第77話
巨大蛾はこれ以上はたまらないと言わんばかりに上昇していく。
かなりの高度まで飛んで行ってしまった、およそ20mだろうか?
「大分高い所まで飛ぶんだなぁ、うわっ、針降ってきた」
攻撃の届かない安全地帯からの攻撃、虫のくせに頭いいな。
「サク、あそこまで攻撃届く?」
「無理だと思うけど一応……やっぱ無理ね、途中で風で阻まれる」
サクが上空へ弓を放つも、巨大蛾の羽ばたきによる風で阻まれる。
それならとウィンドで追い風を作って飛ばすも、そもそもの弓矢の射程が足りないという始末である。こりゃ、どうしたもんか。
「毒でそろそろダメージがきつい、あの丸薬はいくつ残ってるの?」
「一人3つくらいかな、攻撃できないしとりあえずウィンドじゃなくて回復魔法する
あいつだって、飛び続けるスタミナは無いはず、しこたま弓矢喰らってたし」
と思っていたが、依然として下りることなく、毒の針をまき散らす。
まずいな、僕のMPだって無限ではない、何か策を弄する他無いか、さてどうするか
「私たちも空が飛べればいいんだけどねぇ、貴方、私抱えて飛べたりしない?」
鎧に隠れる妖精に尋ねるも妖精は首を大きく横に振る、そりゃそうだ。
でも飛ぶか、それが出来ればだけど、飛ぶ、飛ぶ……とぶ?
「そうだ! とぶんだよ、サク、良い事思いついた、ちょいとごめんよ!」
そういって、サクを小脇に抱きかかえる、さーてどこまでいけるか。
「はぁ!? いきなり何よこれ、おろしなさいよ、これのどこがいい事なの」
思い切り胸を叩かれるが我慢する、これ以外に方法は思いつかないのだ仕方なし。
「あいつを倒す為だよ、ちょっと我慢して」
「ええい、わかったわよ、このままやられるのも癪だしね、頼むわよ!」
了承を得た所でもたもたしてる暇はない、一気にご神木へとダッシュ。。
「あんた、何、木に向かって走ってるの、勝ち目がないからってやけになったんじゃないでしょうね!」
「まあ見てなって、ウィンドジャンプ!」
ウィンドジャンプ、前にも使ったこれは味方にはかけられない自己バフだ。
効果は単純で跳躍力を一瞬だけ向上するといったもの、助走をつけた跳躍をすれば
ご神木のてっぺんまでいっきに到着。このままもう一回ウィンドジャンプを行う。
「飛ぶ事は出来ないけど、跳ぶことはできる、届けぇ!」
「かっこつけてるとこ申し訳ないけど、全然足りてないじゃない!」
ご神木で高さを稼いだといっても巨大蛾の所まではまだ届いていない、だがこれも想定済みだ、ここがタイミングだな。
「まだだ、来い! カーレッジ、そんでもってもう一度ウィンドジャンプ!」
空中でカーレッジを呼び出す、そしてカーレッジをそのまま足場にして蹴りつけ二度目の跳躍を行う、ソーヤーもやっていた盾ジャンプの応用だ。
ようやく巨大蛾の頭上を見下ろせる位置まで跳ぶことに成功した。
「これがラストチャンスだ任せた、サク!」
思い切りサクを巨大蛾に放り投げると同時に残るMPを使ってウィンドアローをしこたま射込んでやる、少しでも巨大蛾をひるませその動きを鈍らせる為だ。
「っちょ、放り投げるな女の子の扱いがなってないわね! でも、ここまでされたらやるしかないわね、その羽、切り落としてやる!」
巨大蛾に肉薄したサクが腰に差した剣を引き抜き、羽の付け根へとそれは振るわれ羽根を見事切り落とす。巨大蛾はその巨体を支える羽を失い地上へと墜ちていく。
そして僕たちも重力に従って落下していくのであった。
「コージィ後は無事に着陸するだけよ、どうするの」
「さぁ?」
「さぁ? って、もしかしてあんたラストチャンスって言ってたわね、落ちる時のことは」
「全く考えてないよ落下死するかもだからラストチャンスって言ったんだ、とりあえず、適当な木をクッションに落ちて少しでもダメージを減らすくらい、そうすれば助かるかもね」
「何よそれ! ちゃんと着陸の時まで考えなさいよ」
「それこそ飛べればねぇ、さて、そろそろ木に落ちるかな」
「あんた、随分余裕ね! きゃああああああああああ!!!」
巨大蛾落ちるよりも先に僕らは落ちる。幸い木の方へと落ちれたのが幸いだ。
葉を揺らし、枝を圧し折りながら、肌に切り傷、服をボロボロにして最後は地面へと盛大にキスをして落ちる。立ち上がり居住まいを整えてガッツポーズ。
「よしっ、生きてる」
「何がよしっ、なのよっ! まったく、こっちは鎧だからいいけど、あんたボロボロじゃない、服とズボン破れてるわよ、それにマントもまた穴開いたわよ」
「歴戦と奮闘の証がまた増えたとでも思おう、それよりも巨大蛾はどうなったかな」
サクの心配をよそに巨大蛾を探す。すでに上空にはいないので、墜ちてるはずだが
あ、いたいた、まだ実態があるってことは生きてるのか、タフだなぁ。
まあ、羽もないので地上を這いずるしか出来ない巨大蛾、適当に杖で頭を潰して止めをさす、巨大蛾の素材は何かドロップしてないかな? 猛毒の針毛か、そこら中に散らばってるし回収できないかウィンドを試してみるか、ゲロまず回復薬を飲まないといけないという苦行があるが、さて、どうかな。
「何を集めてるの? って、これ、あいつのばらまいた毒の針毛じゃない」
「素材みたいだし、何かに使えるかもだろ回収してみるのさ、風で上手い事一つに集めて袋はテントを裁断してそれに包むか」
結果は成功、大量の毒針毛をゲット何に使えるかは、いろいろ試してみるか。
作業が終わって時間を見ればすでに22時を回っていた、大分長い事戦ってたんだな
眠気も限界だそろそろ寝ないと明日起きれないな……
「ごめんサク、後の報告は任せてもいいかな、すこぶる眠い、あ、でも、どうやって妖精郷から出ればいいんだ?」
「普通にログアウトすれば帰れるわよ、次にログインするときは最後に入った街よ今日は助かったわ、ありがと、また明日ね」
サクの説明を聞いてひと安心して、僕はログアウトする、さっさとベッドへと潜るのであった。
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