうしたら時間も多く取れる、高校生活初めての夏休みだ。

リアルでもゲームでも充実した生活を送ってみせると意気込む僕であった。



【名前】

コージィ

【ステータス】

HP:2540

MP:5550

筋力:274

生命:254

器用:360

敏捷:278

知性:711

精神:555

魅力:39

幸運:10


【習得スキル】

風魔法37/治癒魔法27/光魔法15/毒魔法10/音魔法25

火魔法1/水魔法1/回避21/開錠20/筆写9/走行24/筋肉5/体術6

瞑想17/隠密25/写生10/観察32/盾術10/撮影10

考古学1/博物学7/暗号1/礼儀12/運搬23/騎乗18

徹夜2/野宿12/採取7/捕獲3/調合9/調薬8/料理1

【特殊スキル】

契約と使役の力:☆ 帰還魔法:☆ 転移魔法:☆


【契約した魔物】

カーレッジ(ゴーレム) グラバー(ウォレスラプトル)


【装備/アイテム/お宝】

武器:ソードステッキ(作:ナガソネ)

防具:アドベンチャラーシャツ(作:杏)/マジシャンマント(作:杏)

アドベンチャラーブーツ(作:杏)

装飾品:ビル・カーターのコントラクトリング/タイガーベルト(作:杏)

アイテム:ガスランタン&オイル/机&椅子(折り畳み式)/テント/望遠鏡

筆記用具&ノート

お宝:魔術書*3/学術書*3/魔導書(盗品)*2/巨大蛾の毒針毛


G:30万ちょっと






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